2014年4月4日金曜日

思考の質を高める言語

思考の唯一のツールが言語であり、言語の元限界が新人の思考の限界であることは何度か触れてきました。

しかもその言語も母語による思考が一番質の高いものとなっています。

幼児期に機能を開発される脳を代表とする知的活動に必要な各器官が、身につけた母語を使うために最適な機能になっていくことを考えれば当然のことと言えるでしょう。

したがって、思考の質を高めるためには母語を磨いていけばいいことになります。


幼児期にその基本的なものを身につけた母語は、母親からの伝承言語です。

母親の言語は一人ひとり異なっていますので、伝承された母語も当然一人ひとり異なるきわめて個性的なものとなっています。

この母語のままでは社会に出て生活していくにはかなり難しいことになります。


義務教育が始まると「国語」という日本語としての共通言語を学ぶようになります。

場合によっては幼稚園で学び始めることもあるでしょう。

この「国語」によって書かれたさまざまな教科書や資料を通して、多くのことを学んでいくことになります。

「国語」が学習言語と言われるのもそのためです。


個性的な言語であった母語を基本として、共通語としての「国語」を身につけていきます。

そして身につけた言語によって、さまざまことを学んでいきます。

小学校の中学年から高学年においては、苦手な教科ができてしまうことがあります。

特に独特の表現が多い「算数」「理科」が苦手になる子が多いようです。

教科書に書かれている「国語」の表現に慣れていないのが原因ですので、その教科を学ぶことよりも「国語」をしっかりやることの方が苦手克服になることが多いようです。


学んで知識を身につけるための「国語」の基本は小学校の4年生頃に身に付きます。

そのあとは、語彙の増加や様々な表現に触れることによって読解の力をつけていくことになります。

学習言語の習得の目的は読解力の習得にあります。

教育指導要領に「効くこと、話すこと」「書くこと」「読むこと」とありますが読解力を付けることに主眼が置かれています。

国語科の試験についても、書き取りと言葉の意味や読解力を試すものばかりとなっています。



言語を使う技術については学校教育ではほとんど身についていかないこととなっています。

アウトプットをして理解してもらうことを学ぶ機会がほとんどありません。

小学校高学年くらいになると、子どもたちの活動に変化が現れます。

それまでは知識としてインプットすることが活動の中心でしたが、このころになると外に対して表現することをはじめだすのです。

道具としての基本的な言語は持っていますが、それの使い方がよくわかっていない時期です。

使っている方は全く意識していなくとも、結果としていじめにつながっている行動が見られるのがこのころからです。


小学校の高学年から中学校にかけてが、この活動のピークとなっているようです。

日記をつけ始めてみたり、漫画を描き始めたり、交換日記をしてみたり、手探りの中でも外に対して表現するという活動を始めていきます。

学校教育のなかでこの表現することをフォローする活動がありません。

試験において確認される内容も覚えている知識を確認することに終始しているために、表現することに対しての学習がほとんど進みません。

結果としてアウトプットの下手な日本人が世界に出ていくことになります。


思考は自分の言語だけでできる活動ですが、ただ何かを頭の中で考えているわけではありません。

何かの問題を認識し、その問題を解決することを考え、その解決を表現する一連の活動が思考だと思われます。

人とかかわって思考する場合には、問題を共有しなければいけません。

そのためには、自分勝手な言葉で理解しても共有することができませんので、言葉の理解そのものを共有することを前提にしなければなりません。

共通語が必要なわけですね。

これを頭の中で思考するときは自分の母語で一番質の高い思考をします。

そのままを表現しても、自分の言語ですから相手には伝わりにくいですね。

ここでも共通語が必要になってきます。



思考の質を高めるためには、母語としての自分の言語と共通語としての言語の翻訳が必要になってくるのです。

母語同士で表現されたものはお互いにわかりにくいものとなってしまいます。

同じ言葉でもそれぞれが持っている意味が異なる場合もあります。

最後に共通語で表現できることが重要です。


ひとりりで思考する場合もあります。

この時は自分言語だけでも理解が進みます。

ここで得た結論を誰かと共有するときには、共通語への翻訳が必要になるわけですね。

アウトプットとしての共通語への翻訳が思考の質を高めることになります。


自分と同じ思考をしている人はいないので、違う意見が自分の思考の質を高めていきます。

母語をそのまま基本としながらも共通語を使いこなして表現していくことを意識することが、思考の質を高めることにつながっていきます。

アウトプットの質を誰が見てもわかりやすくに向けていくことによって翻訳能力が上がっていきます。

アウトプットが多い人ほど思考の質が高くなっていく可能性があるということになりますね。

どんどんアウトプットしていきましょう。