今回は「きく」ことについて触れてみたいと思います。
言語習得の段階や学校教育との関連において「聞くこと・話すこと」を習得する機会が少ないことを述べてきました。
現在の教育環境においては本人が意識して取り組まなければ、なかなか自立するために必要な「聞くこと・話すこと」を身につける機会はありません。
知らないうちに身に着いているように感じられるかもしれませんが、会社や学校という枠を離れて自立しなければならなくなった時に一番必要なチカラが「聞くこと・話すこと」です。
学校や会社のように閉ざされた社会では、そこに所属している人たちの思考パターンは同じようになっているため、しっかりとしたコミュニケーションを取らなくとも理解できる場合がほとんどです。
そのために「聞くこと・話すこと」の力を磨く必要がなくなっています。
ところが所属する社会が変化したり、学校から社会へ出たりしたときには、今までの理解では間に合わなくなるため、新しい社会での理解が必要になります。
そのために必要なチカラが「聞くこと・話すこと」です。
一番大きななことは共同作業をするときに、一緒に作業をする人が変わることによって意思の疎通ができなくなることです。
社会に属している限り共同作業から逃れることはできません。
共同作業は自分のことだけを考慮していては成り立ちません。
役割を分担しながら作業をしなければなりません。
いつも同じ人と同じ作業をしていることが続くと、当事者同士では言葉にしなくとも理解できることが増えてきますが、相手が変わったり、作業内容が変わったりした場合はそうはいかなくなります。
そのためには言葉を通して理解することが必要になります。
このことができないと社会での孤立を招くことになります。
そのために必要なことが「きく」ことです。
今回はあえてひらがなで書いています。
「きく」と読む漢字は「聞く」「聴く」「訊く」「効く」「利く」があります。
「きく」とはこの5つをすべてうまく使うことです。
「聞く」は5つの中で一番消極的な「きく」です。
なにげなく耳に入っているものを「聞いている」ことです。
「聴く」は傾聴のように、積極的に「きく」ことです。
アクティブリスニングという英語がありますが、日本語の傾聴に当たるのではないでしょうか。
ここまでが耳を使って言葉を「きく」ことになります。
「訊く」は訊問という使い方をしますね。
相手のことを理解するために話したり問いかけたりすることを含む「きく」です。
「効く」は薬がよく効くなどと使います。
効果が浸透することですね。
自分の発信した言葉やメッセージが、相手にしっかりと浸透していく「きく」ですね。
「利く」は鼻が利くや目端が利く、利き腕などのように使います。
上手く利用することですね。
言葉をうまく利用することはもちろんですが、動作や図や画像などを利用して「きく」ことです。
「きく」とは単に聴覚を使って言語を感じるだけではなく、「きく」ために話したり、言語以外のメッセージを発信したり受信したり、伝わり方を確認したりすることがすべて含まれます。
今までは「聞くこと・話すこと」と述べてきましたが、以上の内容からすると「きくこと」ですべてが網羅されていると思いませんか。
「きくこと」はあらゆる場面で必要なチカラです。
いろんな問題はほとんどの場合「きき」間違いから発生しているのではないでしょうか。
「きくこと」をしっかりと身につけて人と接していきたいですね。