先進文化圏の言語のなかで、日本語の話し言葉としての音の少なさは際立っていると言えます。
そのために、ひらがなとしての日本語は習得するのに比較的簡単にできるのですが、漢字が入ってきた途端に難解な言語になってしまいます。
大きな要因が、言語としての性格や成り立ちにあります。
日本語と中国語、すなわち漢字を使用している言語以外の言語は音声言語として成り立っているものです。
文字や文章で記すことよりも、コミュニケーションの中心が話し言葉にあるのです。
文字に書くことよりも、音として発音した方が理解しやすい言語となっているのです。
文字で書くよりも、音として表現した方が意味が伝わりやすいのです。
そのために、子音の数に代表されるように、非常にたくさんの音を持っています。
文字としての区別よりも話し言葉としての区別の方がしやすくなっているのです。
彼らの持っている文字が、基本的には音を表す表音文字となっているからです。
それにも拘わらす、同じ文字であってもその使われ方によっては複数の音を持っているから、文字主体の言語である日本語を母語としている我々には理解しにくいものとなっているのです。
ひらがなは完璧な表音文字です。
一つの文字には一つの読み方(音)しかありません。
英語のaの様に使われ方によってたくさんの音を持っているわけではありません。
どんな使われ方をしようとも文字として書かれたひらがなには、一文字に一音しか対応していません。
かつては、「てふてふ」と書いて「ちょうちょう(蝶々)」と読ませたようなものが存在しましたが、現代ひらがな表記においてはそのようなものはありません。
漢字があることによって意味が分かりやすくなるのは、文字での表現ができるからです。
音としては同じ音が沢山あるのですが、漢字にして表記することによってその意味がはっきりしてくるのです。
これを、ひらがなで表記してしまっては、音と同じことになってしまいますので、音の確認はできたとしても意味の正確性は伝わりません。
文字として伝える時には、なるべく漢字を使った方が意味が捉えやすくなるのです。
「やちまた」や「なこそ」という言葉を音だけで聞いた時にはなんだかわからくとも、「八街」や「勿来」という漢字を見れば何となく地図で見たりした千葉県の地名ではないかと思えるのです。
普段から使っている言葉であれば、音だけで理解可能であっても、初めて聞く音としての言葉は漢字を見てやっと理解できるということは少なくないはずです。
世界の文字のなかで唯一現存する表意文字としての漢字のチカラが生かされている場面です。
日本語は、基本的には表記された文字や文章で理解する言語です。
だから文字としての漢字が、理解するうえでは大事になるのです。
一般的な表現のなかで漢字が大量に増えたタイミングがあります。
明治維新です。
一般的にはなじみのなった仏教用語や、新しい組み合わせとしての熟語までを入れると、広辞苑一冊分の訳20万語がこの時に生み出されたと言われています。
それ以前には使っていなかった使い方としての漢字が広がっていったのです。
漢字の本家である、中国に逆輸出の形で広がって言った漢字も数知れません。
国名である中華人民共和国の中華外の漢字の使い方である、人民も共和国も日本で作られた漢字の組み合わせです。
もともと、音として持っているものが少なかった言語であるのに、非常に多くの漢字を組み合わせ(熟語)を作ってしまったので、同音異義語が溢れることになりました。
ますます、音だけではわかりにくい物となっていったのです。
欧米の人たちは、口頭言語のなかで歴史を作ってきていますので、話し言葉によって理解を深めることが得意です。
日本人は、文字に書くことによって、そして書かれたものを読むことによって理解を深めてきたのです。
読むと言っても、声に出して音で理解することではありません。
文字を読むとは、漢字の意味を理解するということなのです。
音読が行なわれているのは、言語としての日本語を習得していく段階だけです。
書かれたものの内容を理解する段階になると、声に出して読むということはほとんど行われなくなります。
日本語は、話し言葉だけで理解するには難しい言語であることを知っておくことが大事になります。
相手にしっかりと理解してほしい時には、文字としての情報が必ず必要になるということです。
特に音読み漢字は、同音異義語の宝庫です。
同じ読みで表記の異なる漢字は、30種類以上あるものもざらにあります。
話し言葉だけでは、思ったことが伝わりにくいものです。
実は、漢和辞典や国語辞典は大変良くできているのです。
漢字の音読みについてはカタカナで表記されています。
訓読みについてはひらがなで表記されており、送り仮名までが明確になっています。
古代からの日本語である「やまとことば」はすべてひらがな言葉です。
これが日本語の原点です。
音読み漢字の読み仮名であるカタカナは、そのまま外来語であると理解することが一番わかりやすいと思います。
音としては外来語であり、それを理解しようとしたのが漢字表現であると思ったらわかりやすいのではないでしょうか。
ですから、音読み漢字を話し言葉として使ったら、文字として見せて確認をするか、ひらがな言葉として補足するかをした方がより正確な理解につながると思われます。
日本語は文字言語であることを知っておくだけでも、コミュニケーションにおける理解度のアップにはつながることでしょう。
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