2014年2月20日木曜日

日本語の文字と音(1)

今現在、世界中で使用されている文字の中で唯一の表意文字は漢字です。

世界中で日常使用されている文字は、漢字以外はすべての文字が読むときの音を意味する表音文字です。
文字と音(発音)が一対一で対応していないと大混乱になります。

当然、一つの言葉には一つの音しか対応できませんので、音の限界が言葉の限界になります。
同音異義語は存在する余地がありませんので、言葉の数は音の数によって制限を受けます。

それでも無理に音で違いを付けようとすると、中国語のように抑揚やアクセントまで利用するようになります。
そこまでいくと、普通の人には聞き分けができませんので、話し言葉だけではわかりません。

中国語があれだけ多くの区別すべき音を持ちながらもコミュニケーションができているのは、漢字と言う表意文字を使っているために、音では理解できなくとも文字で理解できるからです。


中国語の発音の微妙な違いは日本人には聞き分けできません。
同じ音に聞こえるものがたくさんあります。
でも、日本人としては同音異義語だと割り切ってしまえば対応できるのです。

中国語は漢字だけでできていますので、使用文字は表意文字だけです。





あれだけたくさんの発音(世界一で数えきれない)を持ちながらも、言語としての最大の目的である意思疎通が可能な理由は表意文字だけを使用しているからです。


では、表意文字である漢字を持たない言語はどうなっているのでしょうか?

表記文字として一番多いアルファベットを使っている言語はどうなのでしょうか?

アルファベットは話し言葉を表記する典型的な表音文字です。
ラテン語に起源をもつ言語は、どのような音(発音)を持つ言語であってもアルファベットを使用した表記文字となっています。

言語の成り立ちはどこにおいても話し言葉が先にありました。
文字がありませんので、使われていた言葉の数は知れています。

そこに文字を持った文化が入って来ると、既存の言葉との融合が始まります。

音が無く形としての文字だけを持ってきた場合には、今まで持っている話し言葉にその文字をあてはめて音を付けることによって独自の話し言葉に文字を与えます。

音と文字の両方を持ってきた場合には、既存の音との融合で混ざり合った音に対応する文字となります。

征服としての言語の強制は、自国の言語の音と文字を押し付けて、既存の話し言葉を追いやっていきます。

同じアルファベットを使用しながらも音が様々に異なるのは、もともと持っていた話し言葉の音の違いによるものだと思われます。

アルファベット26文字の一つずつに音があてはめられており、さらにその組み合わせでの音が作られています。


ひとたび文字が定着してくると、文字だけで伝わってくるものが増えてきます。
その伝わってきた文字を自分の言語の音で読むことになります。

自国の音の組み合わせ表記にない綴りについては新しい音を充てたと思われますし、すでに自国にある綴りの場合は文字の一部を変えたのだと思われます。

アルファベットを使っている言語は、すべてのものが文字を借りてきた、または押し付けられたものだということができます。





アルファベットの起源は紀元前1,700~1,500年ころの地中海東部で発達した北セム文字と言われています。
それは紀元前7,000年ころのメソポタミア文明の楔形文字やエジプト文明のヒエログリフから作られたものだとする説が強いようです。
話し言葉を文字として表すための、一種の発音記号として作られたとする説が強いようです。

楔形文字やヒエログリフの初期のものは、「表意文字+表音文字」でできていたことがほぼ確認されています。
ヒエログリフの後期のもは表音文字のみになっていると言われています。

そこから、表音文字としてのアルファベットを抜き出していったのではないかと推測されます。


完全な表音文字として捉えがちなアルファベットですが、語彙が増えていくにしたがって表意的な部分もできていることを加えていきます。

英語で言うところの、接頭辞、接尾辞などは表意的な意味も持っていると思われます。

例えば接頭辞としては、 un-,dis-,im-,などで反対の意味になったり、in-(中へ)、ex-(外へ)、re-(再~)、などがあります。
接尾辞としては、-ance,-ation,-ship,-ist,などで名詞を作るものや、-ful,-able,で形容詞を作ったりします。

文字そのものが具体的な物を表すわけではありませんが、単に音だけではなくルールを持った文字となっています。

基本的には表音文字は文字そのものに意味はありませんで、文字を見てもその意味するところは分かりません。
したがって、「書く」という行為よりも「話す」という行為の方が意味が理解しやすいことになります。


現在の日本語の標準的な表記方法は「漢字かな混合文」です。

日本語はその漢字と一緒に、表音文字である「ひらがな」を日常的に使っています。
現存する日常の使用言語で「表意文字+表音文字」は、世界でも日本語だけです。

「ひらがな」は日本が作った世界に誇る完全表音文字です。
表意文字である漢字との組み合わせは、世界でただ一つの無限の可能性を持った言語と言うことができると思います。

思考は言語でしかできません。
どの言語を持っているかは思考に大きな影響を与えます。

しかも、その思考は母語の影響を大きく受けます。
言語感覚は母語の感覚しか持っていません。

次回は、日本語の魅力について文字と音からもう少し見ていきたいと思います。