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2016年3月4日金曜日

「現代やまとことば」を経験する(4)

先回までは例文に使用された言葉にできるだけ忠実に「現代やまとことば」に置き換えることをやってみました。

ひとつずつの言葉を「現代やまとことば」で説明することになるので、直訳的にやってみてもどうしても元の文章よりも長いものになってしまいました。
(参照:「現代やまとことば」を経験する(3)


たまたま目についた文章を例文として無作為に取り上げてみた割には、いろいろな要素が含まれていましたので何回かにわたって取り上げてみることにしました。

直訳的な「現代やまとことば」への置き換えを三回ほどやってきましたが、まだピンとこない方も多いと思います。

何だか面倒くさいなと感じる方もいたのではないかと思います。

一通りの直訳が終わったところで一番簡単な方法をやってみたいと思います。


まずは例文を確認しておきましょう。

例文:
【IT技術の進展により、様々な知的資源、文化資源をデジタル化して保存、発信する「デジタルアーカイブ」が脚光を浴びています。】


今回は話し手の意図を意識して置き換えることをやってみます。

文章を書いた人の意図がありますがそれはそれをきちんと掴んでいるのかどうかは分からないことですので、わたしの受け取った意図で置き換えてみます。


これは「デジタルアーカイブ」という言葉や技術に注目してほしいというメッセージだと思います。

例文では書かれた文章になっていますので、今までの「現代やまとことば」への置き換えを参考にしながら話し言葉として意図を表現してみようと思います。

こんな伝え方ではどうでしょうか。


「デジタルアーカイブ」というものが数多く取り上げられています。

(このことばでどんなことが思い浮かぶでしょうか。)

長い間積み上げられた人の技や工夫が、いつでも使えるものとして残しておけるようになっています。

いわゆるITのお蔭ではないでしょうか。

(そんな「デジタルアーカイブ」を見てみましょう。)


例文を話しことばとして聞かされると理解しにくい理由の一つに修飾語の関係の分かりにくさがあります。

文字として書かれている場合には振り返ったり先を探したりすることができますが、話し言葉においてはその瞬間にしか聞き取ることができません。

そのために修飾関係の複雑な長い文についてはどうしても言葉同士の修飾関係が掴みにくくなります。


話しことばの時には文字にする場合に比べると、無意識でも一つの文が短くなってきます。

これは感覚的に文が長いと分かりにくくなることが分かっているからなのです。

つまりは話し言葉ではできるだけ早い段階で言葉同士の修飾関係を確定させることが行なわれているのです。

区切りのない話は内容の分かりにくいものになるのは誰もが経験していることだと思います。


したがって、文字として書き表すときであっても話し言葉を意識すると短い文となることになります。

例文も一つの文章としては決して長いものではないと思われますが、言っている内容については複数のことを一つの文章で表現しているものとなっています。

話しことばとして発せられた場合には理解しにくいものとなってきています。


「現代やまとことば」に置き換えてみた表現はどのように映りますか。

映るというよりは聞こえますかといったほうがよさそうですね。

固有名詞としての「デジタルアーカイブ」と「IT」については原文の言葉をそのまま使ってみましたが、それは私のなかでこれらの言葉がしっかりとした定義がなされていないことの表れでもあります。


とくに「IT」についてはこの言葉を使った方が自分でも理解しやすいと思ってしまうこと自体がしっかりと定義できていないことの証でもあります。

たとえばこの「IT」が「デジタル技術」となっていたところでほとんど同じ内容で理解してしまいます。

知らないうちに安易に使っている「技術」という便利な言葉も、よく考えてみるととても広範な意味を持っていると同時に自分としての定義ができていないことが分かりました。


「現代やまとことば」への置き換えには正解というものがありません。

「ひらがなことば」に対して持っている定義が一人ひとり異なっているからにほかなりませんが、他の言葉に比べれば日本語の基本語であるために一人ひとりの違いの幅がかなり狭くなっているのです。

