2013年12月25日水曜日

言語習得のポイント

現代では、日常会話に使用する言語を自分で選ぶことができるようになりました。
日本人の両親のもとに生まれながら、英語を第一言語として取得することも可能となっています。

言語についての研究も様々な面から進んで来ていますが、まだまだ分からないこともたくさんあります。

それでも、言語の習得について考慮しておかなければならないポイントがいくつか見えてきました。

特に、メインとする言語の習得については、自分の意志では選択できない幼児期が大変重要な時期となります。
親が子供のメインとなる言語を選択することになります。

日本国内に居住して、自然に日本語をメイン言語として選択する場合には大きな問題はないように思いますが、海外に居住して他の言語選択できる環境にある場合は一段と注意が必要になります。



言語の習得におけるポイントは以下の3点から考慮することが必要であると思われます。
  1. 日本語をメイン言語に選ぶこと
  2. 幼児期専用の言語(母語)について知ること
  3. 幼児期健忘について知ること
簡単に一つずつ見てみましょう。


1.日本語をメイン言語に選ぶこと
世界に数ある言語の中で、日本語はきわめて特殊な言語です。
その特徴については何回か触れてきていますので、過去のブログを参照していただきたいと思います。(素晴らしきかな日本語

日本語は現存する言語としては、世界で一番複雑な言語であると同時に、世界最強の言語であると思われます。

子供のメイン言語として日本語をきっちりと選択することが、日本語環境に生まれた最大の利点につながることになります。

他の言語環境において日本語を習得し使いこなせるようになることは不可能ですが、日本語を習得できれば他のどんな言語でも使えるようになるのです。

日本国内で幼児期の保育ができる場合は問題ありませんが、海外で子供に日本語を習得させる場合には環境つくりに相当の努力が必要になります。

幼児期の言語習得によって小学校以降の学習に影響が出ますので、注意が必要です。
海外での幼児期の言語教育については、海外子女教育振興財団のホームページに的確な注意が指摘されていますので参照してください。(母語の大切さをご存知ですか


2.幼児期専用の言語(母語)について知ること
前出の海外子女教育振興財団の「母語の大切さをご存知ですか」を見ていただけると母語についてほとんどのことがわかると思います。

言語習得の基礎となる、幼児期専用の言語のことで、母親から伝承される言語のことです。

この母語が、幼児期に圧倒的に発達する脳の基本機能を決めると言われています。

この時期に母語として日本語を選択することによって、日本語独特の言語感性の基礎が身に付くと考えられています。

母親から伝承される日本語によって、脳の基本機能が形成され、そこに日本語独特の感覚が身についていくことは母語の理解の上でも大切な要素です。(参照:ここまでわかってきた「母語」

ここで一番大切なことは、母語として日本語を選択することです。 

次に述べる幼児期健忘とも関係してきますが、幼児期の言語そのものは記憶に残りません。
小学校に入って国語(学習言語)を学び始めると、言語としての母語は記憶から消えていきます。

しかし、その母語によって日本語脳の基本が形成されることと、日本語の感覚が身に付くことが大切なのです。

これが身につかないと、その後の国語の習得に大きな影響が出ます。


3.幼児期健忘について知ること
幼児期にどんな教育をしても、子供は一切記憶に残りません。
幼児期の記憶はそのほとんどが消える(リセットされる)からです。

特に3歳頃までの記憶は、ことごとくが残りません。
5歳くらいまでは断片的に残るものがあるようです。

物心がつく時期と言われるときがあります。
記憶が残っている時期とかぶっているのではないでしょうか。(参照:幼児期健忘について

日本語は習得するのに時間がかかる言語のため、基本的な習得だけでも10歳くらいまでかかります。
言語の習得も記憶に影響があると思われます。

ですから、幼児期の教育・教え込みは一切無駄なことなのです。
特に、何かを教え込むといった行為は何の効果もないだけでなく、本来自然と身につける母語の習得に際して悪影響を与えることすらあります。



幼児期の2歳から4歳くらいまでが脳の一番発達する時期であることはきわめて一般的な知識となっています。
母親の中には、この時期に幅広くいろんなことを覚えさせることが大切だと思い込んでいる人がいます。

大きな間違いであることを早めに理解してもらう必要があります。

この幼児期は自然の流れの中で、母語の習得によって脳機能を発達させる事だけが大切になります。
余分な教育や教え込みは、母語の習得を妨げることになります。

親のできることは、母語の習得ができやすい環境を整えることです。
母語は教え込めるものではありません。


言語習得においては、幼児期の母語の習得がほとんどのことを決めてしまいます。
より適切に幼児の母語習得をサポートするためには、母語に対しての理解はもちろんのこと、日本語の位置づけや幼児期健忘について正しい知識を持っていることが大切です。

最近では、母語や幼児期健忘についても、その気になればある程度の知識が手に入ります。
周りに幼児をお持ちのお母さんがいらしたら、是非教えてあげてください。

私が、お伝えした時いつも必ず言われることがあります。
もっと早くに知っておきたかった、と言われます。

子供は家族の宝ですが、少子化の現代では社会の宝でもあります。
多少お節介くらいで関わってあげてもいいのではないでしょうか。

しっかり関わり方を理解して接してあげたいですね。