2016年8月31日水曜日

文字と音のギャップは大きい

母語として日本語を持っていることによって、日本語で伝えるための技術については意識をしなくともある程度身についてしまっていることになります。

そのために特に日本語で伝えるということを意識しなくとも日常的な言語伝達において困っていると感じることはほとんどないと思われます。

ところが、伝わっていると思っていたことが実際には伝わっていなかったり、思っているのとは違った伝わり方をしていることは以外とあることです。

そのことに気がつかないのは、伝わった内容についての確認をせずに言いっ放しになっているからではないでしょうか。

たいして長くもない内容について数人で行なう伝言ゲームは、誰でも経験したことがあるのではないでしょうか。

想像もできないくらいおかしな伝わり方をしていることもあったと思います。同じようなことは日常的に行なわれているのではないでしょうか。


伝えるための二大手法は書くことと話すことです。

書くことと話すことの一番の違いは日本語が四種類の文字を持ちながら一種類の音しか持っていないことに由来していることです。
つまり、文字が四種類あることによって自然に行なわれている使い分けによる意味や感覚の違いは話し言葉では表現できないことになります。

文字による表現では区別できていたとしても読み方が同じであれば話し言葉としては一つのものとして同じになってしまうのです。

日本語以外の言語で複数の表記文字を持っているものは数えるほどしかありませんし、さらに同じ文の中で複数の種類の文字を混用して使い分けしている言語は日本語だけだと思います。
たまにお目にかかるものはせいぜい固有名詞の表現くらいではないでしょうか。

それだけに日本語は他の言語に比べると、話し言葉よりも文字として視覚に頼ることが多い言語となっていることになります。


ところが実験によると人が得ている言語情報はおよそ80%を話し言葉から得ていると言われています。
(参照:言語情報は耳から

言語以外の一般的な情報についてはおよそ80%を視覚から得ていることに比べるとほとんど視覚情報に頼ることができない状況であると言えます。

日本語を伝えるための技術として最も効果的なものは伝えたい内容を文字で表記することになるのですが、ほとんどの場面ではそれが不可能であることを示していることになります。

したがって、日本語で伝えるための技術を考えるときには文字によるサポートができないことを前提として話し言葉による伝え方で考えることが必要になってきます。

仮に文字によるサポートが可能な場面があったとしたら、それはラッキーとして捉えて積極的にうまく活用すべき状況であるといえます。

他の言語と比べた時に日本語は視覚情報と聴覚情報の差が一段と大きなものとなっていることになります。


実際に言葉を理解している内容を見てみると音で理解していることよりも文字として理解していることのほうが多いことが分かるのではないでしょうか。

特に、漢字によって意味を理解している言葉については同じ音を持った言葉(同音異義語)が存在していることが多いために文字の違いで意味の違いを理解していることになります。

また、漢字自体が意味を持った文字(表意文字)であるために音(読み)よりは文字のほうが意味が理解しやすくなっています。

同じ漢字であっても訓読みの場合はもともと日本語として意味を持った音であり、文字を持たなかった「ことば」となっているために音だけでも意味を理解することができます。

しかし、音読みの場合は音としての読みには日本語としての意味がありません。したがってどうしても文字による意味の確認を必要としてしまっているのです。


話し言葉だけで音読み漢字の言葉を理解するためには、その言葉を限定するための独特の使われ方やその言葉を説明するための周りの言葉が必要となっているのです。

文字としての確認が可能な場合はその言葉だけを見せれば理解できるのですが、話し言葉の場合はさらなる説明が必要になってくることになります。

これを怠るときちんと伝わらないことが増えていくことになります。


同じ内容を書いて伝える場合よりは話して伝える場合のほうが言葉が多くなってしまうことの理由はここにあることになります。

同音異義語がある場合だけではなく日本語として意味ある言葉となっていない音読みについても音だけではもともと理解しにくいものとなっていることになります。


以前にも見てきたように日本語が持っている音は「ひらがなの音」になります。

ひらがなもカタカナも持っている音は同じ音となっていますので話し言葉では文字の違いがまったくなくなってしまいます。

漢字やアルファベット(ローマ字)にしてもその読み方が必要なときには仮名で表記して音を表しています。

音として声に出した瞬間にはすべてが「ひらがなの音」になってしまうことになります。


文字によって言葉の違いや意味の違いを理解していることが多い日本語において、実際の言語伝達はほとんどが話し言葉で行なわれている事実を踏まえて伝えるための技術を考えていかなければいけないことになります。

英語などの一種類の文字と一種類の音しか持たない言語の表現技術は、日本語にはそのままでは当てはまらないものであるのもよくわかるのではないでしょうか。

一般的な言語を伝えるためのテクニックではなく日本語の特徴を確認しながら、日本語のための話して伝えるために必要な技術に特化して考えていく必要があります。


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