2014年11月12日水曜日

ここにもあった、文字の芸術

日本語は漢字という表意文字を持つことによって、文字そのものを書くことが芸術の領域にまで高められていることは、前にも触れたことがあります。

現存する世界の文字のなかで、漢字が唯一の表意文字だと言われていますので、文字自体に意味があります。

したがって、その文字をより追及することによって、絵画や彫刻などと同じレベルで芸術として認められる領域にまでなっています。


表音文字であるアルファベットには、カリグラフィと呼ばれる文字を美しく見せる手法があります。

写植の印刷字体としてローマンやゴシックとは異なった、カリグラフィとしての字体がありますが、あくまでも文字を美しく見せるための手法であり、絵画や彫刻のような芸術と同レベルの扱いにはなっていないようです。


それに対して、中国や日本における書道では、書体と共に流派によっては独特の書き方も存在しています。

そこには書道としての芸術領域が確立されており、大きな美術展などでは専門分野として扱われてもいます。

表意文字としての特徴を考えても、中国語や日本語のように漢字が使われている言語でないと文字芸術が成り立たないのではないかと思っていました。


ところが、かなり究極の文字芸術に近いものが存在していることを知りました。

しかもそれを継承している人の中に、日本人がいることを知り更なる驚きとなりました。

それがアラビア書道です。


日本書道においては、書家によって文字の書体が違っていたり、比較的自由な書体があったりしていますが、アラビア書道においては基本的には8つの書体が定められており、文字の形は厳格なルールによって決められているそうです。

アラビラ文字は、もともと「コーラン」を書き表すために発達してきたものだと言われています。

神の言葉を美しく書くために、1本の線に磨きをかけながら1000年以上の時間をかけて作り上げてきた物ともされています。


調べて見ると、文字のいろいろな部分の比率が黄金分割になっている事がわかるそうです。

ピカソはアラビア書道について「すでに芸術の最終目標に達し始めている」と言っていたそうです。

西洋美術が追い求めてきた完全な美しさを体現している、黄金比率といった理論に裏付けられ、線そのものが美学的に完成されている物となっているようです。


イスラム書道のコンテストにおいて何度も入選や入賞を果たし、トルコの書家に師事し10年以上をかけて書道印可(イジャーザ)を授与されたのが、本田孝一氏です。

日本でもアラビア書道を学ぶ人のために、日本アラビア書道協会会長となってはいますが、東京外大のアラビア語学科卒業後はアラビア書道に出会うまで10年以上を経過しています。

8種類の書体にはそれぞれ持ち味があるようですが、それぞれの文字については厳格な規定があり、点の位置や線の長さ空間の取り方までもが規定されているようです。

その中で独創性を出そうとすると、8種類ある書体の組み合わせと色や大きさで表現することになります。

文字そのものについては100%ルールを守らなければいけませんが、文字における線の美しさについてはどこまでも追及することが可能です。

アラビア書道における書家たちも、そんな本田氏の作品を否定することなく評価してくれていると言います。


文字自体が芸術の領域にまで昇華している言語は、簡単にはその伝統を崩すことはないと思われます。

厳格に定められた書道における文字としての規範は、文化伝統の継承そのものでもあります。

変わらぬ文字を、変わらぬ形で継承していくことは、決して簡単なことではありません。

その言語を使いながら時代の変化にも対応していかなければならないわけですから、変わらないことの方が難しいはずです。


言語を守る一つの方法として、使用している文字を美術的な要素を持って、芸術の領域にまで高めしまうことはとても有効なことであると思われます。

その領域に至った文字は、たとえ意味が分からなくとも、その美しさについては言語を越えた感動を与えてくれるものだと思われます。

漢字が書かれたTシャツが、意味も分からずにデザインとして人気をがあることも、日本語のためにはとてもいいことではないでしょうか。

自国の文字にその要素があるのに、自分にとって遠いところにある気がするのはとても残念なことです。

もっと、一般的に日常的に書道が生かされる場面があってもいいと思われます。


捜査本部の看板も毛筆で書かれたものに対して思い入れをしてしまうのは、心のどこかにその美しさに対しての感覚が刺激されるものがあるからでしょうか。

筆を持つことが少なくなりました。

意識して、筆を持つ機会を持っていきたいですね。





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