思考も同じことが言えます。
自分自身に何かを理解させて、そこから次の発想に結び付けるために表現をしています。
表現は、文字や文章による視覚的な表現と、話し言葉による聴覚的な表現があります。
どちらも同様に大切な表現方法ですが、それぞれの表現方法の特徴をつかんで置くことによって、理解をしてもらいやすくすることができます。
日本語のメインの表記方法は、漢字かな混淆文となっています。
そのために言葉の意味そのものを伝えるには、文字や文章による視覚的な表現が適していることになります。
それは、漢字という文字が形によって意味を表している表意文字だからです。
音によって意味を表してる、ひらがななどの表音文字に比べると、文字として書かれたものの方が話ことばとして聞くものよりもずっと正確にその言葉の持つ意味を理解できるようになっています。
したがって、誰かに何かを理解してもらおうと思ったら、視覚情報としての文字を中心にして表現をすることになります。
その文字としての理解を助けるものとして、動画や写真、図や表、話し言葉や音楽を利用します。
それらのものは、補助的なものであり文字表現だけで理解してもらえるものであれば、理解するためにかえって邪魔になる場合もあります。
文学作品のように、挿絵もなく文字だけの表現で人に同じような感動を与えることができるのです。
文学作品を残した人たちは、文章表現のプロ中のプロであり、磨き抜かれた表現力には引き込まれるものがあります。
決まった表現パターンがあるわけでもなく、書かれた時代によっても変化しているその表現力は強烈な個性を伴っており、その一部を見ただけでも作者がわかるようなものとなっています。
一人ひとりが持っている語感に対しては、受け手側の好き嫌いも影響してきますが、それは表現力の上に成立した個性と言えるものだと思います。
(参照:語感のよし悪し)
その中の技術でも、私たちが意識することによって抜群の効果を上げるものがあります。
それが、今ここで理解してもらいたいことへの焦点(フォーカス)の当て方です。
文学作品では、ストーリーとして表現のなかで時間が経過していきます。
それぞれの時間のなかで何に焦点を当てているのかがとても重要になります。
私たちが理化してもらうためにする表現も、一番大切なのは結論ではなく何に焦点を当てているかをしっかりと分かってもらうことです。
その一点にのみ焦点を当てた表現では、とてもわかりにくいものとなってしまいます。
それが抽象的なものであればあるほど、わかりにくくなります。
わかりやすい、理解しやすい表現とは、対象に対しての焦点の合わせ方の表現が複数あることです。
同じような要素を並列して移動しながら焦点に合わせていく方法や、包含の関係を利用して焦点を合わせて言う方法などがあります。
まさしく、カメラのフォーカスを合わせる行為と同じだと言えます。
流し撮り、連射、俯瞰、下からなめる、ズーッムイン、ズームアップなどですね。
一例を挙げてみましょう。
私が理屈ではわかっていても、どうしても入れ違ってしまうことが多いことの一つです。
「手段と目的」についての表現をしてみましょう。
私の結論では、目的が上位概念であり、目的のために手段があります。
ところが「手段と目的」と書いただけでは何雄ことだかわかりません。
「手段」と「目的」の関係がわかりません。
そこで話し言葉で補うことになります。
一つの表現として文字表現として「手段と目的」は書かれているとしましょう。
まずは、「手段」と「目的」の言葉の意味を確認する必要があります。
同じ日本語の言葉の言葉を使っていても、その意味は一人ひとり異なっていますので、重要な行為になります。
「手段」を理解してもらう方歩として、言い換えをします。
まずは一つ目のフォーカス移動です。
「方法」「技術」「材料」などの同じようなものから「手段」にフォーカスを移動します。
その移動の過程や仕方で、「手段」に対しての理解がより具体化していきます。
さらに次のフォーカスとして、「やりかた」「必要なもの」などのわかりやすさからのフォーカス移動をします。
同じように「目的」についても私の理解にある「目的」を共有してもらうためのフォーカス移動をします。
そして、「手段」と「目的」の関係についてのフォーカシングになります。
一つ目のフォーカスは、より大きな概念であり上位に位置するとしている「目的」からのフォーカシングで「手段」に移動します。
「目的」のための「手段」である関係を、大→小や上→下などの移動で理解してもらいます。
更に、「手段」は具体的な行動であるので常に意識することができるもの、目的は頭にあるものなので具体的な行動ではしょっちゅう忘れてしまうことというフォー核移動をします。
具体→抽象という移動です。
結論として、具体的な行動としての「手段」をしているときには、抽象概念である「目的」を忘れてしまうことが多いために、いつの間にかその具体的な「手段」をやりきることが「目的」となってしまうことを注意しなければならないとします。
実際にはもっとたくさんのフォーカス移動の切り口がありますが、一部を取り上げてみました。
この切り口を見つけて、どんな移動方法で行なうかを考えることは、意外と楽しいことです。
視覚と聴覚の両方お特徴が合わさると大きな武器になりますね。
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