知的活動の一つに交渉があります。
ゲーム理論などからのアプローチもあり、民族における精神文化によって交渉のスタイルやアプローチもかなり異なっていることがわかっています。
その中でも特に、世界の一般的な交渉と比較したときの日本人の交渉に対する技術や戦略の欠如は、いろいろな場面で指摘されています。
単に交渉という場が、自分に都合のいい結果を獲得するためだけのものであるならば、そのためのテクニックは山のようにあると思われます。
相手の出方に応じて、様々な切り返しや説得によって狙った結果を得ようとする技術には、様々なアプローチがなされています。
交渉におけるグローバルスタンダード的なものも定義されてきており、あらゆる場面での共通スタイルになりつつあります。
それに対しても、日本流の交渉はあまりにもかけ離れているために、日本人同士の交渉ごとにしか慣れていない場合は、戸惑うことが多くなります。
(参照:日本人の交渉のスタンス)
皆さんは、交渉における期限の設定をどのようにとらえているでしょうか?
私の周りに人達にも、少し聞いてみました。
さまざまな意見はありましたが、総じて言えることは交渉そのものの期限の設定をしたことがほとんどないようでした。
契約や発注、見積提出などにおいては期限は設定するのに、交渉そのものに期限の設定がなされていないのです。
その裏にあるものは、交渉の目的がはっきりしていないことが多いために、交渉だか相談だか連絡だかわからなくなっているようです。
外国の友人数人に確認してみました。
交渉で設定する期限には、設定した方にとってその期限までの間は交渉に応じる用意があると宣言していることになるそうです。
内容によっては譲歩する用意が、あるいは妥協する用意が、条件を受け入れる用意があることを意味します。
交渉当初に提示された条件が、期限までの間には緩和される可能性があるということが前提になります。
期限が設定された交渉においては、様々な手段によって交渉を続けていかないと損をするということになるようです。
期限前に提示された条件は、あくまでも仮の提案条件であり、最終条件は交渉期限までに変更されることを前提としているのです。
したがって、交渉の期限をどちらがどんな期間で設定するかは、交渉におけるとても重要な要素となっているのです。
短かすぎれば、結論を急いでいると思われて足元を見られることがあります。
長すぎれば、本気でぎりぎりの条件を引き出すことは難しくなります。
ひとたび決めた交渉期限を延期することは、優柔不断さの現れとして、次回以降の信用性が疑われることになります。
交渉期間の長さについても、コストであるということが意識されていますので、いかに短い期間でより利益につながる条件を引き出せるかが交渉の中身になります。
どんなに有利な条件を引き出せたとしても、長い期間をかけて交渉した結果ではメリットが減ってしまうことをわかっているからです。
もちろん期限の設定のない交渉においては、まともな条件を引き出すことすら不可能となってしまいます。
交渉の当事者だけでなく、その交渉の結果を社会が注目している外交交渉のようなものになると、当事者以外への影響までも考えた内容としなければならなくなります。
グローバルスタンダードにおける交渉では、期限御設定が大きな要素となっています。
一方、日本の交渉においては、腹を割った最終条件の提示があらゆる場面で求められ、期限を決めなくともだらだらと条件の探り合いが続くことはありません。
反対に、一度提示した条件を変えることの方が姿勢を疑われることになることが多いようです。
駆け引きをしながら少しずつでも内容を有利な方に導いていくということがあまり行われていません。
交渉が長引くことは、決して良い結果としては受け入れられない風潮があります。
国際間の交渉ごとにおいては、ほとんどの場合は期限が設定されていますし、交渉が設定されるときには同時に期限が去っていされていることの方がほとんどです。
しかし、日本における報道では、交渉の開始が報道されるときに期限までが伝えられることは極めて少ないと思われます。
期限を決めないということは、最終的に結論を出す意思がないと受け取られるのです。
交渉における期限の設定は、その交渉における本気度の表れであり、相手に対しての信頼度の表れになっているのです。
一歩間違うと、交渉そのものを意味のないものにしてしまう危険もありますので、慎重に設定したいですね。
しかし、どちらが交渉の期限を設定するのかによって、交渉そのものの主導権を取ることが決定的になることがほとんどですので、交渉の最初の決め事が期限の設定になることがあります。
その期限までは、お互いに何とか合意できる状況作ることに向けて努力し続けるという最初の合意事項になるからです。
まずは、期限の設定をしてみることが、合意形成のきっかけになるかもしれないですね。
上手く使いたいですね。
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