そのためにほとんどの人が同じような感覚で受け取ることができる日本語の基本語となっているのです。


明治期以降に取り込まれた外来語や新しく生み出された言葉でも「現代やまとことば」として使えるものがあるのではないでしょうか。

「やまとことば」との違いがそこにあります。


「やまとことば」というとどうしても古語のイメージや日常語から離れた感覚を持たれると思います。

もっと気楽に日常的に使ってもらえるように「現代やまとことば」として「ひらがなことば」を提唱しています。


きっかけとしては気になった言葉を自分の持っている「ひらがなことば」で定義してみることをお薦めします。

普段何気なく頻繁に使っている言葉であっても意外とできないものですよ。

そんな言葉で話して伝えても同じ理解をしてもらえるわけがありませんよね。

身近な言葉を「ひらがなことば」で置き換えてみませんか。


一度置き換わると自信を持ってその言葉を使えるようになるから不思議です。

かりに質問されたとしてもいつでもよりわかり易く説明することができるからではないでしょうか。

そこでの「ひらがなことば」による自分の定義がきき手の人と違っていたとしても、その違いについてよりわかり易く理解できるからではないでしょうか。


同じ言葉について自分と異なった定義をしていることに触れることは一種の気づきでもあります。

思わず「なるほど」だったり、あるいは「それは違うな」であったりしますが、まずは素直にその違いに対して理解することが大切だと思われます。

「ひらがなことば」で言い換えてみることを遊んでみませんか。





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2016年3月3日木曜日

「現代やまとことば」を経験する(3)

今回も同様に次の文を例として「現代やまとことば」への置き換えをしてみましょう。
(参照:「現代やまとことば」を体験する(1)(2)

もともと話し言葉になっていない文章ですので難しさはありますが、そこもいい経験としてやってみて欲しいと思います。

例文:
【IT技術の進展により、様々な知的資源、文化資源をデジタル化して保存、発信する「デジタルアーカイブ」が脚光を浴びています。】

文節展開:
【IT技術の/進展により、/様々な/知的資源、/文化資源を/デジタル化して/保存、/発信する/「デジタルアーカイブ」が/脚光を/浴びています。】

単語抜出(ひらがなことば抜き):
【IT技術/進展/(様々)/知的資源/文化資源/デジタル化/保存/発信/「デジタルアーカイブ」/脚光/(浴びて)】


「IT技術」「進展」は先回やっていますので、「知的資源」からです。

さて、どんなひらがなことばで置き換えができるでしょうか。
ひとことでは難しそうですね。

ここでは次の「文化資源」と一対になっていることに注目しておきたいと思います。


「知的資源・文化資源」と一緒にして対象にしてみたいと思います。

自分のひらがな言葉の感覚でできるだけ直訳的に置き換えてみようと思います。

知的⇒人が頭を使ったもの、人が工夫を凝らすしたもの、人が技を凝らしたものなどでしょうか。


文化との対比でみてみるとわかり易いかもしれませんが、私の言葉では「文化」が上手くひらがな化できませんでした。

自分の言葉として「文化」がきちんと定義できていないことの表れなんですね。

いい機会ですので挑戦してみようと思います。

文化⇒生きてきた工夫、自然と共に生きる術(すべ)などでしょうか。

知恵という言葉を使いたいところですが音読みが含まれていますので避けてみました。


資源⇒役に立つために残しておいたもの、残しておきたいものなどでしょうか。

自分のひらがな言葉に置き換わったらあとは意図に沿ってどの表現が伝わりやすいかを選択することになります。

「様々な」はそのままひらがな言葉ですので使うことにします。


わたしのことばでは「様々な知的資源、文化資源を」が「様々な人が技を凝らしたものや生きてきた工夫を」と置き換わりました。

コツをつかむためにまずは直訳的にやっていますので、しつこい表現になることはあると思われます。

いったんコツがつかめれば意図を把握することで全く別のひらがな言葉に置き換えたほうがふさわしい場面も多く出てきます。


もう少しやってみましょう。

最近よくお目にかかるカタカナです。

「デジタル化」ですね。

ここで言っているデジタルとはアナログの反対の意味ではなくデータ化や圧縮化などのデジタル的な技術のことを言っていると思われます。


しかも、後に固有名詞としての「デジタルアーカイブ」がカッコつきで登場してきますので、意味合いとしてはコンピュータ技術などによって今までよりも簡単に使いやすくなるとなるという意図ではないかと推測できます。

