2014年3月31日月曜日

訓読み漢字のチカラ

入社式の季節になってきました。

今年は、桜がほぼ満開の状態で迎えてくれる、めでたい絵をたくさん見ることができそうですね。

入社式も、社会人生活もすべて挨拶から始まるのではないでしょうか。


この挨拶という言葉は「あいさつ」と読めるようになったのはいつからだったか忘れてしまいました。

挨拶の2文字が常用漢字として登録されたのは最近(2010年)のことですね。

私の学生時代には習っていない漢字です。


使う場面によっては「あいさつ」とひらがなで書いた方がふさわしい場面と、「挨拶」と漢字で書いた方がふさわしい場面がありますね。

挨拶の音読みが「あいさつ」ですので、漢語として入ってきた音が定着してひらがなで書いても違和感ないところまで日常化してきたと思われます。


漢字は表意文字として文字そのものが意味を表していますので、話すよりも書き表した方が意味が鮮明に伝わります。

現代世界で使用されている文字のなかで表意文字は漢字だけだと言われています。

漢字を使用している言語話者は12億人強と言われており、アルファベットを使用している言語の次に多くの人が使っている文字となっています。


その中でも独特の使い方をしているのが日本語です。

漢字と漢字から作った仮名を組み合わせて使っています。

仮名は文字のなかった時代の話す言葉(古代やまとことば)を表記するために、漢字を利用して作られた日本独自の文字です。

文字そのものはその音を表す記号としての意味しかありませんので、ことばとしての意味を表すことはできません。

アルファベットを初めとする他の言語の文字と同じように表音文字となっています。

他の言語と比較対象をする場合は、日本語の代表として「ひらがな」だけを取り上げたほうが対象としては相応しいのではないでしょうか。


漢字の使用法は、漢語としての使用法をそのまま継承した音読みと、日本独自の使用法として生み出された訓読みがあります。

訓読みは仮名と組み合わされることによって成立する使用方法であり、仮名と同様に日本独自のものです。


挨拶を一文字ずつ訓読みにすると、その意味するところがさらに鮮明になります。

挨は「ひらく」となり、拶は「せまる」となるそうです。

意味としては挨は軽く「押す、迫る、開く」となり、拶はそれよりも重い感じで「押す、迫る、開く」となっているようです。

挨拶そのものの意味するところがよくわかるような気がしますね。



訓読みは、古代やまとことばを仮名で表現した時に、その意味するところをより鮮明にするために充てられた漢字の読み方です。

読み方である音が先にあって、その言葉にふさわしい意味を持った漢字を訓読みとしてあてたものです。

したがって、仮名で書いた時には抽象的だった内容が、漢字の訓読みを使って書かれたときにはより具体的な意味を持ったものとして受け取ることができます。

言葉によっては、同じ訓読みでも多くの漢字が充てられている言葉があります。


例えば「かく」という動作を表す言葉に充てられている訓読み漢字を挙げてみます。

「書く」、「描く」、「画く」、「掻く」、「欠く」などがあります。

「かく」は基本的な動作を表す言葉であり、文字のない時代より続いている言葉と思われます。

現代の訓読みとしての「かく」を用いている漢字から、昔の「かく」の使われ方を想像することができます。

それが本来の「かく」の持ってい意味であることが分かると思います。


漢字は、表意文字ですから自分で文字を書くことによってさらに理解が深まるものです。

漢字を含む文章を書くことは、文字を確認することだけでなく、理解することにも大変な効果があることがわかっています。

印刷のない時代には、大事な書物は書き写すことによって継承されていきました。

一冊書き写してしまえば、ほとんどのことが理解されていますので説明の必要がないわけですね。

独学の最良の方法が書き写すことであったことは理解しやすい道理です。


これは漢字が表意文字であるから、できることです。

漢字以外の文字を使っている言語では、文字や文章を書くことは表現するための手段であり、理解のための手段としては思われていません。

あまり効果がないことは簡単に想像できますね。



私たちも文字を書くことが圧倒的になくなってきました。

現実には、文字を書いているのではなくキーボードをたたいていることがその代りになってしまっています。

どんな入力方法を採ったとしても、手書き入力以外では直接文字を書くことはありません。

言葉や文字は作っていますが、手で書いているわけではありません。

効果としては手で書いているよりもはるかに低いことはわかると思います。


キーボードを打ちながらでも日本語の理解を深めるいい方歩があります。

まずは、書くものについては誰が読んでもわかりやすい文章とするために、なるべく音読み漢字の熟語を使わないようにすることです。

訓読み漢字とひらがなを中心に使うことを意識します。

それでも音読み漢字が出てきますので、その時にはカッコ書きでもいいので訓読み漢字やひらがなへの意味の置き換えを行なうことです。

すると、ほとんどの表現が訓読み漢字になります。


これがキーボードを使った日本語のスキルアップ法です。

訓読み漢字を表記させるためには、ひらがな表記をして漢字変換しなければいけません。

候補となる同じ読みを持った漢字を一覧で見ることができます。

ここですぐに目当てとなる漢字を選んでしまわないで、見渡してみることです。

それによって、もともとその言葉が持っていたニュアンスを理解することができます。



音読み漢字ではできません、意味の違う候補がたくさん出てきてしまいますので見渡しても同音異義語さがしくらいしか役に立ちません。

訓読み漢字で候補を選ぶときに、自分の意図することを表すのにはどの漢字がふさわしいのか選ぶことと同時に、全体を見てみることはとても役に立ちます。

「かく」を使う時に、自分の意図するところは「書く」、「描く」、「画く」、「掻く」、「欠く」のどれなのかは理解してもらううえではとても大きな要素になります。


キーボードを打つことによって、漢字がわからなくひらがなで書くことが激減しています。

特に訓読み漢字については、うまく使えると日本語としてとても品のあるものになります。

ひらがなと訓読み漢字の組み合わせでの表現を練習してみませんか。

誰にでもわかりやすいものとなっているはずです。


このひらがな+訓読み漢字での表現を「現代やまとことば」と呼んでいます。

複雑で大きくなりすぎた日本語における共通表現として提唱していますが、一度使ってみてください。

話し言葉として、人に説明するときにもきっと役に立つと思いますよ。