2014年10月28日火曜日

「きく」チカラは何のために使うのか?

「きく」ための技術については、このブログでも何度か触れてきました。
(参照:「きくこと」について

古代の「やまとことば」からつながってきている「きく」という行為については、現在ではいくつかの漢字が充てられています。

ひらがな言葉で表現されており、今現在よりもずっと広く大きな意味で使われていたと思われる「やまとことば」としての意味は、現在充てられている漢字から推測することが可能です。

「きく」という行為は、現在充てられている漢字をの意味を総合した、とても大きな意味を持っている「やまとことば」です。


「きく」ための秘術は、現在充てられている漢字をしっかり見ていくことで確認することができます。

「きく」と読める動詞としての漢字を挙げてみましょう。

聞く、聴く、効く、訊く、利くの五つが見つけられます。

この五つがまさしく「きく」ための技術を物語っているのです。


「聞く」は、英語でのニュアンスとしてはhearとなると思われます。

どちらかというとあまり意識をしなくとも、「聞こえてくる」感覚と言ってもいいかもしれません。

「きく」の中では一番意識が伴っていない行動になります。


「聴く」は、英語で言うところのlisten (to)になるようです。

聞きこむと言いう行為になり、傾聴という言葉に代表される行為になります。

「聞く」に比べるとかなり意思のこもった行為となります。


「効く」は、「薬が効く」と使用するように効果があることを確認することです。

相手の言っていることが、しっかりと自分の腹に落ちて理解できる「きく」行為となります。

言葉だけではなく行間までも含めて、相手の言っていることを先入観や評価を入れずに理解する行為となります。


「訊く」は、「きく」の行為の中でもこちらから働きかける能動的な行為となります。

「効く」によって理解しようとしてことについて、疑問や確認したいことが出てきます。

それを相手に対して確認する行為が「訊く」ということになります。

発する問いかけは、相手の言っていることを理解するための確認の内容ということになります。


「利く」は、「鼻が利く」や「夜目が利く」の様にうまく利用できることを意味します。

「聞く」以外のあらゆる能力や感覚を使って「きく」ことを意味します。

さらには、動作やメモ書き音や色など、あらゆるものを利用して相手の言っていることを理解しようとする行為です。


五つの「きく」をフル稼働させて、相手の言っていることを理解しようとする行為が「きく」ことなのです。

「きく」ことの目的は相手の言っていることを理解することです。


さて、それでは相手の言っていることをどのように理解したらいいのでしょうか。

相手の言っていることを理解するとはどういうことなのでしょうか。

一般的に理解という言葉に対しては、主旨や論旨を理解するという意味に使われます。

つまりは、言っている内容としての論理を理解することにあると思われます。


これは仕方のないことです。

私たちは学校教育を通じてずっと、読解するために文章を読み試験対策をして来たからです。

人の話についても同様です。

私たちが人の話から理解できることは、論旨に集中してきたのです。


ところが、実際の生活においては、論旨は勿論ですが、人の話から理解するべきもっと大切なことがあったのです。

それは、事実と意見や憶測との切り分けを理解することです。

特に、例として取り上げられる内容については、事実として思い込んでしまうことが多くなります。


人の話のほとんどは、事実に対しての一つの見方を示しているにすぎないことが多いです。

そこにおける事実と、その事実に対する評価をしっかりと事実と意見として分けて理解することが大切になるのです。

意見や評価は、一人ひとり異なって当たり前のものです。

細部になればなるほど、異なってくるはずです。


したがって人が集まった組織としての評価は、ある程度細部に目をつぶった概括的なものにならざるを得ません。

組織のなかでほとんどの者が同意できる評価でなければならないので、どうしても小異を捨てて大同を取らざるを得ないのです。

組織を代表した話しは、どうしても組織としての評価を前面に出さざるを得ません。

話している個人では、細部に行けばいくほど組織の評価との違いが出てくることになります。


事実と評価をきちんと分けて理解することが大切なのは、事実だけならば必ず共有することができるからです。

評価が少しでも入ってしまえば、評価基準や物の見方の違いが必ず存在してしまいます。

事実だけであれば、意見や評価の入る余地がありません、事実はただ存在しているだけです。


この事実と評価を聞き分けるために「きく」チカラが必要になるのです。

「きく」ための五つの技術は、このために使うためにあるのです。


先回まで見てきた「事実を表現すること」はその前提として、自分で事実を表現する方法を身につけておかないと相手の話から事実を聞き分けることが難しい事を扱ってきました。
(参照:事実を表現すること

事実を表現することに慣れてきたときに初めて、相手の話の中から事実を聞き分けすることが可能になってくると思われます。

その時に活躍するのが五つの「きく」チカラです。

聞くことが大事だと言われても、相手の何を聞けばいいのかがわからなければ技術の磨きようもありません。

相手の言っていることを理解すると言っても、ただ単に話の内容を理解するだけなら大した能力は要りません。


相手の話から事実だけを切り分けて、その事実を確認して共有することが、全ての交渉ごとの始まりです。

ほとんどの交渉事は、事実の共有ができれば解決策がすぐ出てきます。

事実を共有することによって、対立していた交渉目的が共同目的に変わってしまうからです。


事実を聞き分けるチカラと、事実を見極めるチカラは言語技術の使用目的です。

そのために日々チカラを磨いておきたいですね。



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