それこそ、言語学の専門家でないが故のしがらみのない自由な切り口をして来たのではないかと思います。
そのなかでも、日本語の最大の弱点と思われるものを取り上げてみると、話し言葉としての表現になるのではないかと思います。
英語との比較でみてみると一番わかりやすいのではないかと思います。
日本語の構文は,SOVの形式となっており、自分の意志が一番表現される動詞の部分が文の最後にきます。
この構文は世界の言語のなかで一番多い構文となっているのですが、先進国の言語における構文の中では少ない方になっています。
先進国の言語における構文の標準形はSVO形式がほとんどであり、日本語と共通文字であるである漢字を使っている中国もSVO構文となっています。
SOV形式とSVO形式の一番の違いは、「何が(誰が)どうした」という文としての骨格が、どの段階でわかるかということになります。
すべての言語がそうだとは言えませんが、SVO形式に比べてSOV形式の言語の方が表現力が豊かであり、形容詞や州諸語をたくさん持っているように思われます。
SVO形式の構文は、結論がすぐに来てしまうために、そのあとの形容詞や修飾語にはあまり注意が払われません。
目的語としてのOに重きが置かれており、文章としての面白さや表現は修飾語よりも動詞が中心になっているようです。
日本語は、典型的なSOV形式の構文ですので、最後のVまでをしっかり確認しないと、伝聞なのか意見なのか事実なのかさっぱりわかりません。
これを逆手にとって、勇ましい内容を話している割には、最後の結論が「・・・ということを聞きました。」や「・・・と思います。」などが出てきてズッコケることがあります。
日本語で一番気をつけなければいけないことは、そこで述べられていることが事実なのか推測なのか希望なのかの判断が、一番最後の動詞までをしっかり聞かないとできないということです。
人の話を最後まで聞けということは日本語については本当に大切な教えとなっているのです。
英語の場合は、早い段階で動詞が出てきますのでその段階で大筋が理解できます。
その後の言葉を確認しないと理解できないのはbe動詞くらいではないでしょうか。
交渉の基本は、起きている事実をお互いに確認することから始まります。
特に会話においては、この事実を確認することが大変難しくなっています。
それが事実なのか推測なのか希望なのかは、話している方も順序立てて整理して話しているわけではありません。
ましてや希望していることに対しては、実現してほしいわけですから、あたかもすでに事実になっているかのように話されることが多くなります。
相手の話の中から、事実を切り分けしなければならないのです。
更には、その事実に対しての評価までもが述べられる場面においては、あたかもその評価自体が事実のように表現されていることが非常に多くなっています。
それは事実なのか、それとも、ある事実に対して相手が行なっている評価なのかは大きな違いなのです。
特に、相手に交渉上の落としどころについて目的がある場合は、事実に対する評価を、そのために都合のいい評価にしている場合が多々あります。
交渉上手は、相手の話や自分たちの持っている情報から、まずは事実を切り分けすることを行います。
そして事実だけを共有することを行います。
これが日本人にはとても苦手です。
普段から、事実も意見も推測もごった混ぜになった会話をしていますので、事実だけを切り出しすることがとても苦手です。
そこでは、相手の言っていることの中から事実を拾い出したり、言葉の行間から事実を見つけたりしなければなりません。
この感覚は、日本語の母語の感覚にはないものです。
自力で身につけなければならないものとなっています。
かなり難しい感覚となっています。
相手との会話の中から事実だけを切り取ることは、かなり難しい行為です。
そのためには、自分で事実を表現することを訓練しておく必要があるのです。
自分はいま、事実を話しているのか、意見を言っているのか、希望を言っているのかを常に意識する必要があるのです。
更には、事実を表現するときにはどんな表現方法をするのがわかりやすいのか、どんな表現になりやすいのかを身を持って経験しておく必要があるのです。
評価を交渉のテーブルにのせて反論をすると喧嘩になってしまいます。
評価は、事実に対してそれぞれの立場で行われた見方にすぎません。
同じ事実に対しても、立場が違えば評価は異なるものになります。
変えられる立場であればいいのですが、その立場は簡単には変えることができません。
その立場に立って、より良い評価にしたいために交渉しているわけですから、そのために事実をどう変化させるかが交渉の中心ごとになってしまいます。
相手は事実と評価が同じレベルになっていることが大変多いです。
話を聞いているとよくわかると思います。
事実に対する話と自分たちの事実に対する評価の話が、同じ次元で区別なく出てきます。
相手に事実を切り分けてくれというのは無理な話です。
こちらが、事実と評価を切り分けて、まずは事実だけを共有することをする必要があるのです。
ほとんどの交渉事は、この段階で対立関係がきわめて緩和されてきます。
少なくとも、事実としては共有できてくるわけですから、合意できる点ができてくることになります。
その時点から、だんだんに対立関係にあった交渉の環境に変化が出てきます。
一方的な要求であったものが、共に何とかしようという雰囲気に変わってくるのです。
日本語は事実を切り分けするには、とても難しい言語です。
それでも、事実を切り分けできた場合のメリットはとても大きなものがあります。
事実だけを表現することを試してみませんか。
かなり役に立つことは間違いないですよ。
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