2014年5月3日土曜日

Yes と No の間にあるもの

日本語の特徴としてよく取り上げられることに、表現の曖昧さがあります。

曖昧という表現自体が決してポジティブなイメージを持っていませんので、日本語の特徴として指摘される場合よりも、他の言語(とくに英語)と比べた時の欠点として指摘されることが多いと思われます。

私自身としては、日本語は決して曖昧な表現しか持っていない言語ではないと感じていますし、むしろ他のどんな言語よりも豊かな表現を持った言語だと確信しています。

では、そのような日本語がなぜ曖昧なものとして指摘されるのでしょうか。


いくつかの理由が考えられますが、一番大きなものは日本語の前提となる日本の精神文化が他者との対比における自己の位置付けをどう考えているかだと思っています。

二元論に基づくクリティカルシンキングをベースとするアルファベットの文化においては、彼我の対象においての違いを明確にすることによって自己の存在を主張することが基本にあります。

一方、協調や同化をベースとするひらがな文化の日本においては、違いを明確にすることよりも同調性が基本にあり対比による差異の強調を嫌う傾向があります。

言語は文化の現れそのものですので、言語による表現では文化そのものが反映されてくることになります。


Yes か No かを明確に表明して自身の立場をはっきりさせたうえで自己主張を展開する彼らの表現は、常に「I」(わたし)が念頭にあります。

彼我の関係において自身の立ち位置を明確にして主張することで、自身の存在価値を知らしめることを目的としています。

賛成・反対を中心とした、自身の主張の正しさを知らしめるための表現を展開していくことになります。

Yes/No や賛成/反対 といった自己の立ち位置を明確にすることによって自己主張の場が確保できることになるために、どうしてもどちらかの結論を持つことが常に求められます。

ほとんどの場面において二者択一的な選択が基本になってきます。


日本的な感覚でいきますと、明確なYes/No や賛成/反対 は精神文化になじみません。

同調性が重視され、その中での振れ幅での大きさが焦点となります。

完全なるYes/No や賛成/反対 は存在しません。

すべてがYes と No の中間に位置するのです。

二元論にはならずに、裁量に大きく委ねられることになります。


同調性が重視されますので、個人の主張よりは全体最適が重視されます。

「一を聞いて十を知る」や「以心伝心」、「目は口ほどにものをいう」などの口頭言語以外での表現も必要になってきます。


そこは、表現するのに一番難しい領域になります。

そのためには言語以外にも巨大な表現力を持たなければなりませんが、言語においても豊富な表現力が必要になってきます。

同じような内容を表す言葉であっても微妙なニュアンスの違いが生じてきます。

微妙な表現の中での落としどころについては、暗黙の了解に基づく信頼が基盤になってきます。

また、一人ずつのニュアンスが微妙に異なるが故の、ある程度の許容の範囲が信頼性となってきます。



Yes/No や賛成/反対 の表現は、0/1としてシステムにはなじみやすいものです。

それに比べると、その中間にある領域は無限の広がりを持つことになります。

すべての言語においても、この中間領域を表現できるものを持っていますが日本語ほど豊かにこの領域を表現できる言語はありません。

また、表現力があまりにも豊かなために両端を表現する方法を使い慣れていないこともあります。

精神文化的に両端の表現を嫌う傾向があります。


海外文化と触れることが増えてくると、両端の表現が必要な場面も出てきます。

その時に相手の持っている言語文化に合わせてスパッと使える準備さえできていれば問題ありません。

外国語を学ぶ必要性は、この一点においてのみあると思われます。


日本語の表現力の豊富さは、他のすべての言語に対して正確で一番翻訳しやすい日本語表現で渡してあげることができるものです。

こんな言語は世界中探しても日本語しかありません。


Yes と No の中間領域にあるものを表現できる言語を使っている私たちは、そのことが当たり前になっています。

ですから、Yes/No や賛成/反対 の極論に出会うと、自然と拒否反応を示してしまうのです。

世の中のことのほとんどは、中間領域で起きていることです。

それをそのまま中間領域として表現できる言語を持っている私たちは、もっと中間領域について表現しなければいけないのかもしれないですね。

決して、曖昧さではないと思います。

そこには豊かさがあるのではないでしょうか。



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