2014年9月30日火曜日

こころに沁みる歌詞・・・現代やまとことば

先回のテーマの「心を動かす言葉」に続いて、心に沁みる歌詞の曲を見てみたいと思います。

私が作っている曲のジャンルが、いわゆるフォークソング、今でいうとJポップと言うのでしょうか、ですので見渡せる範囲が限られてしまうことはお許しいただきたいと思います。

実は、私が日本語の研究を始めたのは、自分で曲を作り出したのがきっかけです。

それまで聞いていた曲のなかで、同じような曲調であっても、歌詞が沁みてくる曲とそうでない曲があるのはなぜかと考えたからです。


同じような情景や気持ちを伝えているのに、なぜ歌詞によってこれほどまでに伝わり方に差が出てしまうのかと感じたからです。

そこから思い至ったのが「やまとことば」でした。

日本の文学論や言語学を専門に学んだわけではありませんので、「やまとことば」を定義するのは難しいのですが、自分の中では昔から伝わる日本らしい言葉をこのように呼んでいます。

具体的に言うと、ひらがな言葉です。


歌詞の場合は、文字に頼ることなく音による伝わりだけを意識して作ることになります。

現在では、テレビや動画配信などでテロップによる歌詞の文字を見ることがよくあると思いますが、私たちのような貧乏シンガーにとってはそんなことは夢のような話です。

したがって、文字による伝わり方のサポートがないことを前提に曲つくりをします。


実は、音だけできちんと歌詞を伝えようと思うと、使える言葉がかなり限られてきていしまいます。

聞いてもわかりにくい言葉や紛らわしい言葉は、できるだけ使わないようにします。

流れていく言葉の音を、その瞬間でつかみそこなうと、周りの文脈から聞き取れた音に近い言葉を推測するという行為が行われます。

いくつかの候補が見つかってしまうと、それを絞り込むのにさらに時間がかかってしまいます。


すると、その行為に頭を使っているうちに次の音の初めのところをつかみ損なうことが起こってしまい、更に推測する行為が繰り返されることになります。

この行為はかなり知的活動をしていますので、頭が疲労しやすくなります。

更には、こんな行為を繰り返していると、少しずつかめる音に穴が開いてきて理解が薄くなってしまいます。

結果として、曲としてわかりにくい疲れるものとなってしまうのです。


メロディに乗せて、頭の中での推測行為をしなくても、そのまま音として入ってきて理解できる歌詞にしたいのです。

曲つくりも上級になると、敢えて推測させる部分を作ったりしますが、私のようなレベルでは素直に作らないとかえってわかりにくいものとなってしまいます。

その時に、役に立つのが一般的に使われていて耳になじんでいる言葉です。


さらに、耳から聞こえる音はすべてひらがなの音として聞こえますので、ひらがなとして言葉になっているものが一番伝わりやすい言葉となります。

漢字の音読みを音として伝えるには、とても難しいものとなります。

まずはひらがなとして入ってきた音を、漢字の音読みであると認識しなければなりません。

更に、その音読みに当てはまる漢字を探さないと意味が分かりません。

こんなことが頭の中で行われます。


普段聞きなれている音であって、音からそのまま理解できる音読み漢字もありますので、そのつもりで使ってしまうととてもわかりにくい歌詞になってしまいます。

「えんとつ」という音でつかんだ言葉は、「えんとつ」→「エントツ」→「煙突」として理解されるわけですが、聞きなれている言葉だけに、「えんとつ」→「煙突」とショートカットされていると思われます。


これが、「かんき」となると候補がたくさん出てきてしまいます。

「かんき」ときいて、まずは漢字の音読みだなと認識するところから始まります。

「かんき」→「カンキ」→「歓喜、喚起、乾季、換気、乾期、寒気・・・」どの意味になるのかは、前後の文脈から推測することになります。

これが繰り返されると、言葉のつかみ損ないが増えてきてしまいます。


私の場合は、出来上がった歌詞をすべてひらがなで書いてみて、そのまま素直に頭に入ってくるかどうかを検討します。

更には、メロディに合わせた時に言葉の切れる場所の問題があります。

音符の数と言葉の文字数が同じ場合はいいのですが、そうでない場合には言葉本来の音とは違った長さになります。

早口言葉のようになってしまったり、妙に間延びする部分が出てきたりしますので、メロディによっては言葉が伝わりにくくなってしまったりもします。


それでもひらがな言葉で作られた歌詞は、どこか懐かしさを伴ってすっと心に響いてきます。

中島みゆきの「糸(いと)」という曲をご存知でしょうか。

著作権の問題がありますので、歌詞を掲載するわけにはいきませんが歌詞が公開されているページにリンクを張っておきますので是非見てください。(戻ってきてくださいね)
中島みゆき 「糸」の歌詞

この曲は、タイトルを含めて音読み漢字が一つも使われていない曲です。

多くに人に好まれて、今でもたくさんの人に歌われて聞かれている曲です。


中島みゆきの独特のメロディーともマッチして、一言ずつがズンと心に響いてきます。

すべての言葉が、ひらがな言葉でありスッと聞き取れる歌詞となっています。

本人が意識してそのようにしたのかどうかはわかりませんが、彼女の曲にはほかにも音読み漢字が使われていない曲が見受けられます。


文字にした場合には、全てがひらがなですとかえって読みにくいものとなります。

歌詞のページのように適当に漢字が混ざっていた方が、文字としては読みやすいものとなります。

そこで使われる漢字は、すべてが訓読み漢字となります。

音としてはすべてひらがな言葉の音です。


歌詞を作るときは、一般的には詩として書きとめていきます。

文字として作っていくことになります。

したがって、メロディとの組み合わせはまだありません。

時として、歌詞とメロディが一緒に浮かんでくることもありますが、それは曲の一部です。


文字としてひらがな言葉を表現すると訓読み漢字になります。

この訓読み漢字とひらがなで表現されたものを「現代やまとことば」と呼んでいます。

中島みゆきだけでなく、探してみると「現代やまとことば」で書かれた歌詞がたくさんあります。

もちろん、音読み漢字を使った曲の方が多いわけですが、心に沁みる曲は音読み漢字よりも「現代やまとことば」によって表現されているところで感じることが多いと思います。


一度、歌詞だけをじっくりと見てみるのもいいのではないでしょうか。



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