2014年1月9日木曜日

気づかなかった日本語の特徴(2)

日本語の特徴の2回目です。
  1. 世界のどの言語体系にも属さない孤立言語
  2. 文字のない時代の言葉をそのまま受け継ぐ言語
  3. 自然の音を「言葉」として受け取る感覚を持つ言語
  4. 比類なき多彩な表現力を持つ言語
  5. 世界の最先端文明を取り込んだ言語
  6. 使いこなすことが世界でも最も難しい言語のひとつ
今回は次の項目についてみてみます。

2. 文字のない時代の言葉をそのまま受け継ぐ言語
文字のない時代の言葉は原日本語として「古代やまとことば」とも呼ばれています。
漢語の導入が西暦500年ころだと思われますので、それ以前は文字のない話し言葉だけの世界であったと思われます。

漢語の導入前の「古代やまとことば」の成り立ちはほとんどわかっていません。

しかし、ひらがなの発明によって「古代やまとことば」を現代に継承することができているのです。

世界の中で、様々な文化と触れながらもその文化に言語が影響受けなかったことはありません。
程度の差こそあれ、文化を具現化しているものは言語です。

一般的には差の大きな文化が導入されると、その文化の恩恵を受けるために言語そのものが置き換えられていくことが起きます。


当時の世界の最先端文明である中国文明の導入は、漢語という言語を介して行われました。
ほとんどのことが書物という文字を通して導入されました。
漢語を使えることが文化の担い手としての証であり、漢語で表現することが国の中枢にかかわっていることでした。

自然な流れからすれば、「古代やまとことば」はすべて漢語に置き換わっていたはずなのです。

なぜ、漢語を利用して「古代やまとことば」に対応する文字を発明することができたのかは、全く分かっていないことです。
言語学上の奇跡ということができると思います。


ひらがなの原点として言われるのが万葉集です。
収められている歌を表現したものが、万葉仮名と呼ばれる「古代やまとことば」の音に対応する漢字をあてはめたものです。
この段階では、仮名とは言っても見た目は漢字そのままです。

勅撰和歌集として天皇が自ら音頭をとって編纂されたものの存在は、公用語としての漢語とは別の言語の生きる場を示しているものと思います。

身分を越えた文化として存在していた歌(和歌)を、書き残すために文字を発明したということができるのではないでしょうか。

身分を越えた歌は、身分を越えた人たちの日常語(古代やまとことば)で歌われています。
歌を表すための文字を発明したことは、日常語(古代やまとことば)を表す文字を生み出したことになります。

公用語と日常語という2つの言語が存在し続ける下地が、勅撰和歌集によってできたのではないでしょうか。

権力と身分の証が公用語としての漢語であり、日常語である古代やまとことばに比べると権力層の専門用語的な要素が強かったのではないでしょうか。

後世から見れば、正史などの公的な資料として残っているものは漢語で書かれたものだらけになります。

その中で勅撰和歌集の存在は、古代やまとことばを残す公的な資料と言えます。



ひらがなの存在を確実にしたのが、勅撰の古今和歌集の時代においてではないでしょうか。
この時代のひらがなの最大の担い手が紀貫之だと思われます。

古今和歌集に漢語による序文である「真名序」とともに、仮名で書かれた序文である「仮名序」を編纂したのが紀貫之と言われています。

古今和歌集の仮名には、まだまだ見た目は漢字に近いものが多いですが、一部では崩れてきてひらがなに近くなっている文字もあると言われています。

この時代の仮名文学の最初の作品と言われている「竹取物語」は作者不詳と言われていますが、紀貫之が書いた「竹取物語」本があったことは確認されているようです。

女性や子供が仮名で古代やまとことばを表現していたことは間違いないようですが、実際の文字を書く必要があったのはかなり身分の高い人だと思われます。

和歌そのものはどんなに身分の高い人であっても、仮名で書いていたものと思われます。
身分の高い人であったとしても、公式文書が漢語であるだけで、日常の言語は「古代やまとことば」であったろうと思われます。


この仮名を文学としての表現の手段として高めたのが紀貫之だと言われています。

古今和歌集の編纂に数十年の時間をかけ、日記文学の走りである「土佐日記」を著し、中世の女性を中心にした「仮名文学」の基礎を作りました。

皇族や貴族は競って優秀な仮名文学を表現できる女官を雇い入れることになります。
「源氏物語」に代表される仮名文学が花開くのがこれからです。



ひらがなが今の形で安定したのはつい最近のことです。
仮名文字はどんどん崩されていって、今のひらがなに近い形になっていきますが、そこまでにはかなりの時間を必要とします。

文字の形は変わっていきますが、元は話し言葉からきていますので、伝達のためのメインの方法は口頭によるものです。
一般的には、文字は補助的なものです。

文化的なことや経済的なこと政治的なことが広がっていくことが、文字の使用機会を広げることになります。

時代とともにあらゆる階層で、文字を使うことが増えていったのでしょう。
誰でもが使える一番簡単な文字として、ひらがなの定着がそのまま、古代やまとことばを継承していくことになったのではないでしょうか。

ひらがなには文字のない時代より使われていた言葉が継承されています。
大切に使いたいですね。





・ブログの全体内容についてはこちらから確認できます。

・「現代やまとことば」勉強会メンバー募集中です。