世界を相手にした時に、日本語の感覚は邪魔になるものです。
ところが、そこからもう一歩踏み込んだ先には、彼らの思いもつかなかった本質的な感覚があることもわかってきました。
自然科学分野における日本人の考え方においては、世界が注目していることがたくさんあります。
その一部が、ノーベル賞の受賞者として現実のものとなっています。
2000年以降のノーベル賞の自然科学分野(物理学、化学、医学生理学)における日本人の受賞者数は、アメリカには及ばないものの、全ヨーロッパの合計よりも多い人数となっています。
世界の頭脳を集めたアメリカの受賞者の原国籍に比べれば、日本人の受賞者は純粋に日本国籍であり、日本語を母語とする人達です。
彼らの思考が、母語としての日本語の感覚で行われていることは間違いのないことですし、その日本語の基盤が「かな」にあることも間違いのないことだと思われます。
文字のない時代であっても、話し言葉としての言語があったことは間違いのないことだと思われます。
このころの原始日本語のことを「古代やまとことば」と呼んだりもします。
やがて、近隣の最先端文化を持った中国から漢語が導入されてきます。
そのころの中国は、産業革命以前の混沌としたヨーロッパと比較しても、はるかに進んだ文明を持った世界の最先端の文明国でした。
漢語によってその文明にの恩恵を受けた日本は、文字を持っていなかったわけですから、漢語そのものがそのまま日本語に置き換わっていても全く不思議ではなかったと思われます。
結果として漢語は、その表現の正確さや論理性によって、仏教の教義とともに公式言語としての立場を築いていきます。
この時代の公式文書として残っているものは漢語だけになりますので、あたかも漢語しか使われていなかったような感覚を持っていしまいそうですが、実際の生活においては、話し言葉としての「古代やまとことば」が使われていたものと思われます。
「古代やまとことば」と漢語の相性が、決して良かったわけではなかったと思われます。
やがて、漢語を元にして、「古代やまとことば」を表記する文字が生み出されます。
それが「かな」です。
また、漢語を「古代やまとことば」に翻訳したのがその始まりだと思われますが、訓読みが使用されるようになってきます。
漢語という世界最先端の文明を生み出した言語を利用して、独自の話し言葉を表現するための文字を生み出してしまったのです。
「かな」と訓読みの発明が、日本語を完全な独自言語として発展させるための基盤を作ったのです。
日本語の感覚は文字よりも音の中に存在します。
あまりにもたくさんの表現を持つ日本語は、音の少なさに比較すると際立った言葉の多さを持っています。
同音異義語と言われるものが無数に存在します。
同音である以上、「古代やまとことば」から継承されている言葉であればかなり緊密な関係にある言葉となっています。
言い方を変えれば、「古代やまとことば」から継承されている同音異義語は、かつては一つの言葉として表されていたと言えると思われます。
日本語の日本語らしさをもっともよく表現するためには、いわゆる漢語としての音読み漢字を使わないで表現することです。
カタカナやアルファベットも使用しません。
「かな」と訓読み漢字だけで、表現することを試みてください。
そこに、日本語の本来持っている感覚が見えてくるはずです。
私は、シイガーソングライターとしての活動もしていますので、曲つくりも行っています。
「かな」と訓読み漢字だけで作られた歌詞が、どれ程のパワーを持っているのかを実感している人間の一人です。
これは日本語独自の、日本語の感覚そのものだと思われます。
「かな」も訓読み漢字も、音としてはすべて「かな」で聞こえるものです。
文字にした時にわかり易いように、漢字の訓読みを利用していることになります。
「かな」の持っている音が、日本語の感覚を継承してきているのだと思われます。
皆さんの知っている曲でも、「かな」と訓読み漢字だけでできているものがあります。
中島みゆきさんの曲で「糸」という名曲があります。
歌詞の掲載は、著作権の関係がありますのでしませんが、著作権フリーの歌詞ページにリンクしておきます。
是非見てみてください。
これ以外にも探せばたくさんあるはずです。
皆さんの好きな曲は、「かな」と訓読み漢字がたくさん使われていませんか?
日本語の感覚に合っているのかどうかを確かめるにも、「かな」と訓読み漢字で表現できるかどうかを試してみることはとても役に立ちます。
人に何かを伝える時に、どんな日本人に対しても一番理解しやすい表現でもあるんですね。
難しい言葉や専門用語を使ってしまった時には、「かな」と訓読み漢字を使って言い換えてあげることが理解を促進することになります。
それができないということは、その言葉を理解していないということにつながるのでしょうね。