言語学や民俗学はもちろんのこと脳科学や心理学など、数えていったらきりがないくらいです。
特に、専門的な学術分野における独特な分析的な思考や、個人よりもチームやグループとしての成果を大切にする指向は他の国から見たら理解し難いこととなっています。
日本語話者である私たちにとっては、自然に行われていることが、他の言語話者から見たら際立った差として映ることが多々あるようです。
日本語が世界の他の言語と比べて極めて特殊な言語であることを理解しておくことは、世界と触れる機会が増えてきた現代においてはとても重要なこととなっていると思われます。
その中で、日本人であることの価値をもう一度確認するきっかけとなればうれしいことだと思います。
確認の意味も含めて、日本語の特徴の6つの項目をあらためて挙げておくことにします。
- 世界のどの言語体系にも属さない孤立言語
- 文字のない時代の言葉をそのまま受け継ぐ言語
- 自然の音を「言葉」として受け取る感覚を持つ言語
- 比類なき多彩な表現力を持つ言語
- 世界の最先端文明を取り込んだ言語
- 使いこなすことが世界でも最も難しい言語のひとつ
3回目の今回は、先回までと比べて少し具体的なことになってきます。
外国人と接触することが多い人は気がついていることかもしれないですね。
現実的に言葉を使っていて理解することができる特徴になります。
3.自然の音を「言葉」として受け取る感覚を持つ言語
このことについて30年以上前に言語学と脳科学との立場から発表された研究があります。
角田忠信先生の「日本人の脳」です。
脳外科医としての経験からなされた様々な実験や研究は、個人差や例外のとらえ方を含めて現在においても充分に評価されている内容です。
具体的には言語をつかさどる脳(左脳)と音楽をつかさどる脳(右脳)が幼児期に身につけた言語によって異なるというものです。
使用言語としての特徴が人に表れるためには、幼児期にどの言語によって育ったかが決め手となります。
個人としての脳が一番発達するときである5歳頃までに、どの言語で育ったかが大切になります。
この時期に幼児が身につけた言語のことを「母語」と呼びます。
母語は複数の言語は選ぶことができないと言われています。
通常であれば、父母の言語は同じですので、特に意識することなくとも父母の言語と同じものが母語となります。
両親が日本人で日本語を使っていれば、特殊な事情がない限り子供の母語は日本語になりますね。
父母の言語が異なったり、日常生活の言語が母語にしようとする言語と異なる海外生活などの場合は、幼児の母語習得の環境に悩むことになります。
母語については数多く触れてきていますので、今回は特に触れませんが、母語として身につけた言語が個人としての基本言語になります。(参照:ここまでわかってきた「母語」)
母語として身につけた言語を日常語として使う人のことを「母語話者」といいます。
人が使う言語は大きく分けて「母語」、「第一言語」(日常語)、「第二言語」のようになります。
通常は母語と第一言語は同じ言語となりますが、環境によっては母語と第一言語が異なることがあります。
個人が言語としての特徴として影響されるものはすべて母語によるものです。
母語をどの言語で身につけたかによって、脳の機能と言語による特徴が決まります。
身につけた母語と異なる言語環境の中で、幼児期以降の日常語での生活をすることになると、母語と異なる第一言語(日常語)を身につけて使用することになります。
言語の感覚が異なりますので、コミュニケーションにおいてとても苦労することになります。
言語としての特徴はすべて母語によって形成されます。
つまりは、
5歳頃までに言語としての特徴の基本が出来上がってしまうことになります。
そして、
母語は書き換えることができません。
したがって、
言語の特徴は文字や言葉に出るのではなく、その言語を母語話者として持つ人において現れることになります。
正確に表現すると、日本語の特徴は母語話者として日本語を使用する人に表れる特徴と言うことになります。
国籍や人種は全く関係ないのです。
母語として日本語を身につけている者であれば、誰であっても同じ特徴を示すことになります。
更に、
第一言語として日本語を使用している者であれば、より顕著にその特徴が表れることになります。
この項目までの特徴は、言語としての日本語の特徴でしたが、ここでは日本語を使う人に表れる特徴になります。
母語話者として日本語を使う人です。
母語として日本語を持つ人は、他の言語に比べて決定的に違う特徴があります。
それが自然の音を「言葉」として聞くことができる感覚です。
風の音を「そよそよ」、「ざわざわ」、「ひゅうひゅう」、「びゅうびゅう」など聞いたり、表現したりすることです。
虫の音を「ころころ」、「りーんりーん」、「すいっちょ」などと聞いたりすることです。
日本人は、これらを言葉として左脳で感じますが、他の言語においては機械音などと同じに雑音として右脳で感じています。
音楽についても、西洋では右脳を音楽脳と呼んだりして右脳で処理していることがわかっています。
日本語話者の脳では、人間や動物の鳴き声や邦楽を言葉として左脳で処理しています。
「チントンシャン」、「ドンドコドン」など、音楽を言葉で表現し伝えたりしています。
西洋音楽については、日本語話者であっても右脳で処理しているが分かっています。
この日本語の特徴と同じような特徴を持った言語が見つかっています。
ハワイ・南太平洋のポリネシア語を母語とする人たちには、自然界の音に対して日本語話者と同じような感覚を持っていることがわかってきました。
日本語とポリネシア語の共通性は、典型的な母音言語であることです。
母音は自然音です。
子音は人が口の形や舌を複雑に使って生み出した音です。
言語学上の孤児と言われる日本語にも、母音言語という面から見てみると仲間がいることになります。
自然の音を言葉として受け取る感覚は、母音言語が影響している可能性がありますが、詳しいことはいまだにわかっていません。
この感覚は他の言語話者にはないものであって、この特徴を知らずに外人と話をすると戸惑うことがあります。
特に趣味の世界の話しができるくらいの仲になって来ると、感覚的な違いに気づくことがありますが、それが言語からきている根本的な物だと分からずに合わせてしまうことがあります。
日本語による特徴だと分かっていれば、対処も変わってくるかもしれないですね。
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