日本語の対応力の高さを感じることが語感によってできます。
語感が一番よく表れるのは話し言葉よりも書き言葉です。
法律の条文の表現から幼児向けの絵本まで、そこに使われている語感は目的に応じて様々なものがあります。
個人レベルでの語感もありますので、実際に表現される語感は無限にあると言ってもいいと思います。
一番初めに語感が表れるのは、母語が身に付く4歳頃です。
このころの語感は母親から継承された母語が持っている感覚によって形づくられていると思われます。
母語はきわめて個人的な言語です。
母親の持っている個人的な言語感覚が母語として伝承されていきます。
その後に学習言語として小学校から習得する国語によって、さまざまな語感に触れることになります。
一番身近にある語感は、学校の教科書です。
一年生の時から教科としてあるのは、国語、算数、生活、音楽、体育、図工などですが、ほぼ毎日触れるものとして国語と算数があります。
算数の教科書の文章は、一般的な語感と比べると独特のものがあります。
低学年においては特に国語による学習言語の習得の程度に合わせるために、独特の表現は抑えられています。
中学年になると、専門的な表現が増えてきて算数における独特の語感が増えてきます。
このころになると、社会科や理科も教科として加わってきます。
国語においても教科書で扱われる語感が増えてきます。
小学校で算数が苦手になった子は、算数ではなく国語をきちんとやり直すと苦手でなくなくなると言われます。
これは、算数独特の語感に馴染めず、理解しにくくなっていることを解消しようとする方法で、理にかなっています。
すべての教科書の文章は国語科の進度に合わせて表記されていますので、学習言語としての習得がほぼ出来上がる中学年(10歳前後)以降は、一段とそれぞれの教科別の独特の語感としての表現が増えてきます。
この時に算数、理科といった通常の会話とは異なった特徴的な語感で表現された教科が苦手になる子が出てくるのです。
小学校で身につける学習言語はきわめて標準的な画一的な語感となりますので、個人としての語感はもともと持っている母語や家庭において身についていることになります。
やがて読書が推奨されて、中学年以降は大量の読書をするようになります。
学年別の推薦図書や読書感想文などもありますが、個人的に馴染み易い語感が現れてくると思われます。
学校で教わるのは教科ごとの統一的な語感です。
個人的な語感は読書や学校外の環境で身につけます。
学校における授業以外の会話でも、個人の語感がぶつかり合うことになります。
その後は教科が増えたり、専門分野を選択したりしながら様々な語感に触れていくことになります。
専門性を追求する環境においては、特徴的な語感の中での生活の時間が増えていくことによって日々の個人の語感にも影響を与えていきます。
語感は後天的に環境において影響してきますので、専門性の高い職場で活動して仕事外の付き合いの少ない人は職場での語感が個人の語感となっていきます。
語感は具体的には表記される文字に表れます。
漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字の使い方に表れます。
同じことについて、裁判所の判事、化学研究所の研究員、役所の記録係、幼稚園の先生に書いてもらうとよくわかると思います。
相手にしっかりと理解してもある必要がある時は、相手の得意な語感を知っておく必要があります。
相手の得意な語感に合わせて表現することが大切になります。
これは、話し言葉も書き言葉も同じですね。
相手の得意な語感がわからなかったり、大勢の人を相手にする場合にはどうしたらいいでしょうか。
共通語感である学習言語の初期に戻って表現することが一番理解を得やすいようです。
ひらがなを基本として分り易い漢字を使うことですね。
ひらがなと漢字の訓読みによる表現を「現代やまとことば」と呼んでいます。
話し言葉にした場合には漢字の訓読みはすべてひらがなとして聞こえますので、頭の中で漢字への置き換えが行われずに理解できます。
音読み漢字の場合は音だけで理解するためには、慣れ親しんだ漢字でないと難しくなります。
また、同音漢字がたくさんありますので前後を考えて漢字を思い浮かべなければならなくなります。
文字にした場合は、訓読み漢字は音から理解できる内容よりもより具体的な内容を伝えることができます。
漢字の表意文字としての特徴が発揮されます。
また、ひらがなだけで表記されるとかえって読みにくくなりますので、適度に訓読み漢字が入ってくると分も読み易くなります。
「現代やまとことば」についてはほかでも触れていますので、見てみてください。
(参照:共通言語としての「現代やまとことば」)