その中でひらがなの持つ独特の感覚として、以下の文章を声を出して読んでもらいしました。
一文字筒を丁寧にきちんと読もうとすると、ぎくしゃくしてしまいます。
一気に読んでしまった方が意味がわかり易いのですが、スペースで区切られたそれぞれの言葉は一つとしてきちんと書かれたものはありません。
それでも、一気に意味がある文章として読めてしまいます。
これが初めて目にする今まで見たことのない言葉であったらこうはいかないと思います。
パッと一目見て何と書いてあるのかの推測がつきますので、それを確認できる要素があれば一文字ずつの確認をしなくとも、知っている言葉としての認識をしてしまうようです。
いったん声に出して読んで意味のある言葉として認識してしまうと、振り返って確認しようとはしませんので次の言葉に向かってしまいます。
結果として、一つとして声に出して読んだ通りの言葉がなくとも意味がある文章として読み切ってしまうことになります。
この実験は、今まで何度かやってみたことがありました。
ひらがなの言葉としての最初と最後の文字があっていること、言葉としての文字の数があっていること、使っている文字の順番が違っても使っている文字自体はあっていること、このような条件が重なると視覚として捉えた情報は一連の知っている言葉として認知してしまうことになるようです。
普段から日常的に耳にしたり見たりしている言葉でやってみると、さらに認知の効率が高くなるようです。
今回は、前から気になっていた縦書きを一緒に試してみました。
ここに表示しておきますが、皆さんが読んだ時には横書きと比べて何か違いがありますでしょうか。
参加していただいた人たちの感覚によりますと、縦書きの方がすんなりと読んでしまうという意見の方が多かったです。
原因ははっきりしませんが、参加している人たちの年齢にもよるかもしれません。
40代以降の人にとってはひらがなだけの文章は、おそらくは縦書きのものでしか触れたことがないのではないでしょうか。
わたし自身でも、ひらがなだけの文章で横書きのものはほとんど見たことがありません。
しかも、日本語の感覚が前面に出ている内容の文章についてはほとんどが縦書きになっていないでしょうか。
PCやスマホでは、何でも構わず横書きになっていることが多くありますが、横書きになっていることによって読みにくく(意味がつかみにくく)なっていることがあるのではないでしょうか。
欧米型言語の感覚による内容については、カタカナや数字、アルファベットが頻出してくることになりますので、横書きに法が理解しやすくなっています。
しかし、日本語の独特の感覚の内容については縦書きと横書きで同じ文章を比べてみると、明らかに縦書きの方が理解しやすく感じます。
世の中の文章のほとんどが横書きになっています。
表記方法の種類や図表や写真を入れ込むにも横書きの方が縦書きよりも有利な面があるのは確かだと思われます。
しかし、横書きが中心になることによって日本語が持っている独特の感覚を表現したり理解したりする機会が減っているのではないでしょうか。
書かれている内容や表現の方法にも依存することが多いと思いますが、おなじ横書きの文章であっても縦書きにした方が理解しやすいものがあることは間違いのないことではないでしょうか。
横書きの文章を、あえて縦書きにしてみることは、日本語の感覚を知るためにもとてもいい活動になります。
長い文章を書き換えることは大変ですので、短い文章や文章の一部を縦書きにしてみることをお薦めします。
これを繰り返しているうちに、どんな文章が縦書きにした時により理解しやすいものになるかが見えてきます。
思わぬ発見もありますよ。
日本語が持っている基本的な表記方法である漢字かな交じり文(和漢混淆文)は、横書きよりも縦書きにした時の方が美しく見えるのはわたしだけではないと思います。
そんな見え方がしてくると、更に美しく見えないかという欲望が湧いてきます。
そこで考えるのが、漢字とひらがなのバランスになります。
これが、文章における語感になるのです。
語感にもいろいろなものがありますが、自分の語感を売り物とする作家でもない限りは、ほとんどの文章の目的は相手に理解してもらうことにあると思われます。
そのためには、自分の持っている語感を押し付けることよりも相手の持っている語感に近づける方がより効果的になります。
相手の持っている語感を確認することはなかなか難しいことになりますので、なるべく共通的に理解しやすい語感を見つけることになります。
美しいと感じられる語感は、それだけで理解しやすい環境にあるということができます。
まずは、日本語の持っている感覚に触れやすくするためにも、いろいろな文章を縦書きにしてみることが面白いと思います。
横書きの場合とどんな違いが感じられるのか、それによってどれだけ横書きの感覚に馴染んでしまっているかの確認もできると思います。
実際に手書きで文字にしてみるのが一番違いがわかり易いと思います。
試しにやってみませんか。