言語についての感覚は、脳の中の言語中枢(言語野)で判断されていると言われています。
脳については、その機能やメカニズムについて解明されていないことが非常に多い分野です。
脳に限らず、人間そのものが解明されいないことが多い生物であるということができるのではないでしょうか。
かつては、脳の一部を切除して反応を確かめるような実験も行われましたが、現在においては様々な研究や観察などによってある程度のことが分かってきました。
その一部に、言語について司っていると思われる部位の研究のあります。
それによれば、右利きの人の90%程度は左脳に言語中枢(言語野)があり、左利きの人の60%程度が同じように左脳に言語中枢があるとされています。
難しいのは、左利きと言っても生まれついての完全な左利きの人もいれば、比較的両利きに近い状態の人もいることです。
ここで言っている左利きとは、ある程度完全な右利き以外の人のことを言っているのではないかと思われます。
したがって、60%程度と言われている左利きの人の言語中枢が左脳にあることも、左利きの定義によってはかなりその率が変わってきそうだということです。
言語中枢の脳の中における所在地が、すべての人で同じではないということだけがわかっていると言ってもいいのではないでしょうか。
その異なる理由の一つとして、右利きか左利きかということがありそうだという程度で考えていた方がよさそうです。
自分の言語中枢が左右どちらにあるかは、比較的簡単に確認することができます。
それは人間の感覚器官から脳に送られる信号のルートによって確認することができるからです。
言語を認識するための大きな要素は、視覚と聴覚です。
視覚として捉えたものを文字であろうと判断すると、その信号は言語中枢に送られて文字としての判断をします。
聴覚として捉えたものを言葉であろうと判断すると、その信号も言語中枢に送られて言葉としての判断をすることになります。
左右の感覚神経は、基本としてはそれぞれ個別に脳に送られており、右側の器官て捉えた信号は左脳へ、左側の器官で捉えた信号は右脳へ行くようになっています。
この交差が首の後ろ側の方で行われています。
視覚については、片方の目からも左右両方の脳へ信号が送られていることが分かっています。
それは片方の目だけでも、その目の右側で捉えているものが左脳へ送られ、左側で捉えているものが右側へ送られています。
右目よりも右側で視覚に捉えたものは、左右どちらの目からも左脳に信号が送られており、左目よりも左側で視覚に捉えたものは左右どちらの目からも右脳へ送られていることになります。
これらのことを念頭に置けば、文字や文章を読むときに顔の右側で読んだ方が理解しやすいのか左側で読んだ方が理解しやすいのかというチェックができます。
世の中のほとんどのものは右利き用にできていますので、典型的なものがあります。
映画の翻訳による字幕です。
昔はスクリーンの右端に、縦書きで日本語が流れていたのを記憶されている人もいるのではないでしょうか。
現在ではスクリーンの真ん中下部に流れていることがほとんどですが、右利きの人がスクリーンに向かって右端から見ていた場合と左端から見ていた場合では、同じ映画であっても理解度がかなり異なっていたということが報告されています。
正面に対してどちら側に文字や文章をとらえたらより速く正確に理解できるかを確かめると、自分の言語中枢が左右どちらの脳にあるのか分かります。
右側に置いた方が理解しやすい場合は、左脳に言語中枢があると思われます。
もっとわかり易いのが聴覚においてです。
内緒話や聞き取りにくい話を聞こうとするときに、左右どちらの耳を向けようとしますか?
聞き取りにくい電話を聞くときに、どちらの耳に持ってきますか?
言語であることを理解し、その内容を理解しようとするときには、しっかり言語として聞き取ろうとする行為が自然に行われます。
右耳で聞き取ろうとする場合には、左脳に言語中枢があると思われます。
言語として情報を取り込もうとすると、意識しなくとも自然に行われていることです。
ご自身の言語中枢が左右どちらの脳にあるかを知っておくことは、意識的な知的活動における情報の入れ方などに役立つことになります。
一度確かめてみるのもいいのではないでしょうか。