2014年2月14日金曜日

言語技術の基本は?

先回は日本の学校教育では言語技術を身につける機会がほとんどないことを見てきました。

日本語は身につけるのに大変時間のかかる言語ですので、学校教育では基本言語を習得するのが精一杯で言語技術まで手が回らないのです。

また、学校の延長のような教育界の組織の中では、言語技術の必要性に気が付くことも少ないのでしょう。

しっかりとした階層分化・機能分化がなされた大きな規模の組織においては、それぞれの部署に所属している個人にとっての環境は学校の教室とあまり変わらないことになります。

クラスや学年はいくつかありますが、クラスを越えた交流はめったにありません。
立場の違う者は、教師や学年主任、教頭や校長といった程度です。

中学、高校、大学と規模は大きくなったとしても、呼び名が変わる程度で基本的な違いはありません。

クラスや学年を越えての活動の場は、ゼミや専門課程あるいはクラブ活動や生徒会程度ではないでしょうか。





学校という枠の中ですら、実際に会話をする人間はごく限られた者しかおりません。

社会に出ても組織が大きくなればなるほど、同年代や同期入社が多ければ多いほど、学校のクラスという環境ときわめて近い環境が部門の環境となっています。

学生たちが就職したい先が、大企業や公務員といった組織の枠がしっかりした分業型に偏るのは、彼らの本能なのかもしれませんね。


中小企業になるとそうはいきません。

年代層もまばらで人数も少なくなります。
一人でいろいろなことをやらなければいけないので、部門を越えた会話が多くなります。

立場やポジションを越えた会話も多くなるために、様々な会話の技術を身につけなければいけません。

問い合わせひとつするのにも、相手の部署やポジションによって話し方や使う言葉が変わってきます。

同じ業界の会社であっても、直属の上司と同僚との会話に終始している大企業の環境とは全く違った能力が求められます。


うまく適応できる場合はいいのですが、学校の成績や入社試験では言語技術を見ることはほとんどできないので、事前に気が付くことは不可能に近いでしょう。

また、入社後の「うつ病」「新型うつ病」の原因のほとんどが、コミュニケーションの不足によるものだと言われていますが、その根っこにあるのがこの言語技術の能力不足によるものであろうことは意外と知られていないことです。






言語技術の基本は「聞くこと・話すこと」です。

誰でもが当たり前のようにできると思っていることですね。

コミュニケーションがうまく取れないと社会で人とかかわって生きていくことができません。
人として生きていきための一番基礎になる技術が言語技術です。

その技術の最も基本は相手の言っていることを理解すること、「聞くこと」です。


やまとことばで「きく」という言葉を漢字に置き換えてみると、5つの漢字が現れます。

この5つの漢字が「きく」という活動を表していると思います。

この5つの「きく」によって、相手のことを理解することができます。


世代や立場を越えての会話になると、敬語と言う感覚が必要になってきます。

日本語の中でも使いこなすのが厄介なものです。

しかし、小さな時より、多くの年長者や祖父母などと一緒に生活していた者にとっては、何の造作もないことのようです。
自然と身に付いているのですね。

広場で野球をやっていて、庭に飛び込んだボールを取らせてもらいに行くときなどの会話ですね。






一昔前までは、いい学校からいい会社に入れば定年まで保証されており、それなりの退職金を持って退社して悠々自適に死んでいけました。

今では、いい会社に入っても定年まで勤めることが希になっています。
さらに、悠々自適に暮らせるほどの退職金は出ません。

退職後も何らかの経済的な収入を確保しなければ、年金だけではやっていけません。
会社を離れた後も、社会としっかり関わり合っていかないと生きていけません。

大きな企業に勤めてそれなりのポジションにいた人が、早期退職で社会に放り出されたときに、うまく溶け込めずに苦労しています。
個人としての会話ができないのです。
「きく」ことができないのです。


5つの「きく」をご紹介します。

聞く、聴く、効く、利く、訊く、です。

最後の訊くが入っていることから、一部の「話すこと」が含まれていることもわかるのではないでしょうか。

「きく」ことができないと、どんなに話をしても聞いてもらえません、理解してもらえません。

それぞれの「きく」については「きくこと」についてを見てください。 
簡単ではありますが、5つの「きく」の意味することに触れています。
(参照:「きくこと」について

世の中で起きている問題のほとんどが、「きき」間違いが原因であることを考えると、改めて「きく」ことの技術の大切さを考えさせられます。

「きくこと」の技術をしっかり磨いておかないと、苦しい生活が待っていますね。