2015年7月17日金曜日

人によって違うポジティブワード

最近ではあまり使われることがなくなってきました言葉に、ポジティブワード(⇔ネガティブワード)があります。

とても豊かな表現能力を持つ日本語にとっては、あまり意味のないことだったのかもしれません。


言葉が少ない言語は、ただ使っている言葉が少ないだけではありません。

そこには、豊かな表現を持つ言語に比べると微妙なニュアンスを表す言葉が少ないことが見て取れます。

持っている言葉が、白黒はっきりした言葉が多くなっているのです。


これは、言語として醸成されてきた歴史の長さにも比例しているのかもしれません。

使用された歴史の長い言語である中国語や日本語においては、同じことを表現するのにもいく通りもの表現の仕方があります。

同じ現象や事実を表現する場合であっても、その事実に対して感じてる内容によって様々な表現が可能となっています。


その結果起こってしまうことが、事実を純粋に事実として表現しているのか意見や感想が混ざっているのかが分かりにくくなることです。

表現の豊富な言語で起こりやすいことでもあります。


表現の豊富な日本語では、人によって頻繁に使う言葉が違ってきます。

日常的に使う言葉に偏りが出てくることになります。

それは好き嫌いもあれば言語の使用環境によって起こることもあります。

全国で同じ教科書で同じように国語を習得してきても、日常使いの言語とは異なっているのですべての人が同じように使いこなせるわけではありません。


特に、聞いたことはあるけれど正確には理解ができない言葉は、とんでもない量になっていると思われます。

言葉の多い言語である日本語では、一つ一つの言葉の解釈がそれほど厳密でなくとも伝わることになります。

ましてや、日本語には一を聞いて十を知るや行間を読むなどの言語外の解釈も求められており、厳格な表現をすることの方が嫌われる傾向にあります。


その結果として、国語として正確な意味を覚えたとしても日常使用のなかで一人ひとりの解釈に頼った言葉となっていると思われます。

同じ言葉であっても、その言葉についての解釈は一人ひとり微妙に異なったものとなっていることになります。


自分ではポジティブワードであると思って使っていても、相手にとってはネガティブワードである言葉がでてきます。

しかも言葉は同じですので、その受取り方についてはほとんどお互いに気がつくことがありません。

長時間の会話のなかで、なんとなく気がつくことがあるかもしれないという程度のことではないでしょうか。


代表的な言葉として「失敗」があります。

一般的にはネガティブワードとして扱われる言葉です。

もちろん言葉そのものにはポジティブもネガティブもありませんし、単なる記号でしかありません。

使う人や受け取る人が言葉に対して感覚で味付けをしているだけのことです。
(参照:ポジティブワードの威力

「失敗」という言葉にはネガティブな味付けをしている人がほとんどだということになります。

しかし、人によっては「失敗」に対してポジティブなイメージを持っている人もいるのです。


傾向としては、何かを成し遂げたことのある人ほど「失敗」に対してマイナスのイメージを持っていないようです。

活動してトライをするからその結果として目論んだ通りにならないのが「失敗」と言う程度にしか思っていないのです。

言葉を変えて言えば、「実験」「検証」「確認」などでしょうか。

もっと積極的にとらえる場合には、次の手を見つけるための最良の方法として「失敗」をイメージしている場合もあります。

つまりは、「失敗」がないと次へ進めない、目的を達するために大切な欠かすことのできないステップとすら位置づけているのです。


このように思って使っている「失敗」と、絶対にしたくない恥かしいことと思って使っている「失敗」では、まったく違ったものとなってしまっていることになります。

現象や事象としては全く同じことであり、国語辞典的に言っても同じことなのですが、一人ひとりの持っている感覚としては大きく違ったものとなってしまっているのです。

ほとんどの言葉がこのような状態にあると言えるのではないでしょうか。


だからこそ言語で表現して伝えることが難しいのだと思います。

特に、現象・事象・事実をそのまま伝えることはとても難しいことだと思われますし、ほとんど不可能なことではないでしょうか。

言語として得た一部の情報から推測をしているのが実際の姿ではないでしょうか。


自分の感情を表現する方法は本当にたくさんあります。

しかし、自分の感じていることをまったく同じように感じてもらうことは不可能だと思われます。

そのための表現に使われる言葉の感覚が伝えたい相手と異なっているからです。


生活環境が近しい場合には、言葉の持っている感覚も近いことが多くなります。

業界用語や専門用語といったものや独特の符丁などがそれにあたるのではないでしょうか。

それでも、24時間365日全く同じ環境にいるわけではないので微妙なずれが生じていることになります。


これが一番表面的に出てくるのが、ポジティブワードではないでしょうか。

日本人の社会環境の場合は、日常的に出てくる言葉はネガティブワードの方が多くなっています。

それだけにポジティブワードが威力を発揮することができるのです。
(参照:ポジティブワード・ネガティブワード


そのポジティブワードが、人によってはネガティブワードになっていることがあることを知っておくことは大切だと思われます。

感覚のズレが一番見えやすい部分だからです。

知らないうちに、伝えたつもり分かったつもり分かってもらったつもりになっていませんか。

きちんと反応を確かめて確認をしていきたいですね。