2016年1月15日金曜日

自己紹介の伝わり方

普段生活の中では人前で何かをきちんと伝える機会はなかなかありません。

特によく知っていない人に対して何かを伝える場面は、機会が少ないこととある種の緊張感が伴うために上手くいかないことが多いのではないでしょうか。

事前にその機会があることが分かっていたとしても、伝えたい相手についての情報がほとんどない場合は準備のしようがありません。

こちら側からの一方的な伝えたい内容をどう表現するのかに工夫をすることくらいしかできることが無くなってしまいます。


その検証はやった後で行なうしかありませんので、結果としては同じような視点を持った人たちだけでやっていることになります。

ことに、仕事で行なっている場合には携わっている人たちがほとんど同じ環境で活動している人たちばかりですので自然と伝わりやすい環境になっていると思われます。

しかし、ここに大きな落とし穴があることになります。


似ているけれども違っていること。

これが一番大きな伝わり方のミスを生む原因となっていることです。


まったく違った伝わり方をしているのであれば、どこかの場面でお互いが気がつくこともあると思われます。

しかし、微妙な違いにおいては話しが進むにつれてもズレに気づかないことも多くなってしまいます。

その場で確認できなかった微妙な違いが、その場を離れた後で大きな違いとなって現れてくることはかなり頻繁に起きていることではないでしょうか。


いちばん気軽に数多く行なっている伝えるという行為に自己紹介があります。

名刺交換の場やメンバーの初顔合わせ、担当者の交代の場など様々な場面で行なわれています。

この時に、それぞれの自己紹介の場面でその自己紹介の目的を考えたことはあるでしょうか?


自己紹介の目的と改めて言われても、会社人生活を長く送っているとわからなくなっていることかもしれません。

名前が知れ渡った会社であればあるほど、会社名と名前だけで済んでしまいます。

せいぜい部署名と役職が加わる程度ではないでしょうか。

それでも名前が知れ渡っているということは、すべての人が同じ内容で知っていることではありません。

むしろ、知れ渡っていればいるほど何で知っているかについては多様性に富んでいる可能性があるのではないでしょうか。


知れ渡っている企業名に加えられた個人名は、相手にとっても個人についてはほとんど意味をなしていないことを表しています。

その企業のその部署のその役職の人との仕事上との関わりであり、そこに個人名があろうとなかろうと実際には問題がないからです。

仕事上の自己紹介・名刺交換は企業名と部署・役職の確認でありその企業における権限の確認でしかありません。

個人としての人はどうでもいいのです。


企業人同士の仕事上の関わり合いというものは企業名と部署名と肩書き同士の関係であり個人名はどうでもいいものとなっているのではないでしょうか。

そんな場面での自己紹介は自己を紹介することではなく役職紹介の域を出ていないのではないと思われます。

これを自己紹介と勘違いすると、会社を離れてから社会に出た時に苦労することになるのではないでしょうか。


自己紹介の内容は、ほとんどの場合は相手の知らない自分でしか知っていないことが多いと思われます。

つまりは、自分にとっては当たり前にわかっていると思っていることばかりになります。

しかもほとんどの場合は一方的に伝えていることが多く、どのように伝わっているのかを確認できるきかいがきわめて少ないと思われます。


自分ではによく分かっているつもりになっていることを、そのことについてはほとんど知らない人に伝えるという行為になります。

同じ活動環境にいて個人的にもよく知っている人の自己紹介については、よほど知らなかったことでも登場してこない限りしっかり耳を傾けることはないと思われます。


ここに自己紹介の二つのポイントがあります。

ひとつは、自分のことを紹介することですので誰よりも自分のことをよく分かっていると思い込んでいることです。

もう一つは自分のことを紹介する言葉について聞き手も同じ理解ができるものと思い込んでいることです。


自分の自己紹介を考えたり行なったりしているときには気がつきにくいことです。

人の自己紹介を客観的に見たり聞いたりできるとすぐに気がつくことでもあります。


学校の先生を思い浮かべるといいと思います。

自分ではによく分かっていると思っていることを、そのことを全く知らない人に伝えて理解してもらうことをやろうとしているのです。

しかも、この手の相手に理解してもらおうとする活動としては極めて短い時間で行なうことが多い活動です。


自分でわかっている自分のことは、自分としての固定的な見方になっていることがほとんどです。

そこには自分から見た視点しかないからです。

そこで使われている言葉は自分でしか理解できない使われ方になっています。


そもそも日本語そのものが一つの言葉の持っている多様性が高い言語となっています。

同じ言葉でも人によって理解している内容が異なっていることが多くなっています。


自分のことを紹介しているつもりですので、つい断定的に語ってしまうことにもなります。

自分で自分をどう見ているかと言うことに対しては伝わりにくいことの典型になります。

聞いている人に対して、このように自分を見てくれと言っていることになります。


伝わりやすいのは、人にどう見られているのかを表現することです。

その観点から表現するだけで、聞いている人は自分と同じ感覚として受け入れることが容易になります。

これが日本語の環境で行なうべき自己紹介です。


英語環境であれば実績や受賞歴などの評価が大事になりますが、日本語感覚の環境では反発を受ける可能性の方が高くなります。

そして、この感覚は聞いている人の間で伝搬していってしまいます。

自己紹介の目的が自慢と嫌われることであれば別ですが、そうでなければ人からはどのように見られているのかをわかり易く伝えることが大事になります。


使う言葉としてのわかり易さはあらためて「現代やまとことば」として触れてみたいと思います。
(参照:共通言語としての「現代やまとことば」 など)


体験会を行ないます、ぜひお越しください。