2015年6月10日水曜日

「ワード」と日本語

皆さんはワープロソフトとしてどんなものを使っているでしょうか。

MicrosoftのWordを使っている人も多いのではないかと思います。

このソフトの使い勝手に英語と日本語の言語感覚の違いを鮮明に見ることができます。


今でこそ、たくさんのテンプレート(標準書式)が用意されていて、目的にあった書式を選んでから書き始めることができますが、しばらく前までは目的にあった書式にするのに苦労をしました。

ソフトを立ち上げた時の書式についても設定できるのできるのですが、インストールしたままの設定の人も多いのではないのでしょうか。


初めてWordに触れた時は、どのようにしたら良いのか分からずに戸惑ったことを記憶していますし、現在でも使いたくないソフトの筆頭です。

目的に応じてテンプレートから選択すればいいのでしょうが、どうしても使い始めた頃のイメージから抜け出すことができません。


わたしがワープロ専用機を使い始めたのが30代の前半です。

ノートPCにMicrosoftのWindowsプラスOffice(当時はExcel、Word単品でした)を使い始めたのが30代の半ばでした。

頑張って個人購入したノートPCを使いこなそうとしていたのですが、ワープロだけはずっと専用機を使っていた記憶があります。


とにかく立ち上げた時に真っ白なページだけが枠も何もなく出てきたことにびっくりしたものです。

何かしらの書式の枠があってその中に文字や文章を入れていくことを当たり前と思っていた私としてはどうしていいのか全く分かりませんでした。

決められた枠の中に文字や文章を入れ込むことに慣れ切っていたのではないでしょうか。

Wordの持っている、まずはコンテンツとして中身を書きあげてしまい、体裁を目的に合わせて調整するという感覚がまったくありませんでした。

決められた書式のない真っ白な入力ページと面と向かって、何をしたらいいのか分からなかったのです。


思い切って書き始めて見たのはいいものの、不安で仕方がありません。

文字を書き進めながらも、全体がどんなイメージになるのかが気になってしまって仕方がありません。

結果として最後まで書きあげることができませんでした。


時間の制約のないときに、何とか慣れたいと思って取り組んでみましたがどうしても好きになれません。

決まった枠があり(最終的には枠の調整も可能なのですが)、その中に目的の文章を入れ込むことに慣れ切っていた私にとっては、感覚的に使いこなすことは不可能だと感じていました。

それ以来、よほどの指定がない限りWordで文章を書くことはありません。

ほとんどの仕事に関する文章はExcelで問題ありませんでした。


それからWordの使い方をいろいろ見ていったときに、英語と日本語の基本的な感覚的違いに気がつきました。

英語は文章の中身で目的を達成しようとするものであり、日本語は文章の書式で目的の大半を達成しているということです。


ビジネス上の文章にしても、英語においては最初に目的が伝えられ、それを達するための論理が説明やお願いといった形で捕捉されていきます。

それぞれの要素がパラグラフ(段落)として構成されていきます。

簡潔さを求めるために、箇条書きもよく利用されます。


日本語では、それらの要素について重要性の順番がありませんので必要項目を漏らさないための項目欄が必要になっているのです。

書式や書式のタイトル見れば、何のための書式かが分かるようになっているために項目が埋められていれば中身を詳細に読む必要はありません。

あるいは、詳細を理解する項目が限られたものとなっていることがほとんどです。


Wordそのものは英語の感覚によるワープロソフトです。

その典型が、体裁は関係なく内容を書きつけることにあります。

そして、パラグラフを構成するための最強の武器がアウトライン機能なのです。


わたしの周辺でWordを使っている人たちのなかで、アウトライン機能を使いこなしている人を見たことがありません。

アメリカ人の友人がWordを使う場面を何度か見たことがありますが、手紙を書くことにおいても以下のようなことをやっています。


まずはとにかくアウトライン表示をします。(開いた時アウトラインに設定してあります)

目的をタイトルとして書きます。最上位にセットします。

主題をいくつ書くか決めて2位にセットしますが、とことんまで削っていきます。

手紙の場合はこれすらしません、タイトルのみです。


その次にパラグラフの主題をいくつか書きます。

それらを並べ替えたり、増やしたり削ったりします。

手紙の時は4つほどのパラグラフでした。


書いているうちに、一つのパラグラフが大きくなってしまったために二つに分割していました。

とても簡潔で目的のはっきりとした手紙になっていたことを記憶しています。


彼の書きかけのレポートを見せてもらったことがあります。

タイトルと章立てと一部のパラグラフが書かれたものでした。

文章が書かれているところは一つもありません。


章立てとパラグラフが決まらないと、文章は書かないそうです。

資料としてあるものはパラグラフにどこにある資料かということを記録してあるとのことでした。

それでも章立てが決まらないので、まだ書きはじめないと言って、章の入れ替えや追加削減をしていました。

一部のパラグラフが書いてあるところは、章の内容をより具体的にイメージするために書いている部分だと教えてくれました。


自分たちがレポートを書くときもある程度の構成は考えますが、ここまで徹底的に論理性や検証について考えたことはありませんでした。

せいぜい、書き殴った後でブロック単位で構成をする程度だったと思います。


Wordの機能を使うことで、英語の感覚を利用することができます。

最近では非常にたくさんのテンプレートが用意されており、かつてほど違和感を感じることは少なくなっているのかもしれませんし、初めからWordに慣れている人も多いかと思います。

特に、あるていど量のある文章を書くときには役に立つものとなっています。


日本語を使いながらも、英語の感覚に触れることができる機会だと思います。

縦書きでも可能なこの機能は、ちょっとした文章を書くときにもメリハリの利いた目的のはっきりした文章を書くことができます。

そういう私もあまり使っていませんが、使いこなせるようになると文章が変わってくるのではないでしょうか。