2013年12月30日月曜日

2013年に思う(5)・・・幼児期健忘

「母語」、「言語教育」に触れてきたときに、幼児期の言語習得がいかに大切かに気付かされました。

幼児期は言語習得というよりも「母語」を通じての言語感覚の習得になっているんですね。
脳が一番発達する時期が2歳~4歳ですが、この時期に何をしたらいいのかが、とても大切であることがわかってきました。

この時期に身に付けた感覚が、その後の人生の基本になることがわかってきました。

ところがこの時期に記憶したことのほとんどは、物心つくころにはすべて消えてリセットされてしまいます。
幼児期の記憶はほとんど残りません。
このことを幼児期健忘と言います。



幼児期の記憶が残っていないことは、かなり昔からわかっていました。
そのメカニズムが少しずつ明らかになってきていますが、いまだにわからないことがたくさんあります。

幼児期健忘という現象があることを前提に幼児期に何を身につけることが一番いのかを考えなければいけないと思います。

ほとんどの幼児期英才教育は、この幼児期健忘のおかげで、ほとんど意味のないものとなります。

幼児期にどんなことを覚えこませて記憶させても、ほとんど残りません。

それでも、幼児期に身につけた感覚はその後の基礎になっていることは間違いないようです。
小学校以降の全国的に統一された国語教育の中でも、幼児期に身に付けた言語感覚が個性として残っていくからです。



「母語」として身につけた幼児期専用の言語は、言語として記憶したものについては小学校に入って使わなくなると消えていきます。

しかし、
「母語」を通して身につけた母親から伝えられた日本語としての言語感覚は、脳の発達と共に感覚として身に付いていくものだと思われます。

言葉としては残りませんので、つい気にしなくなってしまいますが、人として生きて生きた目の一番基本的なものかもしれませんね。


幼児期健忘については、脳科学の面からも、また言語学的な面からもいろいろなアプローチがなされていますが、解明されるまでは遠い道のりですね。

私たちに必要なのは、現象として幼児期健忘があることであって、そのメカニズムについてはあまりわからなくともいいと思います。
もちろん、メカニズムがわかればそれに基づいた対応も可能でしょうが、分からなければどうにもならないと言うでものではありません。

皆が自分の経験でわかっていることですので、少し振り返ってみれば誰でもわかることです。

特に幼児期に子供に必要なことは、特に手を掛けなくとも生まれたときから自然と身に付くようにできているようです。

そんな時期に、無理に何かを教え込もうとすると、本来の身につける活動を妨げることにつながる可能性があります。

子供が自然に身につけやすい環境を整えてあげることが一番になりますね。
教え込んでも全然記憶に残らないどころか、持って生まれた習得能力を邪魔することになるのです。

どうやら、幼児期は「母語」の習得を通して、これから生きていくための基礎的な機能を育てている時期と言えるようです。

幼児期健忘を見ていきながら「母語」の大切さを改めて確認することになりました。