何人かがアプリについて話してくれました。
聞き手として来ていた人が最後に進行役から呼ばれて壇上に立ちました。
外科医としての仕事の中でも、プレゼンテーションをすることも多いためにプレゼンテーションのテクニックにはかなりこだわってやってきた方でした。
私が感じていることをより過激にすっきりと一言で言い表してくれたので、思わず前のめりになりました。
それは、プレゼンテーションの目的です。
私の中では、プレゼンテーションの目的は、場面においていくつかのものがあると考えていました。
相手の理解してもらうもの、何かを提案するもの、行動を誘発するもの、などです。
さまざまな場面でさまざまなプレゼンをしてきたその方は、「プレゼンの目的は聞いた人を行動に駆り立てること。」の一つだけだと言い切りました。
そのために表現の技術を磨くのだということでまとめられていました。
突然の指名で予定もなく話した人の内容が、一番印象に残りました。
したがって、プレゼンテーションの評価としては、「面白かった。」「格好良かった。」「いいことを聞いた。」「ためになった。」「印象に残った。」などはよくない評価であることになります。
聞き終わった人がその場で、すぐにでも行動を起こすことが目的になります。
その前提として、理解させることはもちろん大切な要素ですが、そのためにだけするプレゼンテーションはあり得ないことになります。
それでは説明会です。
プレゼンテーションは、相手に対してどんな行動を起こさせるのかをしっかりと設定されたものでなけばならないのです。
説明とプレゼンを勘違いしていることが多く見受けられます。
プレゼンに使うソフトやアプリはほとんどがアメリカで作られたものです。
彼らのプレゼンに対する考え方において使いやすいようにできています。
「日本語 vs 英語」で見てきたように、英語で考えられたものは日本人の考え方や受け取り方と大きく違っています。
(参照:日本語 vs 英語)
もともとプレゼンテーションとはアメリカの文化です。
彼らが持っているプレゼンテーションに対するイメージと、私たちが持っていイメージとはかなりの開きがあるものと思われます。
その違いは行動原理にあると思われます。
彼らの行動のための根拠は論理であり個人としての利益です。
日本人の行動のための根拠は感情であり他者への貢献です。
彼らは、行動するときの判断として、好き嫌いよりも論理としての正しさや合理性が感情に優先するのです。
日本人は、人に対しての信頼性や好き嫌いが、論理や合理性よりも優先するのです。
彼らがプレゼンテーションとして人を動かすためには、様々なテクニックを利用して、論理の正しさや個人の利益につながる合理性を訴えるのです。
それが受け入れられれば、彼らはそれを求めて勝手に行動を起こすからです。
日本人も、論理の正しさや合理性については同様に理解することは出来ます。
しかし、それだけでは理解しただけであって、行動に移る確率は彼らよりもはるかに低いのです。
日本人を行動に移すためには、論理の正しさや利益に対する合理性に加えて、感情を動かさなければならないのです。
プレゼンテーションをする人の全人格的な評価が大きな要素を占めるのです。
同じプレゼンテーションをしても、する人によって受ける側の評価が大きく変わるのは、日本人の場合の方が多いのです。
アメリカ人にとっては、誰がやっても論理性と利益に対する合理性が受け入れられれば、結果としての行動にそれほど大きな違いは出ません。
日本人の場合は、誰がやっているかがとても大きな要素となっています。
もともと信頼している人や社会的に信用できる人としての評価がある場合と、初めて見る人の場合では、全く同じ内容で行われたとしても、結果としての行動に結び付く確率は大きく違ってしまうのです。
だから、プロフィールや肩書、経歴や実績などが大きな要素となるのです。
表現されていることのみを判断の材料とする彼らと異なり、表現されたものは判断の一部であり、それよりも表現している人の全人格的な信頼性や社会的な評価を大きな判断の材料としているのです。
このことは、一方では論理や合理性によって誤魔化されにくいことと同時に、表現者によっては内容に関係なく盲目的に信用し行動に移してしまう危険性もあることを示しています。
新興宗教や一握りのカリスマに対して、盲目的な追従をしてしまうことにもつながっていることです。
人に対して何かを働きかける時には、必ず相手に求める行動があります。
具体的にそれを意識して、そこに向かわせるために行うのがプレゼンテーションになるのではないでしょうか。
何かを買ってもらうという行動を求めることもありますが、これでは抽象的すぎて聞き手の具体的な行動を導くことができません。
「ここにある申込みボタンを押してください。」に結び付けることがプレゼンテーションです。
一種の典型を、通販番組に見ることができます。
対象商品に対する興味やニーズは一人ひとり異なりますが、そこにある程度の納得感さえあれば、最後は感情の盛り上げ方で申込みの行動まで持っていきます。
もちろんそこには、希少性や期限の利益やインセンティブなどの要素が盛りだくさん含まれています。
日本人にとっては、商品そのものに決定的な否定する要素がなければ、このような感情を刺激する方法の方が効果が高いことがわかっています。
最終的な行動に移る要素として、論理性や合理性に重きを置く彼らにとっては、最後の行動判断で感情が大きな要素を占める日本人の行動には「?」と感じることが多いようです。
日本人だけを見ていたのでは気がつきにくいことです。
アメリカから来たプレゼンテーションテクニックだけでも、気がつきにくいことです。
感情を動かす言葉をどれだけ持っているか、感情を動かす表現をどれだけできるかが、プレゼンテーションの成否を握っていると言えるのではないでしょうか。
論理性や合理性を訴えるテクニックについては、世の中にあふれています。
彼らにできない、日本語による感情を動かす表現を身につけたいですね。
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