季節の表現については、暦そのものが中国から導入されたために、中国の感覚によるものが多くなっています。
また、古くは旧暦に基づいて季節感が表現されていたために、明治維新以降の新暦への改暦後は、およそひと月程度のズレを感じることになると思います。
現在では、1874年(明治7年)の「略本暦」に掲載された七十二候が基本とされているようです。
四季、二十四節気、七十二候と細分化されていく日本の季節の表現は、俳句における季語としての扱いや季節の挨拶における使い方など、古くから生活になじんでいるものもありますが、あらためて見ると面白いものだと思います。
夏の七十二候については、既に書いていますので、ここでは冬の七十二候について触れてみたいと思います。
(参照:夏の七十二候 自然を表す言葉)
七十二候の前には、二十四節気に触れておかなければいけません。
夏至について触れた時に二十四節気について書いていますので参考にしてください。
(参照:夏至は男女の出会いを求める祭り?)
二十四節気は、季節ごとに以下のようになっています。
今回は冬に焦点を当てていますので、冬に相当する七十二候は以下のようになります。
ほとんどそのままの解釈でわかると思いますが、いくつかは確認しないといけないところもありますね。
まずは、立冬がいつなのかと言うところからですね。
現在の暦では、ほとんどの場合は11月7日が立冬に当たり、季節としての二十四節気の期間としては21日までが立冬と言うことになります。
その二十四節気の15日間を5日ずつに、初候、次候、末候に分けたものが七十二候です。
立冬から順番に見ていってみましょう。
いきなりよくわからない言葉が出てきましたが、初候の山茶花とは何のことでしょうか?
山茶花は「さざんか」と読みます。
それだけで十分ですね、ツバキ科のあの花のことです。
末候の金盞香は、意味のところにあるように水仙のことです。
音で判断してしまうと「キンセンカ」となってしまいそうですね。
小雪、大雪については三つともわかり易いものですね。
冬至の初候に、夏枯草とありますが、これは「ウツボグサ」と読みます。
6~8月ごろに花を咲かせる草ですが、中国の暦ではこのようには言っていませんので、日本だけの表現だと思われます。
夏には花穂が枯れたように見えるところから夏枯草となったと言われており、夏至の初候においても乃東枯として登場してきます。
ウツボグサは芽を出しますが、それ以外の草はほとんどが枯れてしまう季節になります。
乃東生で「なつかれくさしょうず」と読ませるようです。
周りの草が枯れてしまう冬に芽を出して、夏には枯れたように見えてしまうウツボグサは、中国の暦では扱われていない日本独特のものとなっています。
小寒の次候にある水泉動もわかりにくいですね。
意味の方を見た時になるほどと理解できるのではないでしょうか。
小寒や大寒といった寒中にこそ、何かの生き物の動きを捉えて春を待った感じが伝わってきそうですね。
実際の生活では、二十四節気に触れることはあっても七十二候に触れることはほとんどないのではないでしょうか。
昔は、自然と向き合う時間がゆっくりと流れていたんではないでしょうか。
日々の季節の移り変わりを表現した言葉をたくさん持つ日本語は、いったいどれだけの言葉を持っているのでしょうか。
初めて見る言葉でも、なんとなくその意味するところが分かってしまう日本語は、感性を生かすには最適な言語だったと思われます。
和歌と言う芸術表現を磨く舞台を持ち続けた日本語は、現在でもその技術を磨き続けています。
実際の仕事や生活との隔たりが大きくなっていることが、これからどんな影響を及ぼしていくのかしっかりと見ていきたいところです。