2016年8月10日水曜日

ひらがなの文字と音

日本語が音としては「ひらがなの音」しか持っていないことは何度か触れてきました。
(参照:四種の文字と一種の音

それはどんな文字で表記しようとも読み仮名としてひらがなで表記することが多いことからも分かるのではないでしょうか。

読み方の難しい漢字やアルファベットなどには読み仮名が振られることが多くなっています。


読み仮名としては外来語などにカタカナが使われることもありますが、その音はひらがなとまったく同じものとなっています。

読み仮名の役割としては発音記号としての機能を持っているということができますが、ひらがなの音が完全に表記された文字通りの音になっているわけではないことは日常的にも気が付いていることだと思います。

「ひらがなの音」が一体いくつあるのかを見てみたいと思います。

現代の五十音表には以下のひらがなが充てられています。
文字数としては46文字になっています。

この中で「ん」は、言葉の最初に来ることがないことや母音を伴わないことなどから特殊な文字(音)として扱われることが多い文字となっています。


この表に書かれた文字のことをひらがなの清音と呼ぶことがありますが、音数としてはどうでしょうか。

話し言葉としての音では「お」と「を」が同じものとなっていますので、音数としては45音ということになります。


それ以外に日本語の基本音としては濁音と半濁音を数えることが多くなっています。

濁音は「か」「さ」「た」「は」行、半濁音は「は」行のそれぞれ5文字ずつ合計25文字になりますが音としてはどうでしょうか。

「さ」行の濁音の「じ」「ず」と「た」行の濁音の「ぢ」「づ」は音としては同じものとなっています。

したがって25の文字数に対して音は23ということになります。


日本語の基本音は清音としての45音と濁音半濁音の23音を加えて68音ということになります。

「きゃ」や「しょ」のような小さなひらがなで表記される音もあるではないかと思う人もいるかもしれませんね。

これは基本音としての「き」「や」や「し」「よ」が短くなった音として基本音のバリエーションとして考えるために別の音とはカウントしないようです。

同じように「きって」「てっぽう」などで表記される小さな「っ」についても、音があるわけではなく基本音の言い方の違いとして別の音としてのカウントとはしないようです。


つまり日本語は基本音としての68音とその言い方のバリエーションだけでできていることになります。

これは現存する世界の言語の中でも極めて少ない音数であることになります。


代表的な言語で日常的に使用されている単語の数は、フランス語で2,000語、英語で3,000語と言われています。

それに対して日本語は、10,000語が使用されていると言われています。

その日常使用語だけの10,000語をたった68音で使い分けていることになるのです。

同音異義語だけではなく似たような音に聞こえる言葉がどれだけたくさん存在しているのか実際に数えることも不可能だと思います。


さらに、同じひらがなであっても複数の音を持っている文字がいくつか存在しています。

見た目の文字は全く一緒ですので使われ方によって音が違ってくることになります。

典型的な例は格助詞として使用される「は」になります。

「わたしは」の「は」の音は「ハ」ではなく「ワ」という音になっています。


「は」の基本音は「ハ」ですが格助詞として使用されるときの音は「ワ」となっているのですが、ほとんどの場合は私たちは意識することなく使い分けをしていますし聞いて理解しています。

書く場合でも読む場合でも聞く場合でも意識することなく使い分けをしていることになるのではないでしょうか。

音の通りに表記されたものではかえって読んだときに理解することが難しくなってしまいます。


同じような例では目的地や方向を表す副詞としての「へ」があります。

基本音は「ヘ」ですがこの場合には「エ」という音になります。

音となって初めて意味するところの違いが分かるものとなっているものです。


実はこれ以外にも表記されているひらがなと実際の音が違っているものはまだまだあるのです。

「おとうさん」の「う」は基本音の「ウ」ではありません、「オ」という音になっていませんか。

このことは「東京」「京都」などのひらがな表記である「とうきょう」「きょうと」の「う」のすべてにも当てはまるものになっています。

基本音の「ウ」という音を使うとかえってぎこちなくなって言いにくくなってしまいます。


母音の「エ」に続く「い」についても基本音の「イ」とは言っていません。

「警報」(けいほう)、「成功」(せいこう)、「栄光」(えいこう)などの「い」は「イ」とは言わずに「エ」と言ってないでしょうか。


音読み漢字は文字で意味を表しているものであり音にしてみても日本語として意味のあるものではありません。

音としての日本語を表記するために漢字を利用して生み出されたものがひらがななのですが、そのひらがなであっても表記通りの音だけではないことになります。

日本語の本来の姿が音にあることは歴史が物語っているのではないでしょうか。


漢字の功罪には大きく二つの面があると思います。

意味のある文字として表記して理解するためにはとても便利であるために音としての日本語に対しての意識が薄れてしまったこと。

漢字があったことによって音としての日本語を表記するためのひらがなを生み出すことができたこと。


あらためて「ひらがなの音」によって日本語ができていることを見直してみることもいいのではないでしょうか。

普段から当たり前になってしまっているだけに新しい発見があると思いますよ。



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