今日は海開きのところも多いのではないでしょうか。
「海」という漢字が五つ続けて書かれています。果たして何と読むのでしょう。
「海」という漢字の読みは常用漢字としては音読みでは「カイ」ですし、訓読みでは「うみ」の一種類ずつです。
五つの海で「ゴカイ」。そんな読み方もできますね。
もう一捻りしてある感じですね。
人名漢字として使われるときなどには天海のように「み」と読ませる場合もあります。
それ以外の読み方に思い当たるものがあるでしょうか。
ヒントは「海」という漢字を使った熟語を考えてみることです。
「海」を使った熟語にはどんなものがあるでしょうか。
一番多いものは海に棲む動物の名前ではないでしょうか。
動物の前に思い浮かぶものがあるかもしれません。
朝の連続テレビ小説で有名になった「海女」(あま)が筆頭にあげられるのではないでしょうか。
勘の鋭い人はこの段階でなんとなく想像ができたかもしれませんね。
「あ」と読むことができる「海」が見つかったことと、五つ並んでいることが大きなヒントになりますね。
「海豚」「海胆」「海老」の読み方を見てみましょう。
「いるか」「うに」「えび」になりますね。
更に馴染みはあまりないのですが「海草」とかいて「おご」という読み方があるようです。
オゴノリという海藻は日本に広く分布しており食用として古くから利用されていたようです。
これで分かりますね。
「海海海海海」は「あいうえお」と読むことができるということになります。
「海草」の「おご」という読みがもっと一般化していればなるほどと思う人も多いのではないでしょうか。
ここで利用されてる読みのすべてが音読みでないことはすぐにわかることですが、果たして訓読みと言っていいものかどうかはどうでしょうか。
訓読みの本来の意味は一文字の漢字について日本語の持っている意味をひらがなことば(やまとことば)で充てたものです。
ここで使われている読み方はすべて「海」を使用した熟語となっていますので、熟字訓と言われるものとなります。
熟字訓の特徴としては熟語としての漢字が持っている意味の当て字的な要素が強いために単漢字に分解しても読みの要素は見つけることができません。
単漢字はそれぞれの字訓を持っていますがそれを利用することなく二字をまとめてひとつの訓を与えた読み方となります。
単なる当て字とは異なり漢字としての文字の持っている意味と日本語としてのことばの意味をうまく融合させた日本独特の漢字の使い方の一つです。
熟字訓には「大人」(おとな)のように単漢字の訓からそれほど離れていないために文字から想像できるものから、「飛鳥」(あすか)のように単漢字の訓からは想像もできない意味までかけ離れているものまであります。
漢語を導入したころの中国文明は世界の最先端を行っているものでした。
そこで持っている言葉は当時の文字のない日本が持っている言葉よりも遥かに多かったと推測されます。
漢語の持っている音と意味の情報だけで文字のなかった日本語が持っている言葉をカバーすることができなかったのでしょうか。
単漢字の訓読みだけで対応できないほど文字のない日本語は豊かな言葉を持っていたのでしょうか。
熟字訓は単漢字の訓読みができたおかげで生まれてきたものということができます。
漢字を理解するときには音読みだけでは意味が分からないものとなります。
訓読みがあることによって日本語の音のある言葉として理解できることになります。
音読みだけで意味が作られているのは学術的な記号であったり固有名詞くらいのものではないでしょうか。
音だけしかなかったやまとことばは私たちが思っている以上の言葉を持っていたのではないでしょうか。
音にしか意味のなかった言葉でできていたやまとことばが文字としても意味のある漢語と出会ったことで音と文字の両方で意味を表すことができるようになりました。
世界に類のないとんでもない表現力を持った言語が出来上がったのではないでしょうか。
文字として表すときには漢字としてのメリットを生かすこと、話すときにはやまとことばとしてのメリットを生かすことを考えれば凄いことになりそうです。
まだまだ日本語の使い方はいろいろなことが考えられそうですね。
楽しくなるばかりです。
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