それぞれの言葉遊びから日本語の持つ懐の広さを(大きさ)を感じてもらえるのではないかと思います。
まずは「山号寺号(さんごうじごう)」と呼ばれるものです。
これは落語の演目の一つでもあります。
ほとんどの寺院には「〇〇山△△寺」という呼び名があることを利用して行う言葉遊びです。
例:
・車屋さん、広小路
・おかみさん、拭き掃除
・時計屋さん、今何時
・看護婦さん、赤十字
・お肉屋さん、ソーセージ など
次は「なぞかけ」です。
「〇〇とかけて△△と解く。その心は××」という例の奴ですね。
ほとんどの場合は全く関係のないと思われる〇〇と△△を提示して、最後に共通点として「その心はどちらも××という如し」となります。
有名な例として2つほど挙げておきます。
例:
・やくざのケンかと掛けて、おっぱいと解く。その心はすったもんだで大きくなった。
・ミニスカートと掛けて、結婚式のスピーチと解く。その心は短いほど喜ばれる。
「なぞかけ」は単純な言葉遊びから始まったと思われますが、後付けで一つの方法論が出来上がっています。
〇〇=××、△△=××、したがって〇〇=△△を言葉で表すと「なぞかけ」ができるとなっています。
とこかで見たことありませんか?
そうです、あの三段論法です。
「なぞかけ」を練習すると論理に強くなるのは本当のようですね。
また、「たいこめ」という言葉遊びがあります。
ある文を後ろから逆に読み返ると、全く違う意味の通る文のことです。
先に例を挙げた方がわかりやすいと思います。
例:
・「鯛釣り船に米押しダルマ」(たいつりぶねにこめおしだるま)
反対から読むと・・・ となります。
この例文の赤い文字を取って「たいこめ」と言われるのだそうです。
普段口にするのがはばかられるような言葉を反対読みに隠して遊んだんでしょうね。
もう一つだけ例を挙げておきます。
・「雲雲崖にこんち旅無し」(くもくもがけにこんちたびなし)
時代や地方によってさまざまなものが存在したといわれています。
「無理問答」という言葉遊びもあります。
一休さんで「ソモサン」「セッパ」とやっている掛け合いですね。
例:
・問い「そこにあるのに犬(居ぬ)とはこれいかに」
・答え「近寄ってきても猿(去る)と呼ぶがごとし」
・問い「トラックが1台でも荷台(2台)とはこれいかに」
・答え「トラックが2台でも重大(10台)事故と言うがごとし」
問いに対してなるべく近いものを持ってきたほうが効果が高そうですね。
これあたりはかなり頭の回転が要求されますね。
古いところでは徳川家光が東海寺を訪れたとき沢庵和尚と交わしたとされる問答が残っています。
家光「海近くして東(遠)海寺とはこれいかに」
沢庵「大軍を率いて将(小)軍というがごとし」
また、「折句(おりく)」という言葉遊びもあります。
ある文章の中に別の意味を持つ言葉を織り込む言葉遊びですね。
一般的には行書きした先頭の文字(句頭)を利用したものが多いようです。
現代でも谷川俊太郎の詩などが例に挙げられます。
例:
あくびがでるわ
いやけがさすわ
しにたいくらい
てんでたいくつ
まぬけなあなた
すべってころべ
頭の文字をつなぐと「あいしてます」となり、詞の内容とは反対の意味が隠されているのがわかります。
「いろは歌」に隠された「咎無くて死す」は句尾を使ったものですね。
詳しくは「いろは」に隠された怨念をご覧ください。
最後は「地口(じぐち)」と呼ばれる語呂合わせ・言葉合わせです。
リズムをよくするために発音の似た意味のない言葉や、一部から想像できる言葉をつけて遊んだものです。
例:
・美味かった(うまかった:馬勝った)、牛負けた。
・美味しかった(おいしかった:大石勝った)、吉良負けた。
・見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし。
・いわぬが花の、吉野山。
・けっこう毛だらけ猫灰だらけ、ケツの周りは糞だらけ。
素直には面と向かって言いにくい言葉をおちゃらけて表現する場合もこれに含まれますね。
例:
・ありがた山のホトトギス
・すいま千円
・おそれ入谷の鬼子母神
・当たり前田のクラッカー
有名な言葉をもじって遊んだものもありますね。
例:
・舌切り雀 → 着たきり娘
・しづ心なく花の散るらん → しづ心なく髪の散るらん
これらに限らず日本語の言葉遊びはあちこちにたくさんあるようです。
ここでご紹介したのはほんの一部です。
一杯飲みながらのバカ話で「やまとことば」に触れながら遊ぶにはちょうどいい材料ではないでしょうか。
いざ、やってみると普段使っていない頭の部分が刺激されるのか、かなり気持ちいい遊びになりますよ。
決まった時の快感はたぶん脳科学でいうところのアハ体験につながるものがあるのではないかと思います。
今晩ビールを片手にでもやってみませんか。
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