「柔術」と「柔道」、「剣術」と「剣道」、「武術」と「武道」などが代表的なものだと思われます。
中にはあからさまに「〇〇術」や「〇〇道」という表現はしなくとも感覚としてその違いを感じることができる物もあるのではないでしょうか。
「相撲道」は「道」しかありませんし「相撲術」という表現は見たことがありません。
「書道」「棋道」も「道」しかないと思われます。
いわゆるスポーツと呼ばれるものの類は厳格に細かく規定されたルールのなかで優劣を競う「術」の世界だと思われます。
誰が見ても優劣がはっきりするように勝敗があったり点数があったりしているものです。
結果として順位があったりチャンピオンがいたりするものだと思われます。
「術」は競技としての優劣を競い合い相手に勝つことを目的とすることとなります。
「術」として優れたほうがより優位に立つことになります。
したがって競技の場においてはその瞬間において相手よりも優位な「術」を披露できることを目指します。
競技の対象となる場や相手と比較してどちらがより良い結果を出したのかという相対的な環境での評価を重んじることとなります。
一方で「道」は、その世界での不変的な絶対的なものを求めて究め続けていくことになるのではないでしょうか。
究められることについての確証もなければ方法すらも手探りの状況において、それでも日々の努力を重ね続けていくことになると思われます。
時には自分が努力を続けている経過や方向を確かめるための試しの場が存在することもあります。
見た目には「術」の比べ合いとして映る「試合」は試しの場であって彼我の優劣を決める場ではなかったのです。
その証は、試し合いに立ち会ってくれた相手に敬意と謝意を表しその場や環境に対してさえも礼を忘れない態度に現れていると思われます。
「術」を磨くことは「道」を究めるための一つの方法でもあるからです。
日本語の持っている感覚、日本人の持っている感覚においては特に「道」を究めていこうとする姿勢や態度に対して無条件で賞賛し応援する傾向があります。
それがあるからこそ「術」の場において秀でていると評価された者に対しては、「道」を究める者であって欲しいという思いがとても強くなります。
結果として単なる「術」の修練を越えた全人格的な「道」の探究者としての態度や姿勢を求めることになります。
感覚的に、「術」に優れた者はその術を身につけるまでの過程において「道」の探究者としての資質を持った者としての見方がされていることでもあります。
「術」には肉体的精神的能力的に大きな波が存在します。
ピークを維持することは不可能です。
「道」には優劣を決める場がありませんし、優劣の評価の対象となる物でもありません。
最近、日本語の探求もひとつの「道」であることに気がつきました。
究めるべき対象としてとても大きなものであることに改めて気がついたのです。
他の言語と比べた時にあまりも懐の広い言語であることに驚かされました。
さらには、生涯をかけても極めることはとても不可能であることにも気がついたのです。
全容を知ることすら不可能ではないでしょうか。
それは、変化し続けていることもひとつの理由ですがそれ以上に日本語のもとになっている部分のあまりにも深遠なことに気がついたからでもあります。
しかも、記録として残っていることはわずかであり想像力をたくましくして知りうることから辿って行かなければならないことになります。
何と面白い活動ではないでしょうか。
新しいスポーツとして野球やアイススケートがあります。
わたしたちが観戦している場面は競技の場としての場面が多いのではないでしょうか。
「術」の競い合いの場だと思われます。
その中でもイチローや羽生選手の活動に「道」の一端を見ることができるのは私だけではないと思います。
年令や経験だけではない単なる競技者を越えた何かを感じているのではないでしょうか。
彼らにしてもやりたかったことや興味の対象、好奇心の向くものは今現在でもたくさんあるはずです。
恐らくはそれらを切り捨てることではなく自分としてのなかで取り込んでしまっているのではないでしょうか。
その結果として一つの世界における求道者としての「道」を求めて進んでいる姿として映っているのではないでしょうか。
彼らは競技の場を離れたとしてもその姿勢は全く変わらないものとなっているのではないでしょうか。
彼らの進んでいる「道」においては競技者としての立場はほんの一部でしかないと思われます。
それは「野球道」であり「アイススケート道」であると言うことも可能ではないでしょうか。
自分が進むべき「道」をあらためて考えてみたいですね。
社会の変化が激しい時には今まで持っていた価値が突然崩壊することが起こります。
そんな時にこそしっかりと「道」を定めて進んでいきたいものです。
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