2013年12月23日月曜日

幼児期健忘について

このブログでも何度か触れ来たことに幼児期健忘というものがあります。
幼児期の記憶がなくなるというものです。

幼児期の一番の目的の一つが、幼児期専用言語(母語)による脳の基本機能の開発と言語感覚の習得にあることは間違いないところだと思われます。

そのために、促進する要因と阻害する要因を確認しておくことは決して無駄にはならないと思います。

もともと幼児自身が持っている自然な機能として、幼児期専用言語の習得による脳機能の開発と言語感覚の習得があります。
どんな環境においても自力で身につけていくようにできています。


幼児期の言語習得が重要な理由を挙げてみましょう。
  • 日本語は世界でも類を見ない習得の難しい言語です。基本的な取得でも10歳ころまでを必要とします。そのために幼児期は基本的な言語感覚を身につける重要な時期となります。
  • 幼児期専用の言語(母語)があります。これによって脳の機能が決まってきます。この言語を日本語で習得することによって大きなメリットが生まれます。
  • 幼児期健忘によって幼児期に習得した言語は、ほとんどが記憶に残りませんが、脳の発育とともに言語感覚として身についていると考えられています。
幼児期健忘については、ほとんど全ての記憶が幼児期(3歳から5歳ころ)に数週間程度の間で急速に失われるという現象です。
このような現象は幼児期以降では認知症にならない限り起こりません。

起こる時期は個人差もあるようですが、より明確な差としては民族(もしかすると言語かもしれません)差によるものが観察データとしてあります。

それによれば平均でマオリ族で2歳9ヶ月、ヨーロッパ族で3歳7ヶ月、アジア族で4歳10ヶ月で幼児期健忘が発現するとされています。



いづれにしろ人の成長において必要な現象だと思われますが、その現象の理由については研究途上です。

なぜ、幼児期の記憶がいったんリセットされてしまうのかとても不思議なことと言えます。


幼児期の英才教育がほとんど役に立たないことがこれでよくわかるのではないでしょうか。

ところが幼児期の記憶でもその後まで残るものもあります。
その典型が、幼児虐待に代表される継続的な身体苦痛を伴う経験だと言われています。
その後の人生における影響はよく知られているところですね。

過度の英才教育はこれと同じ効果を生んでしまうことにつながります。
注意したいですね。

 

幼児期の機能がだんだんわかってきました。

幼児期専用の言語の習得を通じて、脳の機能開発を行っていることがわかってきました。
学者によっては、幼児期はこのためだけにあると言い切ることもあるようです。

いくら言語を覚えても、幼児期健忘によってほとんど記憶には残りません。
しかし、脳の機能開発が進むと同時に、幼児期専用言語の言語感覚が蓄積されると思われています。

言語としての記憶は亡くなっても、その言語(日本語)としての言語に対する感覚は残るということですね。

この幼児期専用言語は基本的には母親からしか伝承されません。
母親以外との会話がある程度できるようになっても、必ず母親との確認行為があります。
幼児期の専用言語は母親を介してしか習得できないようになっているようです。

母親以外の者が話しかけても会話はできますし、反応はあります。
しかし、幼児が自分の言葉として習得するのは、必ず母親との確認行為が行われた言葉だけのようです。

しかも、その言葉は言葉として習得するのではなく、五感のすべてで母親から感じた言語感覚として習得すると思われます。



幼児期の保育におけるスタンスは、絶対に教育をしないということだと思います。
教育とは教え込むことになります。
教え込まれる方は、必ず何らかのストレスを伴って受けます。

これが継続されるとトラウマにつながります。

幼児期に大切なことは保育です。
保育は環境を整えることです。
その上で自らが必要なことを習得してくることを待つことです。

幼児は必要なことを自ら身につけるようにできています。

それをよく分かったうえで、そのために有効な環境を整えてあげることが一番大切なことです。


肉体的な成長でも同じことのようですね。

転んだ時に、手で体を守れないために顔面をけがする子どもが多いそうです。
幼児期のハイハイの経験が少ないために、体を支える腕力がない子がとても多いそうです。

ハイハイができる空間が少ないことと、親が一日も早く歩くことを教え込んでしまうことが原因だと言われています。


子供の存在は一家族の域を越えて、今や社会の宝物と言えるでしょう。
子育て母さんのサポートはどんなところでもできると思います。

幼児期の子供の面倒を見るのはお母さんにしかできませんが、家事や周りのサポートはほかの人でもできます。

少しでも助けになるような情報発信と行動をしていきたいですね。