わたしからすれば、お前たちの言語の方がよほど聞き取りにくいと言いたいのですが、英語を母語にする人とドイツ語を母語にする人から一緒に言われると「そうかな」と思わざるを得ません。
それでも、英語を母語とする友人よりもドイツ語を母語とする友人の方が、意味は分からなくとも音としての日本語が拾えているように思っています。
同じように会話をしていてもドイツ語を母語とする人の方は音を拾ったうえでその音を聞き返しながらどの様な言葉であるのかを確認してくることが多いのです。
英語を母語とする友人の方は、彼に比べて日本語の音そのものが捉えきれていないように感じます。
このことについて、それぞれの人の日本語のついての慣れの問題だとばかり思っていました。
ところが、言語が持っている周波数という資料に触れた時に、思わず「なるほどな」と声に出してしまいました。
実際には文字で書かれていたのですが、わかり易くするために概要でグラフを作ってみました。
それぞれの言語で使われている周波数帯は以下のようになっているそうです。
赤色はメインの領域
人の聞こえる周波数帯(可聴域)は約15Hz~20,000Hzと言われています。
個人の可聴域のピークは10代の前半と言われており、特に高音域はそれ以降年を取るにつれてどんどん聞き取りにくくなっていくようです。
子どもたちに早く帰宅するように指導している市で、実験的に公園で5時のチャイムと一緒にモスキート音(蚊の飛ぶような高音)を流したそうです。
気に障る嫌な音なのですが、大人には音が鳴っていること自体が感じられませんので聞き取ることができる年代の子どもの帰宅が早くなったそうです。
グラフから分かるように日本語の使っている周波数帯は他の言語に比べるとかなり特徴的となっています。
全体の幅も狭いうえに低周波数帯域に固まっているのです。
アメリカ人の友人が「日本語は、ボソボソ低い声で太鼓のような平坦なリズムを刻んでいて聞き取りにくい」と言っていたことを思い出しました。
(参照:周波数から見てみた言語)
母語として持っている言語は生まれた時から触れており、母語を聞いたり話したり理解したりするのに都合のいいように体のあらゆる器官が発達していくことが分かっています。
日本語を母語として持っている私たちは、幼児期から日本語に触れることによって日本語の持っている周波数帯の音を言葉として認識するのに都合のいい聴覚を作ってきているのです。
したがって、125Hz~1,500Hzにある音を言葉として聞き分けるための機能がとても発達していることになります。
音楽を聴いたりスピーカの性能についても重低音域について敏感でありうるさいのが日本人だそうです。
結果として、音しての可聴域はもっと広いのですが言語として認識して違いを区別するための機能は125Hz~1,500Hzの周波数帯において一番発達していることになります。
これを見た時に日本語と英語・ドイツ語を比べて思わず納得してしまいました。
同じ英語でもアメリカ英語の方がイギリス英語よりも親しみやすく感じてしまうのは、同じ英語であっても日本語が持っている周波数帯との開きがイギリス英語の方が大きいからではないでしょうか。
ドイツ語を母語として持っている友人は、日本語の持っている周波数帯と彼の持っている言語の音してとらえることが得意な周波数帯がかなりカブっていたのです。
だから、意味は分からなくとも言葉の音として捉えることが自然にできたのではないでしょうか。
意味は分からなくとも日本語の「お」と「う」の違いを区別してとらえることができたのではないでしょうか。
英語を母語としている友人は彼の母語はイギリス英語でした。
しかし、アメリカ英語にも馴染んでいたので純粋のイギリス英語の持っている周波数帯よりはもう少し低いエリアもカバーできているのではないでしょうか。
それでも、日本語がメインに使用している周波数帯は彼らの言語においてはほとんど使用されていない領域だったのです。
つまりは、音としてはとらえることができたとしても言葉(の音)として捉えることが苦手な領域だったとも思われます。
自分の持っている母語以外の言語を身につけようとしたときに、その言語が持っている音を聞き取ることができなければ真似ることができません。
その意味では、「ロシア人は言語を身につける天才である」と言われる理由もわかるように思われます。
ロシア語が持っている使用領域は他の言語のかなりの部分をカバーしているからです。
聴覚だけではなく声帯や口腔や舌の形までもが母語を使いやすいように発達していきます。
使用されない機能は退化していくことになります。
年を取ってからの語学の習得のむずかしさの一因かもしれませんね。
早すぎても大きな弊害があることは分かっているので、流行にのって語学習得を目指すのも気を付けたいものです。
(参照:幼児期言語の習得、幼児期言語の重要性 など)
感覚で思っていたことが科学的な根拠で説明されることはとても面白いことです。
言語はまさしく感覚であり第二の天性です。
意識せずに使っているものですがあらゆる活動に影響を与えているものでもあります。
そんな感覚を解き明かして、日本語の持っている特徴をさらに明らかにして活用していきたいものです。