2014年3月1日土曜日

見せる文字、読み上げる文字

日本語の基本的な表現方法は漢字とかなの混用です。

これは文章や文字として書いてあるものは勿論ですが、話し言葉においても同じことです。

しかし、日本語の発音はひらがなの音しかありませんので、漢字であろうとカタカナであろうと話し言葉として発したときはすべて「ひらがな」として聞こえることになります。

「ひらがな」の基本音(清音)は46音です、濁音・半濁音を入れても71音しかありません。

他の言語に比べると持っている音の数がかなり少なくなっています。

その割には、持っている言葉が非常にたくさんありますので、同じ音や近い音の言葉がたくさん存在します。


コミュニケーションの中心的な手段は話し言葉になります。

特に相手にしっかりと伝えようとするときには、リアルタイムで相互のコミュニケーションをとりながらの話が中心となります。

話し言葉として伝えているときに、発信側は漢字で理解しているものを読んで発信していることになります。

その瞬間に相手も同じ漢字を頭に描いているものと考えてしまいます。


受け取る側は「ひらがな」で受け取っています。

受け取った「ひらがな」を漢字に置き換えようとします。
同音の漢字がたくさんありますので、音だけですぐに漢字に起きられるものばかりではありません。

その場合は前後の言葉を手掛かりとして、適切な漢字を探すことになります。


話している方からは、間断なく「ひらがな」が飛んできます。

瞬間で漢字に置き換えていかないと、次に飛んでくる「ひらがな」を受取り損ないます。

いったん、受取り損ないますとそこに穴が開きますので、理解の欠如が起きます。

このようなことが何回かおきると、理解の欠如があちこちで起きます。


欠如だけでは済まないことも起きてきます。

同音異義語がたくさんありますので、欠如ではなく違う漢字に置き換わっている可能性もあります。

こうなりますと、理解の欠如ではなくて誤解が生じることになります。

一方的な会話だけのコミュニケーションにおいては、発信側からはこの誤解を確認する術がありませんので、発信時に誤解をされないように注意を払う必要があります。


漢字とかなの混用における特徴は、漢字と仮名の持っている特徴が異なることです。

漢字は、現代世界で残っている日常使用文字のなかで唯一の表意文字です。
言葉で聞くよりも文字で見た方が意味を表しているものです。

かなは、世界の他のほとんどの文字と同じように表音文字です。
文字そのものに意味はありません、ことばとして発音するするときの音を表した文字となっています。

したがって、漢字は文字にして見せたほうが、かなは話して聞かせたほうが理解しやすいことになります。

特に、漢字は音にしてしまうと、音読みでも訓読みでも「ひらがな」として聞こえます。

さらに、音読みについては、音そのものにもことばとしての意味がありませんので、その音を手掛かりに漢字を想像する行為が必要になります。


私たちが普段行なっている言語伝達手段で、一番多いのが話し言葉です。

漢字以外の文字は、話し言葉としての使用法を前提としてできていますので理解しやすいのですが、漢字だけは文字として見ることによって理解しやすくできています。

表意文字としての漢字を使う言語においては、文字として見せるという補助活動がより正確な理解につながることになります。


それでも話し言葉だけで伝える場合は、音読み漢字をできるだけ訓読み漢字に置き換えることが大切になります。

訓読み漢字は、もともと「やまとことば」として話し言葉があったものに漢字を当てはめたものですから、音にもしっかり意味があります。

音読みは、文字として意味を持つ漢字に音記号としての読み方を付けたものですので、音としては意味のあることばになりません。
その音から漢字が想像できて、初めて意味をなすものになります。

同じ漢字を使っても、訓読みであれば文字を示さなくとも話し言葉だけで理解ができるものとなっています。
そのうえに、文字を示すことができればさらに理解を正確なものとすることげできることになります。


では、話しているときに文字を示せる環境にあるときは、音読み漢字をどんどん使っても理解は正確にしていけるのでしょうか?

話しながら、使っている音読み漢字をすべて文字として示しながら進めていくことはなかなか難しいことです。

もちろん、文字を示すに越したことはありませんが、音読みの音自体が意味のない音ですので、決して耳に心地よい響きとはなっていません。

音としての響きと、音からそのまま意味が取れることが相まって心地よさにつながる訓読みに対して、音読みは理解に至るまでの行程が長いので自然と伝わりにくくなっています。


文字として示せるは場合においても、一番いい方法は、音読み漢字(熟語)を文字として見せながら、話し言葉では訓読みとして伝えることです。

例えば、私は文字で示せるときは「精確」とい書き方をよくします。

「正確」とは読み方(音読み)は全く一緒ですね。

「精確に表現してください。」という使い方をよくしています。

そして、正しく確実に表現する必要はないと言います。
正しいかどうかなんて表現する本人にはわからないからです。

その代り「精確」を示しながら「できるだけ詳しく、そのままに」と付け加えるようにしています。


なるべく多くの言葉でこれをやりたいと思っていますが、意外と難しいです。

よく意味を把握しないで使っている音読み熟語がいかにたくさんあるかを思い知らされます。

ということは、同じ漢字を見ても人によって違う理解をしていることもたくさんあるのではないかと思っています。


訓読み表現に置き換えて見ることは、思っている以上に自分で使える言葉の確認ができます。

ひらがなと訓読み漢字での表現を「現代やまとことば」と呼んでいます。

無限とも言ってよい表現方法と語彙を持つとてつもなく大きな言語である日本語にとっての、共通語として「現代やまとことば」が機能してくれるのではないでしょうか。

ひらがなと訓読み漢字での表現は、日本語を身につけている人であれば誰もが共通して理解できるものだと思います。

是非とも使ってみてください。