もとは英語なのかもしれませんが変なカタカナ語がありますね。
例としては、最近でこそあまり使われませんが「トレパン」という言葉があります。
たぶん「トレーニングパンツ」だと思うのですが・・・
英語で「training pants」を調べてみるとこんなことになっています。
「用便の練習用の幼児のパンツ」!!!
つまり子供用のオシッコをした場合のためのオムツつきのパンツのことのようです。
オーストラリア出身の知人に聞いてみても同じ答えでした。
「ちょっとトレパンで出かけてくる。」なんだこれは?大丈夫か?
どっから来たんでしょうかこの言葉は?
と、書いている私も平気で使ってたんですけど、これを聞いた外国の人(英語のわかる人ですよん)はいったいどう思ったでしょうね。
私はインテリアの仕事にも長いこと携わっていましたので「リフォーム」という言葉には慣れっこでしたが、本来の「Reform」の意味は改革だとか改良だとかですよね。
住宅や建物については使いませんよね。
これもあとで分かったことなのですが、増改築の意味で使うのなら「Renovation」ですよね・・・。
しかし、ホームセンターや建築屋さんにはやたらと「リフォーム」の言葉が目立っていて、テレビでも平気で「リフォームしようよ」なんて言っていますよね。
「Renovation」は最近やっと広まりだしたところでしょう。
なんでこんなことが起きているんだろう?
外来語を使うということはもともとあった言葉の微妙な違いを吸収してしまい、単純化してしまいます。
再生、改良、仕立て直し、増築、改築、改装・・・これらの違いが「リフォーム」という英語としても通用しない言葉によってひとくくりにされてしまいます。
年を経過するにしたがってこの違いがどんな影響を及ぼすのか想像もできません。
(参照:100年たって微妙なずれが現実に・・・)
かつてこんな記事が出ていました
米マイクロソフトは人間が話す内容を瞬時にコンピューター処理し、他の言語に翻訳したうえ、その人の声で流す技術を編み出した。「何カ国語でも話せるようになる」と研究所幹部の洪小文氏。普及すれば通訳、語学教育といった業界への影響は大きいだろう。(日経 5/10)
通訳、語学教育といった業界どころの話ではないですよね。
こうなったら伝えるための道具としての語学を学ぶ必要はなくなってしまいます。
コンピューターがやってくれます。
言語学として他国の言葉を研究する以外は、特にコミュニケーションをとるための言語の勉強は不要になります。
特に幼児期には余分な教育をしてはいけません。
しっかりとした思考力を身に着けるために母語を磨いたほうがいいのです。
身に付いてきた母語の感覚を、今度は表現するものとして磨き始める大切な時期は10歳前後からと言われています。
2011年3月よりこの大切な時期である小学校5年生から英語の授業が必修化されています。
また、国語の授業においてはだいぶ前より5年生以降には「音読」が指導要領にはありません。
母語が日本語である私たちは日本語でしか思考することができません。
日本語で行われた思考を英語に翻訳することはできますが、英語を母語とする人たちとは基本的な思考の仕方が異なります。
ロングセラー本に物理学者の木下是雄先生の書かれた「理科系の作文技術」(1981年出版)があります。
木下先生がこの本を書かれたきっかけを語られた内容が出ていたことがありました。
「理科系の学生にとっては学会で論文を発表することが大きな目的だが、その論文は英語で書かなければならない。
まともな論文が書ける学生がほとんどいないので、実際の指導は実験や理論よりも論文の書き方になってしまう。
10年近く英語を習ってきてどうしてと考えていたが、原因がやっとわかった。
かれらは英語ができないんじゃない。
日本語ができないんだ。
だから、それを英語にしたときはわけのわからないものになってしまう。
これが本を書いたきっかけです。」
この本が出版された1981年は私が卒業して社会人になった年です。
そんなこと考えてもいなかったなあ。
日本語研究の専門家ではない木下先生がこのころすでに実体験として英語とのかかわり方の本質を指摘されているんですね。
これからはますます「日本語磨き」は大切なことになっていくと思いますね。