2016年2月19日金曜日

聞き手の予測を助ける話し方

日本語での口頭によるコミュニケーションにおいて実際に伝わっているものが「ひらがなの音」でしかないことは何度か触れてきました。

きき手の方では、受け取った「ひらがなの音」を手掛かりとして言葉であることを認識して意味を解釈して話している内容を理解しようと活動をしています。
(参照:「ひらがな」でしか伝わらない日本語日本語で聞いていること など)


その活動はすべての「ひらがな音」を言葉単位で聞き取ってから行なっていたのでは意味や言葉同士の関係を考えているうちに次の言葉をつかみ損なってしまいます。

全ての活動が「ひらがなの音」を受取った瞬間にできているわけではありません。

そのために受け取った情報からそれ以降の言葉や内容について予測をするという活動が行われていると思われます。

そして、この活動はきき取った言葉が使われるバリエーションをより多く経験している方がより予測の精度が高くなることが考えられます。


言葉の数は大人と変わらないほどの持っている子どもが大人と同じように話を理解できないのは、この言葉のバリエーションの経験が少ないからだと思われます。

一つひとつのことばの意味については大人と変わらないものを持っていたとしても、その言葉が使われる場面についてのバリエーションの経験が少ないことで言葉同士の関係や内容の理解において適切さが欠けてしまうのではないでしょうか。


また、経験を重ねることによってすべての人が同じ経験をしていくことにはなりませんので、一人ひとりの持っている言葉の使い方の理解が異なっていくことになります。

共通する解釈ができる場面もあると思いますが、バリエーションが増える分だけ一人ひとりの解釈の仕方も違ってくることになると思われます。


「ひらがなの音」から言葉を認識して意味を解釈していくためにはしっかりとした「ひらがな音」を掴み切ることが必要になります。

この段階での言葉の取り違えの代表が同音異義語になります。

「ひらがなの音」だけを頼りにしていると同音異義語の中から適切な言葉を選ぶことができません。

そのためにも何について話しているのかという予測とそれにその後に発せられるであろう言葉を予測することが行なわれていると思われます。

「ひらがなの音」を聞き取ってから言葉を確定し意味を考える活動を常に瞬間に行なっているわけではないのです。

「同音異義語」の画像検索結果

したがって話し手の意図をきちんと伝えるためには「ひらがなの音」をきちんと伝えることは勿論ですが、きき手の予測の手助けになる情報を与えてあげることが大切になります。

その第一が伝えたいことの意図と内容を早目にわかり易く伝えることになります。

わかり易さを考えて具体例から話し出したり興味を持ってもらえそうな話しから始めるよりもずっと大切なことになります。


このことによって登場してくる言葉の意味の方向と使い方がかなり予想できることになります。

聞きなれない言葉が登場しても推測できるための根拠が与えられることになります。


次に大切なのが、言葉同士のつながりや関係がどの世になるのかの予測の手助けです。

そのためには接続詞の使い方が大切になります。

言葉だけではなく論理を予測し理解するためにもとても大きな手掛かりとなるものです。


たとえば、ひとつは、言い換えれば、しかしながら、などを聞き取ることができれば以降の言葉や内容をかなりの精度で予測することが可能となります。

文章に書く場合よりも話す場合の方が接続詞の効果が大きいということができると思われます。

上手に使うことによってきき手の理解の大きな手助けになるものです。


言葉としての「現代やまとことば」を使うことで言葉や単語単位での解釈を助けることは可能ですが、単語同士の関係による内容の理解や論理の理解は同じひらがなでも助詞や接続詞の役割が大きくなります。
(参照:「現代やまとことば」の効能

いずれにしても、はなし手の意図はそのまま伝わることがないことを理解しておけば、何とかきき手の活動を助けるための伝え方をしようと考えるようになります。

その場合にはきき手がどのような活動をして解釈し理解しようとしているのかを分かっていないと、手助けすることすらできないことになります。

予測を助ける前に「ひらがなの音」をしっかりと伝えることができているかを感がえてみる必要もあるかもしれませんね。

人の話が実際に伝わっているのは「ひらがなの音」であることを理解しているだけで伝え方も変わってくるのではないのでしょうか。