2014年3月23日日曜日

反転学習と言語

反転学習の広がりが急となっています。

教室での先生による講義を中心とした学習形態から、基本の理解は様々なIT環境を用いて自宅で行いその確認を教室で行なうという形態への変化が進んでいます。

日本における公教育での反転学習の試みは、2012年に宮城県の富谷町立東向陽台小学校で東北学院大学との共同での研究授業が始めだと言われています。

その後は、私立の高等学校や予備校を中心として広がりを見せています。



主には、先生が作った基本講義コンテンツを動画の形でそれぞれの環境で受講し、教室では個別の進捗に応じたフォローや確認を実施していく内容となっています。

コンテンツを見るための端末もそれぞれ個性が見られ、iPadなどの情報端末の支給やそこへのアクセス解析を利用した個人別の取り組み状況を把握することができていたりするようです。

講師の側の技術も変化せざるを得ず、コーチング的な要素が求められるようになっているようです。


米国では1990年代より試験的に取り組まれてきました。

2004年にサルマン・カーンが年下の従妹のために授業をビデオに撮って見せたものが始まりとなった、カーン・アカデミーのコンテンツは無料で公開されており、反転学習を導入している教育者たちに利用されています。

理解できなかったことやわかりにくかったことを、自分の理解度に合わせて何度でも繰り返して見ることができると同時に、わかっているところについては飛ばして見ることができると考えたのはカーンの従妹でした。



教室では講義は行われずに、教師は生徒の理解に合わせた課題を与えたり、生徒同士の協業のサポートしたりすることで個人の生徒とより深くかかわっていくことが可能となっています。

反転学習が効果を上げる基礎としては、使用されている言語についての理解が大前提になります。

教科によって使われている言葉やニュアンス(語感)が異なりますので、コンテンツの作り方が重要な要素になります。

教室の限られた時間での講義ではできなかった、最もわかりやすい説明方法を採っていかなければならないと思われます。

わかる生徒はどんどん飛ばしていける構成にしていかなければいけません。


教科による言語ニュアンスの違いは思ったよりも大きなものがあります。

日本語においては、反転学習は高校生ぐらいから限られた教科で行われることが自然だと言えるでしょう。

学習言語としての「国語」で使用されている語感は、日常的に使われてる語感に一番近いものです。

一番遠いところにあるものが、音楽や美術の芸術的なものではないでしょうか。


教科のなかでは算数・理科が「国語」の語感と遠いところにあります。

算数は小学校の1年生から授業として取り組んできますが、専門性が少し顔を出し始める3・4年生になると理解できない子が出てきます。

これは、理解できないのではなく、日常的な言語である「国語」と語感が異なるために受け入れする時点で戸惑いが発生しているからです。

算数の論理(話の進め方)や証明方法には、日常言語の使い方とは異なった独特のものがあります。

これに慣れないと、算数の教科書に書かれている言葉の使い方(語感)が受け入れにくくなってしまいます。



理科についても同じようなことが言えます。

事象を客観的に見て因果関係を説明することは、日常的な「国語」表現ではなかなか使わないことです。

専門的な用語や表現もたくさん出てきます。


算数や理科で習得が遅れた子供に対して、算数や理科を教えても効果がないことがわかっています。

「国語」をもう一度習得しなおすことが一番効果的なこともわかっています。

教科書は「国語」で書かれていますので、算数や理科の教科書の表現に慣れることが先なのですね。

同じ「国語」であっても、国語の教科書の「国語」と算数の教科書の「国語」では語感が異なるのです。


慣れていない語感については、内容を理解する前に語感に慣れる必要があります。

語感とは、漢字とひらがなのバランスであったり、表現の仕方であったり、主語と述語・修飾語の位置関係であったりします。

細かく見ていくと、すべての教科の教科書で語感が異なることになります。


基本となっている学習言語が「国語」です、日常言語に一番近い言語ともいえます。

「国語」の語感と遠いところにあるものが算数と理科ではないでしょうか。


高校生になるころには、ほとんどの教科についての語感に慣れていると思われます。

したがって、高校生以上になれば反転学習のメディアとしての動画も有効になってくると思われます。

その場で、相手の理解の確認ができない動画においてはイメージとしての画像よりも音声の方が大きな伝達手段となります。

反転学習の成否は言語表現にかかっているのではないでしょうか。