この場合のようにカタカナ言葉は使っている人によって意図する内容にかなりの開きがある場合が多くなっています。

より自分の感覚で意図に沿ったひらがな言葉にすることが大切です。


例題における「デジタル化」はことさらデジタルであることに意味があるのではなくて、デジタル化によってもたらされた便利さのことに意味を置いていると思われます。

したがってひらがな言葉に置き換える場合には特に「デジタル」を意識する必要はないことになります。

「よりやさしく使いやすくして(デジタル化)」とした方がいいのではないかと思います。


次の「保存」についても「知的資源」と同じように後に続く「発信」と一対にして扱った方がわかり易いですね。

「保存・発信」とすればひらがな言葉でも簡単に置き換えられますね。

「保つこと、残しておくことや伝えること、知らせること」などとすればそのままいけるのではないでしょうか。


その次がこの文章の意図ですね。

「デジタルアーカイブ」です。

この言葉に注目してもらうためにこの文章があることになります。

この言葉が今注目されているんですよ、あなたも注目してくださいねというのがこの文章の意図になります。


これ以前の文章はすべてが「デジタルアーカイブ」を説明しているものですが読んでもよく分かりません。

「デジタルアーカイブ」という言葉や技術があることを理解すれば十分に意図が伝わったことになるのではないでしょうか。

わたしにはこの言葉はさっぱりわかりませんので、ひらがな言葉に置き替えができません。

「デジタルアーカ...」の画像検索結果

最後は「脚光」ですがこれは「脚光を浴びる」で一つの言葉として扱った方がわかり易いのではないでしょうか。

「注目されている」や「注視されている」と言った意味になるのですが、練習のためにひらがな言葉を引っ張り出してみましょう。

「数多く取り上げられている」などでどうでしょうか。


「数多く」は漢字で表記されていますが二文字ともに訓読みであり完全なひらがな言葉です。

話しことばとしてはわかり易さのために大切なひらがな言葉ですが文字として表記する場合にはひらがなが続くと読みにくいものとなってしまいます。


私たちの日常では物書きでもない限りは書くことよりも話すことの方がはるかに多いと思われます。

それよりも聞くことの方がさらに多くなっています。

ひらがな言葉で伝えられた時のわかり易さと安心感をもっと経験してもらいたいと思います。


ここまで見てくると気がつく人も多いと思います。

そうです、まさしく言葉を覚えたての子どもたちに説明するのと同じことなのです。

彼らも少ないながらひらがなの言葉をしっかりと持っているのです。

その言葉を使って予測や想像を広げることもできるのです。


同じようにお年寄りでもきちんと音さえ拾うことができればひらがな言葉でしっかりと理解できるのです。

聴力が衰えてきているためにひらがなの音がことばとして聞き取り難いだけのことなのです。

ひらがな言葉は対象を選ばない、誰に対してもきちんと伝えることができる言葉なのです。


実はイヤホンやヘッドホンで音楽をいつも聞いている人は誰よりも多くのひらがな言葉を聞いているのです。

歌詞はひらがな言葉のオンパレードなのです。

だから書かれた歌詞を見なくとも聞いて理解しやすいのです。


もっとも最近の曲ではひらがなの音自体がとても聞き取り難い曲が多くて言葉自体がつかみにくくなっていますね。

それでも中島みゆきやさだまさしなどの曲を聞いた時に感じる安心感と理解しやすさからつながる共感がうれしくなりますね。

明らかに意識してひらがな言葉を使っていると思われる歌詞もたくさんあります。

かなり参考になりますよ。



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2016年3月2日水曜日

「現代やまとことば」を経験する(2)

先回に続いて「現代やまとことば」の一端を見てみましょう。

同じ例題を使用してみたいと思います。

「IT技術の進展により、様々な知的資源、文化資源をデジタル化して保存、発信する「デジタルアーカイブ」が脚光を浴びています。」
これを文節で分けみたものが以下の内容でした。

IT技術の/進展により、/様々な/知的資源、/文化資源を/デジタル化して/保存、/発信する/「デジタルアーカイブ」が/脚光を/浴びています。

先回の「IT技術」に次いで、今回は「進展」をみてみます。
(参照:「現代やまとことば」を見る(1)

