2015年8月6日木曜日

ひらがなで話そう

日本語の持っている特徴に、持っている文字の多さがあります。

ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、日常的に使っている文字だけでも4種類もありますし、これらが混ざっていても何の違和感もなくなってきています。

コピーライティングにおいては、同じことを表現するのにどの文字を使うかによってイメージがかなり違ってしまうことを利用するテクニックもあります。


ところが、声に出して伝える時にはすべてがひらがなの音となっていることを以外と忘れているものです。

表示する文字が多いことに加えて、日本語は話し言葉として持っている音の数が他の言語に比べてかなり少なくなっています。

ひらがなの基本音は「ん」を含めても48音しかありませんし、濁音半濁音を含めても73音しかありません。

同じ音でも表記の異なるもの、使い方で音が変わる「は」と「わ」や「お」と「を」などがありますが、持っている音の中のものであり特別な音になっているわけではありません。

その結果として、驚くほど同音異義語が多く存在する言語となっています。


それだけに、話し言葉(口語)とは別の文字表現としての技術(文語)が発達した言語であるともいうことができます。

言文一致体として、話し言葉と書き言葉が音として一体化するようになったのは最近のことであり、明治期以降の外国文化を大量に取り込むようになってからのことです。


話し言葉よりも書き言葉の方がより多くの表現ができるようになっていますので、より細密な表現をしようとすると文字にして書くことの方が優位になります。

それは使用する言葉や文章としての論理を考えて表現するときには、とても強い味方となるものです。

一つの事象に対して、独特の感覚やイメージを伝えるための表現を工夫することも可能となっています。


しかし、書くことが最も苦手としていることが即時性であり即興性です。

この分野において話し言葉にかなうものはありません。

文字を使った表現に比べれば、その細密さについては劣ることは仕方がありませんが即時性においては圧倒的な優位性を持つものとなっています。

とくに、相手を目の前にした場合には言葉以外の表現方法も有効に機能しますので、即時性の特徴としてのその場での修正や共感を助けることができます。

文法の自由さも伴って、書き言葉ほど制約を受けることなく文法を意識することすらないと思います。


日本語の話し言葉における機能としては、すべての言葉をひらがなの音として受け止めていることが挙げられます。

ひらがなで受け止めた言葉がそのままひらがなで理解される場合はとてもスムースに話が進みますが。

聞きなれない音や同音異義語の多い音を受け止めた場合には、その意味を瞬時に判断することがおこなわれます。


その場合に理解の助けになるのが、そこまでの話の流れや取り上げられている話題になります。

突然話題が変わった時に出てきた聞きなれない言葉が理解しにくいのは、推測するために材料が少ないから起こることですね。

このあたりのことを遊びとして取り込んだのが、語呂合わせであったり駄洒落であったりおやじギャグであったりすることになります。


同音異義語を理解するために頭の中で行われていることが、漢字での表現を思い浮かべることです。

漢字は一文字ずつが意味を持った文字であり、文字そのものも意味を持った部分(部首など)から構成されている表意文字ですので、文字を思い浮かべることによって理解の精度を上げることができるものです。

しかし、そこでは該当する漢字を思い浮かべるだけの時間的な余裕が必要になります。

即時性や即興性には向かない活動を強いることになります。


話し言葉を一番スムースに展開させるには、ひらがな言葉によって話をすることです。

同音異義語や聞きなれない言葉のほとんどは名詞のはずです。

動詞にも同じ読みで異なる漢字表記のものが多く存在する「かく」「きく」などがありますが、動詞は基本的な動作を表わすものでありひらがなでそのまま理解できるものとなっています。

より具体的な動作を表すために、ひらがなの音に対して後から具体的な漢字を充てたものとなっています。

ほとんどのものが漢字を使っていても訓読みとなっているのはそのためです。

訓読み漢字はそのままひらがなの音として理解できるものとなっているのです。


話し言葉としては、名詞をできるだけひらがなで表現することによって相手の理解を助けることができます。

同時に、自分の理解を確かめることもできるのです。

ひらがな言葉で表現できない名詞は、結局のところ自分でもよく理解できていない曖昧なものであることが分かると思います。


話すことの目的も様々あります。

専門分野の講演で、難しい専門用語をたくさん使った方が良い場合もあると思われます。

しかし、話すことの基本は相手に理解してもらうことだとすれば、相手が理解しやすい話し方をしなければなりません。

話す相手の氏素性から専門分野やそこにおける習熟度などが分かっている場合は、それ向けの言葉を選ぶことも可能だと思いますが、そんな場面はめったにありません。


生活環境の同じような人たちが集まってしまうのは、共通言語が多いことによって言葉を選ぶ必要がないからです。

なるべくよく知らない人たちと会話をする方が、話すことのためには役に立ちます。

全ての人に共通して同じように理解できる言葉が、ひらがな言葉なのです。

日本語の基盤がここにあるのです。


それでも専門用語や英語を使わなければいけない場面があると思います。

使ってもいいのです、その代りにひらがな言葉でもう一度言い換えてあげることが大切になります。

世の中の意味と違った使い方でもいいのです。

ひらがな言葉で言い換えることによって、「ああ、この人はこういう意味で使っているのだな」と知ってもらうことができるのです。


漢語の読みである音を利用して「古代やまとことば」を表した結果できたのがひらがなです。

日本語の原点は漢語ではありません。

漢語以前に文字のない言葉としての「古代やまとことば」があったのです。

「古代やまとことば」を書き記すために長い時代を経て出来上がってきたのがひらがなです。

ひらがな言葉こそが「古代やまとことば」から伝承されてきている「現代やまとことば」なのです。


文のつなぎや論理の構成や時制の表現はすべてひらがながおこなっているのです。

その中で使われている名詞が時代によって変化し使われ方が変わっていくのです。

その表現には、漢字やカタカナ、アルファベットや言語など様々なものがあります。


文章を文章として成り立たせているのはひらがなのです。

名詞だけが並んだ文字列を見ても何のことだか分からないのです。

現代の私たちは、漢文を読んで理解することができません。

漢字が並んでいるだけでは文にならないのです。


「現代やまとことば」は1000年を超える日本語の感覚が継承されているものです。

日本語を日本語として性格付けをし基本的な日本語の感覚を決めているのがひらがななのです。

もっと大切にして上手に使っていきたいですね。