2014年11月25日火曜日

日本人の交渉の注意点

交渉術と言うものが世の中にたくさん出ていますが、そのほとんどがアメリカにおいてビジネスをのために開発されたものと言ってよいのではないでしょうか。

特にMBAを取得した人たちは、その講座の中にビジネスネゴシエーションとしての交渉術があることが多くなっています。

欧米人相手では、この交渉術がほとんどその理論のままに応用できるのですが、日本人が相手になったとたんにうまくいかないことが見受けられます。


言語の違いは、その言語が成り立ってきた精神文化の違いを表していますが、そのことは行動するためのきっかけの違いを表していることでもあります。

特に日本人の行動原理は、欧米の行動原理とは大きく異なります。

まさしく言語の特徴としての違いと同様と言うことができます。


世界のほとんどの場面においては、英語とフランス語が公用語の中心を占めています。

英語とフランス語の精神文化の違いや行動原理の違いは、日本語の違いと比べたらほとんど違いがないと言ってもいいくらいのものとなっています。

つまりは、世界の交渉の場面においては、日本語だけが大きく異なった感覚を持っていることになります。


日本では通用する交渉が、世界に対して通用しないことの一番大きなものは、対立についての考えや感覚です。

日本語(日本人)における交渉で、ひとたび対立の関係を作ってしまうと、ほとんどの場合その時点で交渉が決裂したり凍結したりしてしまいます。

坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとなってしまいます。

その後は、交渉の環境が保てなくなってしまうのです。


欧米においては、対立の関係に慣れていますので、対立を扱うことがとても上手です。

それは、アウトプットに対する扱い方に慣れているからです。


日本語はアウトプットの扱いに慣れていませんので、アウトプットを全人格的なものとして受け止めてしまいます。

アウトプット同士で対立している関係を、全人格的な対立として感じてしまいますので、対立の内容について分析したり検討することができなくなります。

何を言っても、何を取り上げても全面対決となってしまう関係ができてしまうのです。


外国語では対立をアウトプットによるものとして人格から切り離して、純粋にアウトプットとして扱うことに慣れていますので、ガンガンぶつけ合ってもアウトプット同士の対立の関係から離れることはありません。

決して、個人そのものの人格的な対立とはならないので、純粋にアウトプットのみの比較や検討ができるのです。

どんなにぶつかり合っても、アウトプット同士のぶつかり合いであり、その結果妥協点を探していく交渉の継続が可能となるのです。


相手の態度や言葉使いよりも、その内容の方に価値を求めますので、内容において満足のいくものが引き出せるかどうかが前面に出てきます。

したがって、その場で内容についての変更や決定の判断ができる者がいる限りは、少しでも妥結できる条件になる交渉を続けることができるのです。

日本語では、相手の態度に対しての評価が前面に出ることがよくあります。

その結果として、交渉の内容ににかかわらず対立の関係となってしまうことが少なくありません。

言っていることはほとんど違わないのに、言葉の違いや表記の違いで対立から抜け出すことができないようなことが続きます。


日本語では、たとえ小さくとも対立の関係作ってしまうことは、交渉上不利に働くことが多くなります。

交渉そのものがひとたび対立の関係ができてしまうと、人間同士の対立となってしまい簡単には抜け出せなくなるからです。

外国語では、早めに対立の関係をしっかり作っておくことによって、交渉の焦点を絞ることが可能になります。

対立は個別の条件について起きていることをわかっていますので、それぞれの条件についての妥協できるポイント探しに交渉が絞られていくのです。


日本語ので交渉においては、小さな対立が原因となって交渉全体が人間同士の対立の構図となってしまうことがよくあります。

このことをよくわかっている交渉上手は、たとえ実際にはこちらの方が強い立場であっても、相手を持ち上げて気持ちよくさせて対立の構図を作らないように気を付けます。

言葉や態度はとて丁寧で礼儀正しいのですが、条件の内容がとても厳しいものであることは頻繁にあります。

いきなり条件の提示によって対立関係になってしまうことを回避しようとするものです。

決定の当事者が席にいないことが、対立関係を作らないためであったり、対立を軟化させる手段でもあるのです。


有利な条件を引き出すためには、交渉を続けることであることをお互いが理解していても、対立の関係になりやすいのが日本語による交渉なのです。

アウトプウトの評価が、どうしても個人の評価となってしまうために、人間同士の全面対立になりやすいことを覚えておくだけでも、交渉に役立ちますね。


複数による交渉が威力を発揮するのは、日本語の場合です。


ただし、直接交渉している以外の者の役割がしっかりと理解されていることが大切です。

二人で同じような論理で相手を説得しようとしてしまうようでしたら、いないほうがましです。

交渉の当事者を一人に任せて、もう一人は中立的な立場で対立の関係になりそうな場面をコントロールすることです。

そうすることによって、一人では対立の関係になってしまうところをカバーすることができるのです。


更に、時として相手の条件の方に同意の意見でも述べれば、よりスムースな交渉が可能となるのです。

複数の交渉において、同じように畳み掛ける場面はよく見ますが、しっかりと役割を持った交渉はなかなか見ることができません。

当事者としてのめり込むと対立の関係ができやすくなってしまいます。

そこを、ある程度客観的に捌く立場として存在すると、相手から見ても交渉のしやすい環境となるのです。


どうしても対立的になりやすい日本語による交渉は、誰かが客観的に捌くことによって対立関係を作りにくくすることが可能となります。

実際には、知らないうちにやっていることも結構ありますよ。

意識してやれるようになると、もっと交渉事が楽になりますね。





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