この言葉をひらがな言葉に置き換えるにはどんな言葉を持ってきたらいいでしょうか。

国語辞書的には「事態が進行して新しい局面が展開すること」とあります。


同じような言葉に発展、発達、進化などがありますが、これらとはどこが違うのでしょうか違わないのでしょうか。

今回の文章の意図からすればどの言葉を使ってもほとんど問題ないと思われます。

この文章から読み取った意図を私が「現代やまとことば」で置き換えるならば単に「すすんだ」とすると思います。

「IT技術の進展により」は私の「現代やまとことば」で置き換えてみると以下のようになります。

「すぐに使える形でいろいろなものが残しておくことができるようになってきたやり方(いわゆるIT技術)が進んだことによって」


全体の意図を考えれば語順から言葉まですべて話し言葉として変えてしまいたいところですが、ここでは例題としてできるだけ本文で使われた言葉に忠実に置き換えを中心にやってみたいと思います。

そうはいっても、現実に話し言葉ではなく文字が見えてしまっているのでその効果は実感しにくいかもしれませんね。

できたら、誰かと話し言葉でやってみて欲しいと思います。


漢字で書かれている言葉は比較的ひらがな言葉にしやすいのではないかと思います。

その漢字自体が訓読みを持っていることが多いからです。

まずは単純にその単語を訓読みで表現してみてから伝えたいことと合っているかどうかを見てみてください。


もっとも、その訓読みの意味を自分なりに持っていなければ伝えることもできないと思いますので、言い換えた訓読みが自分でもピンと来るものでなければなりません。

「進展」を訓読みにすると「すすむ」と「のびる」となります。

「のびる」の訓読みは常用漢字にはありませんので馴染みのないものであり訓読みにしても分かりにくいものとなります。

「すすむのびる」としてもいいのですが「すすむ」は意味として十分に「のびる」を含んだものとなっています。

とくにその前の言葉にやり方(技術)という言葉があるので「すすむ」のひとことで十分に「進展」に込めた意図を反映できることになります。


先回にも説明したようにひらがなは単語同士の関係や論理を構成する大切な役割があります。

ひらがなを消してしまって並べた単語群は、漢字やカタカナ・アルファベットなどの目を引く文字が多くてどうしても意識がいってしまうようになってしまいます。

しかし意図として伝えたいことは単語同士の関係を中心とした論理であり気持ちであり状況なのです。


この例題に話し言葉と書き言葉の違いの特徴がよく現れている箇所がありますので触れておきたいと思います。

同じような内容で二ヶ所あります。

使い方としては句点「、」の使い方になります。

「知的資源、文化資源を・・・」の部分と「保存、発信する・・・」の部分になります。


話しことばとしては出来るだけ避けたい表現になります。

名詞を句点で区切ってしまうやり方は要素を列記する場合などによく使われます。

これは、文字として表現するときにのみに有効であって話しことばには使わない方がいい表現です。


音として瞬間に消えていく表現である話し言葉は各要素の関係をできるだけ早い段階で確定させてあげることが分かりやすさにつながります。

文字になっている場合に比べると後から要素同士の関係を確認することがとても難しくなるからです。

「知的資源、文化資源を・・・」と話してしまっては知的資源と他の要素との感が分かりにくくなってしまうのです。

とくにすぐ後に続く文化資源との関係がしばらく後にならないと分からないのです。


この場合は「知的資源文化資源」「知的資源文化資源」のようにひらがなの力を使うことが必要になる場面です。

この場合は二つの要素が同じ位置関係で並んでいますので並列の閑にあることが「と」「や」によってすぐわかるからです。

この例は文字で表現する場合であっても句点は避けたほうがいい場面です。

文字で表現する場合であってもこの例は要素の並列的表記ですので「知的資源・文化的資源」として中点「・」を使った方が良いと思われます。


同じことが「保存、発信する・・・」にも当てはまります。

話しことばとして表現するには「保存発信する」としてみたり「保存して発信する」「保存したり発信する」とした方が伝わりやすいことになります。


表現技術としての体言止め(名詞形で終わらせる表現)は文字という読み返すことが可能な表記方法において有効な方法です。

その場で消えていってしまう話し言葉においては要素同士の関係をできるだけ早く確定させてあげることが大切になります。

箇条書きのように要素のみを並べて話しをすることは聞き手にとっては理解するための負担を強いることになります。

きちんと伝えたかったり長い話においては出来るだけ避けたほうがよい表現になります。


「現代やまとことば」でひらがなことばによる表現を心掛けていると自然とこの感覚が身についていきます。

要素としての単語をひらがなことばで置き換えるだけではなく、要素同士の関係をわかり易くするためのひらがなの使い方も自然と行なうようになってくるからです。


