2014年2月21日金曜日

日本語の文字と音(2)

今回はもう少し日本語に焦点を絞ってみてみたいと思います。
日本語の文字としての特徴は、
  1. ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットの4種類の文字を日常的に使いこなす。
  2. 日常使用文は漢字かな混用文が中心であり、現存する言語の中で唯一の「表意文字+表音文字」となっている。
  3. ひらがな、カタカナというどの言語系統にも属さない日本語専用文字を生み出した。
があげられます。

これに加えて、音としての次の特徴をもっています。
  1. すべての音が母音で終わる(「ん」を除く)、完全母音型言語となっている。
  2. 規則だった基本音46(濁音、半濁音、拗音、撥音などを除く)ですべてを表現してしまう。
先回も見てきましたが、文字・音ともに世界でも希な、他の言語にはない特徴を持っています。

文字としての漢字は、現在世界で使われている文字の中で唯一の表意文字だと言われています。
また、
音としての完全母語型言語は、ポリネシア語と共に現存言語の中では2つしかないものと言われています。

その結果として、
文字として扱うと、世界でも他に類を見ないきわめて複雑で難解な言語となっているのですが、会話だけにこだわるならばきわめて習得しやすい言語であるということになっています。

日本語は言語の上では、世界でも孤立したきわめて特徴的なものと言うことができます。




自分たちの日常使用言語と同じ文字を使っている、または同じ音を使っている言語は、感覚的に近しいイメージを持ってしまいます。

世界で一番多く使用されている文字はアルファベットだと思われます。

アルファベットは表音文字ですので、一種の発音記号だと思えばいいです。

アルファベットで表す記号(文字)に対して発する音が異なっているから違う原語になっているだけです。
同じ音だったら同じ言語になってしまいます。

アルファベットの起源はラテン語からさかのぼりますので、ラテン語で使われていた言葉は、形を変えながらでもアルファベット使用言語の中に残っていることになります。

アルファベット使用言語はそれだけで、基本的な共通感覚を持っていることになります。

アルファベットにも母音がありますが、基本は子音言語です。
子音は声帯を使わない息を使った音をたくさん利用していますので、空気振動が小さくて音としては伝わりにくい音になっています。

自分の使っている言語にこの様な特徴がありますので、似たような特徴を持った言語は扱いやすいことになります。





アルファベットの次に多く使用されている文字は漢字です。

中国で使用されているので、それだけで多くの人が使用していることがわかると思います。

現在使用されている唯一の表意文字と言われています。
文字そのもが意味を表しているものです。

中国語での漢字の音(読み方)は子音言語としての読み方です。
中国語は母音の種類だけで3種類あり、母音音としては36音(38音とも言う)と言われています。

子音も含めた音だけで400音以上あると言われており、声調といわれる抑揚やアクセントによる区別まで入れたらどれだけの音があるかわかりません。

日本語の音は基本音46音で、すべての音を合わせても100音あるかどうかです。

中国語はこれだけ多くの音があるのになぜ間違わないかと言うと、文字にすればわかるからです。
表意文字である漢字は、音がわからなくとも文字だけで理解できるからです。

中国には方言がたくさんあり、話し言葉では通じない言語がたくさん存在しています。
それを表意言語である漢字を使っていることがカバーしているのですね。




日本語は中国語ほどたくさんの音を持っていません。
話し言葉の音数はきわめて少ないことになります。

それにもかかわらず、中国と同じ程度の漢字を使いながら他の文字をも使っています。

同音異義語が至る所にあることになります。
同じ話し言葉でも意味の異なるものがたくさん存在します。

表音文字しか持たない言語では、音で意味を分けなければいけませんので、意味の違いは音の違いで表現しなければいけません。
そのために複雑な人工的な音をたくさん作ってきました。


日本語は意味が必要な部分である、名詞や動詞・形容詞の語幹部分で表意文字の漢字を使用します。
そして語尾の変化やつなぎの言葉などに表音文字のひらがなを使います。

これが漢字かな混用文の効果です。

世界中で日本語にしかできない離れ業です。
私たちは、意識せずに日常的にこんなすごいことをしているのです。






言語としての特徴は、書き物や話し言葉に出るのは当然ことですが、その言語を母語として日常的に使う人の特徴として表現されることがよくあります。

〇〇人の特徴と言われるものは、言語の特徴からきているものがほとんどあり、その類似性は使用言語の類似性に他なりません。

言語は環境・文化・歴史を表す最たるものであり、人の思考は言語でしかできない以上、言語の特徴がそれを使う人に出るのは当たり前なのです。


ボーダーレスの時代と言われて久しいです。

ボーダーレスは迎合することではないですよね、互いの特徴を理解し、より良い変化をするための接点を持つことではないでしょうか。

そのためには、相手の特徴を知ることはもちろんですが、自分の特徴を知っておかなければ、いかに接点があってもより良い変化にはつながりません。

自国の使用言語の特徴を知る機会は意外と少ないものです。

ボーダレスの時代ほど、比較言語学が有用であり、学問的な分析ではなくより実用的な分野での活用が望まれます。