その最大の脅威の対象が、人であるのか自然であるのかによって基本的なものの見方が決まってきていると思われます。
その脅威を感じる要素としては、圧倒的なパワーとともにいつどんな形で襲ってくるかわからないという不安があります。
そして人知の及ばない圧倒的な脅威に対して、神という概念を設定することが起こります。
実際の言葉こそ違っているものの、世界のすべての言語において神を表現する言葉が存在していると思われます。
人を脅威の対象とし、個としての人を中心として考える欧米型言語の文化においては、神は人としての究極の姿として描かれることになります。
全知全能の人として、自然をもコントロールする者として描かれることになります。
人こそが至上のものという感覚になっていきます。
それに対して、日本語の文化における最大の脅威は自然環境になります。
したがって、神は自然にあって自然を統括していることになります。
神を人として描いている場合に比べれば、その存在や姿は極めて抽象的なものとなります。
欧米型言語の文化において絶対神としてのキリストがあることに比べると、日本語の文化においては八百万(やおよろず)の神が存在しています。
天照大神から貧乏神まで、ありとあらゆるところに神の存在を意識しているのです。
身近ないたるところに神がおり、日常生活において神と共生している感覚なのです。
神の存在は、人としての力の及ばない事象に対してのあきらめや受け入れのための理由づけとして行なわれることになります。
自分の力の及ばないことに対して、神のチカラによって援助を願う活動になります。
欧米型言語の文化による人の姿としての神の存在は、人があらゆるものをコントロールするという強い意志を感じるをことができます。
人が至上のものであり、いつの日か人知はすべてをコントロールするということに向かって探求を続けることになります。
日本語の文化においては、自然そのものに神を感じます。
人知の及ばないものコントロールできないものとして自然環境を感じていることになります。
いつかはコントルールするということではなく、永久にコントロールすることができないからそこに神を感じていることになります。
そして、人は神である自然の行ないに対して適応して共生していく感覚となっています。
つまりは、人も自然の一部であり自然から独立した存在としてはなっていないことになります。
仏教においては仏像として偶像化された仏の姿がありますが、その種類の多さや仏としての役割などは自然とかぶるものがあります。
神道においては、祀る対象としての具体的な物はありません。
神が宿ったものとして物が祀られることがありますが、神そのものが形として祀られたものはありません。
2008年にシカゴ大学で行われた神に関する調査があります。
2012年に発表されたものですが、細かくて見にくいのですが表示しておきたいと思います。
左側の設問は I don't believe in God.と答えた%であり、右側は I know God really exists and I have no doubt about it.となっています。
単純に言えば、左は「神を信じません。」であり右側は「神の存在を確信しています。」とでもなるのではないでしょうか。
日本についてはとても面白い結果となっており、日本語の感覚ともぴったりと合っていると思われます。
「神を信じない。」は8.7%であり、90%以上が神を信じていることになります。
それにもかかわらず、神の存在そのものを信じているのはわずかに4.3%となっているのです。
日本以外の国では、「神を信じていない。」が多ければ、当然その存在を信じていません。
日本だけが、神の概念は信じているのですが、神の存在は信じていないとなっているのです。
しかも、両方ともに90%を越えているという、きわめて象徴的な結果となっているのです。
ここで気を付けなければいけないことがあります。
簡単に日本語で神と言っていますが、欧米型言語で言うところのGodとはその感覚が異なっていることを理解しておく必要があります。
しかし、他に適切な言葉がないのです。
欧米型言語の文化から見た時に、日本人が「?」となる大きな要素の一つですね。
歴史文化として言語を考える時に、神との関係は避けて通ることができないものと言えます。
神に対する感覚は、ものを考える時の基本的な感覚に通じているからです。
日本語が持っている神に対する自然神的な感覚は、文化後進国の原住民族の感覚に近いものがあります。
欧米型言語の感覚から見ると、世界の先端文明の担い手として評価している国の中で、日本だけが彼らと違った感覚を持っていることになります。
これも日本語の特徴の一つですね。
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