2014年9月17日水曜日

英語を学ぶ意義を考える

英語については機会があるたびにいろいろな観点から触れてきました。
(参照:英語を学ぶことの功罪

母語の習得期間である4歳までに、他の言語に触れさせることの危険性についても述べてきました。
(参照:幼児期言語の選び方


そんな中で、日本語を母語として持つ人が英語を学ぶ意義が大きいことを教えてくれる本を見つけました。

少し前に、文脈文化としての言語分類について触れたエドワード・T・ホールが書いた「沈黙のことば」です。
(参照:ここにも見える日本語の特徴

前にも見てみましたが、ホールは文脈文化について以下のような言語分類をしています。


高文脈文化言語の典型が日本語であり、アジアに多く次いでアラブや南アフリカ、西欧でもイタリア、フランスなどもそうであるとしています。

低文脈文化の言語の国は、ドイツ、北欧、アメリカ、イギリス、オーストラリアであるとしています。

つまり、日本語を母語として持つものが英語を学ぶことは、典型的な高文脈文化の者が低文脈の文化を学ぶことになります。


言語に対する特徴の典型的な両極端を学ぶことになり、世界の文化を知る上ではとても意義のあることにあります。

しかし、言語を学ぶことは精神文化そのものであり、ましてや母語は一つしか身につけることができません。

そのために、完全に母語としての言語を身につけた後でないと、母語そのものがおかしくなる可能性が高いために、早くとも義務教育の後期からとする事が望まれます。


ましてや、日本語は世界においては日本人にしか通用しない完全な孤児となっているため、日本語として発信してもほとんど理解してもらうことは出来ません。

反対に、英語は世界における共通語となっており、ほとんどの国際機関で公用語となっています。

世界と接するためには、英語が必須となってくることになります。


ただし、文脈文化の比較でみるように、日本語で行われる会話をそのまま英語に直訳しても、理解してもらうことは不可能です。

世界の前では、日本語は母語話者の感覚で使用してしまうと、言葉が足りないものとなってしまい不親切極まりない表現となってしまうのです。


英語は言葉ですべてを伝えようとする言語です。

日本語の内容を英語で表現しようとすると、どうしても日本語よりも丁寧に詳しく論理的に説明する必要があります。

結果として、日本語よりもずっと長いものになってしまいます。


つまりは英語を身につけたとしても、日本語の感覚で英語を使ったら何にもならないと言うことです。

英語には英語の文脈文化としての背景があり、それに沿った使い方をしないと「?」となってしまうのです。


英語を学ぶことの意義は、ここまでのことを理解して初めて存在します。

そのことが理解できれば、より多くの表現を持つ日本語は、英語の持つ文脈文化に合わせた表現を日本語ですることが可能になるのです。

直訳をしても英語として文化的に通用する文章を日本語で作ることができるのです。


英語を学ぶ意義は、文脈文化について日本語との比較を学んでこそあるものと言えます。

日本語の置き換の言葉をいくら覚えたところで、伝わる英語とはならないのはそのためです。

私たちはもともと、「阿吽の呼吸」や「空気を読む」、「以心伝心」など言葉が少ないことを尊ぶ日本語の文脈文化を持っています。

英語でのコミュニケーションにおいては、そのこと自体を変える必要があるのです。


典型的な両極端の文脈文化に相当する言語を理解することは、理屈の上ではすべての文脈文化をカバーすることになります。

受取る側の時には、高文脈文化のスタンスで受け取ることで相手の言語外のニュアンスを感じることができます。

発信するときには、低文脈文化のスタンスで、すべて言葉で伝えきることを前提に対応すれことによって、相手の理解を高めることができます。


低文脈文化における伝達方法は、口頭言語しかないと考えて対応することが一番です。

言葉として表現されていること以外は、一切伝わらないものだと考えることが大切になります。

そのための表現を磨くことが必要になります。


思考をすることは母語で行うことが一番適した道具の使用方法となります。
(参照:思考するための最高の言語:日本語

したがって私たちは、英語の表現を磨く場合でも日本語で考えることになります。

この行為が、脳を刺激すると同時に英語文化についての理解を深めることになります。


英語を学ぶ意義は、文脈文化について理解することがあって初めて存在します。

文脈文化の理解をなくして、コミュニケーションのツールとしての言語を学んでも理解してもらえるものにはならないと言うことですね。

ここまで、教えてくれる言語教育はなかなかお目に掛かれないようです。

英語を習っても、なかなか通用する物にならないのはこのような理由があるのでしょうね。




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