実は、形容詞や動詞は漢字を使用した言葉であっても訓読み使用が圧倒的に多いのです。

特に基本的なことを表す言葉についてはほとんどが訓読み漢字かひらがな言葉になっているのです。

漢字熟語に「する」を付けた動詞も多く存在していますが、それらはもともとの日本語の感覚になかったものが多くなっています。

もともとの漢字熟語の名詞に「する」をつけて動詞化したものであり訓読み漢字やひらがなことばの基本動詞とは異なった感覚を持ったものとなっています。

感覚としては「する」のみが基本動詞であって、その前の漢字熟語は「〇〇をする」という感覚になっているものとなっています。


その他の修飾語としても〇〇的、〇〇風、〇〇化など新しい言葉を作るにはもってこいの表現方法があり、基本語としての形容詞とは感覚の異なったものとなっています。

無作為に選んだこの例文にはいろいろな参考になるものが含まれていました。

話し言葉としては効果の無い表現としての句点の使い方や「」による協調の方法もその一つです。

それらを補う方法はひらがなの使い方にしか求めることができないものです。


言語の認知としては文字よりも話し言葉が優位なのは自明の理です。

話せても書けない言葉がたくさんあるのがわかりやすい例です。

言語としての日本語が持っている話し言葉の音はひらがなだけです。

漢字もカタカナもアルファベットも文字としての効果しかないものです。


言語のコミュニケーションは口頭によるものが文字よりも優先します。

あらためて日本語の口頭言語は「ひらがな」であることを知っておきたいですね。






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2016年3月1日火曜日

「現代やまとことば」を経験する(1)

今まで何度も登場してきた言葉に「現代やまとことば」があります。

このブログは「現代やまとことば」を推奨して使いましょうと言っている割には、具体的な「現代やまとことば」を一度もお目にかけていませんでした。

概念的な定義的なものとしては数限りなく触れてきているのですが、結果としてのこれが「現代やまとことば」ですというものは提示できずにいました。

ここからしばらくは、実際の文章を題材として「現代やまとことば」として表現するとどのようになるかを見ていきたいと思います。


なかには「現代やまとことば」に置き換わらないものも出てくる可能性がありますが、それはその言葉に対する私の解釈がきちんと出来上がっていないからです。

また、目に触れた題材をえり好みせずに取り上げたいと思いますので、すべてがすんなりと置き換わるとは限りません。

その方が、「現代やまとことば」を理解するうえではより現実的ではないかと思いますので、敢えて無作為に選んでみたいと思います。


実際には話し言葉としての意識の方が強い「現代やまとことば」ですがここでは書き言葉としてしか表現できませんので、ぜひ話しことばとして思い描いたり実際に声に出してみたりして欲しいと思います。


まずは、「現代やまとことば」の定義をあらためて見直してみましょう。
  • 「ひらがな」ことばで表現できる話しことば
  • 訓読みで表現できる漢字を用いたことば
これだけのことです。


使い方や効果については何度も触れてきているので早速試してみましょう。
まずは、例文を設定してみます。

「IT技術の進展により、様々な知的資源、文化資源をデジタル化して保存、発信する「デジタルアーカイブ」が脚光を浴びています。」

慣れてくればそのまま単語を置き換えていくだけですので簡単ですが、ここではまず対象としての単語をわかり易くするために文節に区切ってみたいと思います。

IT技術の/進展により、/様々な/知的資源、/文化資源を/デジタル化して/保存、/発信する/「デジタルアーカイブ」が/脚光を/浴びています。

文節の区切りも読み方によっては絶対的なものではなくなりますが、一つの区切り方の例として11の要素に分けてみました。

「IT技術」の画像検索結果

まず、一つずつの要素の中に漢字で書かれているものを一目見て「ひらがなことば」であるものがすぐにわかるのではないでしょうか。

そうです、訓読みの漢字で表現されているものです。

話しことばとしては「ひらがなことば」としてそのまま使えるものになります。

「様々な」=「さまざまな」と最後の「浴びています」=「あびています」です。

この二つの要素は既に「現代やまとことば」になっているということができます。

「さなざまな」も「あびています」も誰が聞いても同じ解釈ができる言葉になっていると思います。


それ以外の言葉については「現代やまとことば」に置き換えていくことが必要になります。

そのためのヒントは助詞や語尾変化に使われているひらがなを消してしまって単語を丸裸にすることが有効です。

前にも触れましたが、ひらがなは単語同士の関係を明確にするための役割を持っているために、まったく意味が分からない単語に出会っても助詞や副詞・語尾変化などのひらがなのおかげである程度の推測ができてしまうのです。
(参照:「ひらがな」を使いこなせ


