それは、お母さんの言葉が子どもに伝承されていくからです。
何かの特殊な事情でお母さんが赤ちゃんと接することができない場合を除けば、赤ちゃんの一番身近にいるのがお母さんです。
そして、赤ちゃんは生まれた時から本能的にお母さんを区別できる力があります。
さらに赤ちゃんはお母さんの鼓動や言葉を五感で感じており、心穏やかな状態の時の鼓動や言葉を感じているときが一番安心できる環境にあるようです。
赤ちゃんが幼児期にかけて身につける母語は、将来に向けた言語の基礎になるものであり二度と書き換えのできないものとなっています。
そしてこの母語によって、脳を代表とする人の知的器官の機能が決められていきます。
母語を使うのに最適な機能が発達し、不要な機能は退化していくのです。
声は知的活動のための大切な機能です。
英語を母語とする場合には、声帯はLとRが区別できるように発達していき、子音の発音がしやすいように発達していきます。
その段階で日本語のような完全母音言語を発声するのに必要な機能は退化していくのです。
母音言語はほぼ完全に声帯によって発せられる音ですので、声帯がそのための機能を持っていなければ発することができない音です。
日本語やポリネシア語以外の言語はほとんどが子音言語であり、その言語を母語とする人の声帯は子音を発しやすい機能となっていきます。
子音は声帯を使う機能が母音に比べると圧倒的に少なくなっています。
子音は口腔を吹き出す息を使って音を作ることが基本となっているために、ほとんど声帯の機能を使っていません。
母語としている言語が持っている音の種類と基本の音の数によって声帯の機能が異なってくると言われています。
日本語の基本音は47音です。
濁音半濁音を含めても71音となっています。
すべての言葉の音は基本音の組み合わせであり、特殊な音は存在しません。
世界の言語の中ではとびぬけて音数の少ない言語となっています。
英語の基本音は母音だけで30音近くあり、アルファベットの単音読みだけで26音、それ以外の音だけでも有に100以上は数えられています。
実際に使われている音数は300以上あると言われています。
日本語を母語とする者にとっては、英語の音は話せなく当然なのです。
どんなに似た音を発することができたとしても、やはり英語を母語とする者との違いは明らかとなってしまいます。
これらの違いがすべて母語の違いから生じてくるのです。
母語は母親から子供に引き継がれる伝承言語です。
母親の持っている・使っている言語以上のものは伝承できません。
母親が日本語を母語としているのであれば、無理やり他の言語にしない限りは子どもの母語は日本語となります。
母親が日本語を母語としていても、子どもの母語を英語にすることはできます。
ただし、母語の習得期間は母親と子供との接触を極力避けなければいけません。
そうしておいて、子どもを日々英語が話されている環境の中で育てる必要があります。
お母さんの「ことば」は子どもに伝承されていきます。
そしてその「ことば」は母語として生涯その子の基礎言語となっていくのです。
そのお母さんの「ことば」もまた、そのお母さんからの伝承言語によって支えられているものです。
母語としてお母さんから伝承された「ことば」の上に、その後の経験によって身につけてきた言葉によって日常言語となったものです。
伝承言語とはいえ、自らの経験によって加えられたものを含んでいますので、全く同じ言語を継承しているわけではありません。
反対に、すべてのお母さんはすべて固有の言語を持っていると言ったほうが適切でしょう。
したがって、伝承された言語も同じ日本語とはいえすべての人に固有のものとなっています。
双子の赤ちゃんであっても、お母さんとそれぞれの赤ちゃんとの接触関係は微妙に異なるため、母語も異なっていくことになります。
言語の乱れは使っている世代だけでなく、母親を経由して次の世代へと受け継がれることになります。
情報伝達のためのツールとしての言語であるならば、どんなに乱れたとしても伝わりさえすれば十分その役割を果たします。
しかし、文字のない時代からの言葉を継承する日本語は、その言語感覚においてとても貴重なものとなっています。
世界でも注もされているこの貴重な言語を何とか原感覚を保って継承していきたいですね。