2015年3月30日月曜日

偽りの目標症候群

日本語が持っている基本的な感覚では、高い目標を掲げてそれに向かって努力することが苦手になっているようです。

高い目標を掲げて、それに向かっての最短距離を走ることは、欧米型言語の感覚の得意とするところのもののようです。

脳の感覚は、幼児期に習得した母語によって決まってしまいますので、そのあとにどのような言語による感覚を植え付けようとしても、基本的な感覚と機能は変えることができないようです。


自然界に存在する様々な音を言葉として聞き取る感覚は、欧米型言語にはないものですし、日本語の大きな特徴ともなっているものです。

欧米型言語を母語とする脳と日本語を母語とする脳では、その感覚が根本的に違っていると思った方がよさそうです。


日本語の感覚の基本は、自然環境との共生のために自分を変化させて適応していくことなっていますので、欧米型言語の感覚である自己を確立し環境に対しての影響を強めていこうとするものとは対極の感覚にあります。

日本語の感覚では、高い目標を掲げてそれに向かって努力することよりも、日々行なっていることを少しでも上手くやる工夫をするために努力をしていくことの方が向いているのです。

日々やっていることは一つだけではありません。

いろいろな活動をしていますが、そのすべてを上手くこなしていきたいのが日本語の感覚です。

現実にやっていることの改善を繰り返しながら、全体をレベルアップしていくことの方が感覚的に合っているのです。

ですから、大きな目標のために何かを切り捨てて集中するということに対しては感覚的に拒否反応が現れることになります。

無理に言い聞かせて、そのような活動を続けているとストレスが蓄積していくことになります。


現実離れした大きな目標にはさらに違和感や不自然さを感じることになります。

無理にそのような目標を設定すると、実感が伴いませんので、脳は高い目標を掲げただけで満足してしまいます。

結局、絵に描いた餅にもならなくなってしまうことになります。


日々行なっている活動から直接つながるような目標でないと、目標として設定しても長続きはしないのです。

日々行なっている活動は、人によってさまざまですし、何種類もの活動をしています。

日本語の感覚としては、一つの活動が上手くいけば他の活動はどうでもいいというわけにはいきません。

全ての活動が上手くいくように努力するのが日本語の感覚です。

とても欲張りでもあり、真面目なのです。


何か一つの活動に目をつけて、他者より優れていることを探して、そこだけを評価の対象とすることができる欧米型言語の感覚とはかなりの違いがある部分です。

結果として、欧米型言語の感覚では、人の評価がある一点のアウトプットに対してだけでもできることになり、日本語の感覚では全人格的な評価としてなされることになります。


多くの新入社員が誕生する時期になりました。

「経営者としての視点を持ってください。」などという挨拶をする馬鹿者が毎年必ずいます。

日本語の感覚では、そんな視点は経営者が持てばいいのです。

経営者となる人が自然と身につければいいのです。

新入社員が経営者の視点を持って何をするのでしょうか。

経営者と意見を言い合うのでしょうか。

経営者としての活動をするのでしょうか。

そんなことができるわけがありません。


どうも現実の活動から離れた浮ついた話が多くなってきているように思われます。

ニュースになっている事件も、現実離れしたものが多くなっているのではないでしょうか。

日本語の感覚は、すべて現実がスタートであり、現実をしっかり認知することが原点です。

迷った時に必ず戻ってこれるところです。

すべてを捨てて挑戦することは、憧れがあったとしても現実的ではないことを感覚として理解しているのです。


何かをやろうとしたときに、最低最悪の場合を想定して備えておくのが日本語の感覚です。

上手くやるためにあらゆるものを利用し必ずやり遂げようとするのが、欧米型原語の感覚です。

企業の活動原理やマネジメントにおいては、ほとんどが欧米型言語の感覚でできています。

学校教育の中身についても同様です。


純粋な日本語感覚は、日々ストレスの中に晒されていることになります。

違和感と不自然さとストレスを抱えながら活動していることになります。

圧倒的にうつ病患者や新うつ病の率が高い日本は、持っている感覚と違うことを無理にこなしていることからきているのではないでしょうか。


母親から子供に伝承される母語としての日本語も、少しずつ欧米型言語の感覚に侵略されているものと思われます。

感覚の違いが個性であると言えます。

様々な個性があってこそ、人と協力する意味があることになります。


日本語の持っている感覚について、もっと知ってもっと楽に活動をしてもいいのではないでしょうか。

偽りの目標は掲げているだけでも、ストレスになりますしプレッシャーにもなります。

そんなものに振り回されるよりも、現実的に今の活動をもう少しは早くやることを考えたほうがよさそうですね。