そのために、実際にはよく理解できていない言葉であっても何となくわかったような気がして流してしまい後で考えたら分かっていなかったということが起こるのです。

ひらがなを消してしまうことによって裸の単語が現れてきます。

その単語を「現代やまとことば」に変換することになります。


既に「「現代やまとことば」になっている言葉を除いて、ひらがなを外した言葉を並べてみましょう。

IT技術/進展/知的資源/文化資源/デジタル化/保存/発信/「デジタルアーカイブ」/脚光

漢字とカタカナ言葉だけになりました。

漢字については全てが音読みばかりですが実際には音訓混ざったものもあることがあります。

訓読みは話し言葉としてはそのまま「現代やまとことば」(=ひらがなことば)になっていますのでとても簡単に解釈できることになります。


さて、「IT技術」を置き換えてみましょう。

そのまま置き換えできるひらがな言葉はパッとは浮かばないのではないでしょうか。

国語辞典的にあるような「IT技術とは」は必要ないのです、自分の言葉として発するわけですから自分がどのような意味を持たせたいのかを表現しなければなりません。

「IT技術」の画像検索結果

分析的に考えれば「IT技術」=information technology 技術になりますので直訳してしまえば「情報技術技術」となって「落雷が落ちた」「頭痛で頭が痛い」などと同じ重複表現となっていることになります。

もともとが抽象的で意味が分かりにくい言葉となっていますので自分なりのことばで表現する必要が出てきます。

そもそも「IT技術」という言葉自体が使う人によって意味がみんな異なるような言葉になっているのではないでしょうか。

誰かに何かを伝えるための言葉というよりはこの言葉を口にすることを自慢したいだけの言葉になっていないでしょうか。


十人十色の解釈ができるこの言葉を言いたいことに沿った意味を持った言葉で置き換える必要があるのです。

この文章では、コンピューターや情報通信などの一般的な技術のことを意味していますのでよりわかり易い言葉にする必要があると思われます。


ITのようなアルファベットの略字やカタカナ文字で表現される言葉は、外来語であることが多く日本語としての表現として的確な言葉を持っていないことがよくあります。

あるいは何かしらの特別な意味を持たせたいために使用されることがあります。

そのために「現代やまとことば」に置き換えるには、自分がどんな意味を持たせて使っているのかを明確にする必要がある言葉となっているのです。

ひとことで置き換えができない場合もたくさん出てくることになりますがそれでもかまわないのです。


わたしが使いたい意味としては「すぐに使える形で残しておくことができるようになってきたやり方」とでもなるのではないかと思います。

文字では漢字も含まれていますがすべてが訓読みでありひらがなことばです。

わたしの中でも「IT技術」についてきちんと理解できていないことがよく分かる表現ですね。

こんな見直しもできることになります。


それでも「IT技術」を使いたいのであればその後に「すぐに使える形で残しておくことができるようになってきたやり方、いわゆるIT技術」として伝えれば伝えたい意図が明確になると思います。

無作為に取り上げた例題の最初の要素がいろいろな検討内容を含んでいました。

また、文字として表現するために書かれた例題ですので話し言葉として使用するにはかなり手を入れる必要があるものでもあります。


例題の文章を話して伝えようとする場合にこのまま読む人もいないと思いますが、敢えてやってみることで見えてくることもありますね。

今回は「IT技術」のみで終わってしまいましたが、少なくとも次の「進展」までは意識して考えてみたいものですね。


話しことばはあらかじめ用意しておいた原稿を読むことでない限りはその場での瞬時の言葉選びが大切になります。

緊張したり条件が厳しくなればなるほど自分の持っている使い慣れた言葉しか出てこないわけですね。

その言葉が自分でもしっかり解釈できていない言葉であったらきちんと伝わるわけありませんね。


「現代やまとことば」で表現することは自分の持っている言葉がしっかり解釈できており人に伝わることばかどうかを確かめることにも役に立ちます。

次回は、もう少し同じ例題で挑戦してみたいと思います。


「現代やまとことば」を経験する(2) につづく


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