「反対」と「逆」です。
今まで意識して使い分けをしたことがありませんでした。
「反対に言うと〇〇とも言えます」
「逆に言うと〇〇とも言えます」
両方を使った時に?が浮かんでしまいました。
最初にこの言葉に触れたのは小学校の低学年だと思いますが、それ以来50年くらい意識せずに使っていたんですね。
きちんと理解していなくても何となくお互いに理解できる感覚で過ぎてきたんだと思います。
それで分かっちゃうんですから日本語ってすごいですね。
「反対」と「逆」に似た言葉で「さかさま(逆様)」と「あべこべ」などというのもありますよね。
あまり広げすぎると分かりにくくなるので、「反対」と「逆」について調べてみました。
辞書的に言いますと次のようなことになるようです。
反対・・・「賛成」に対する言葉、賛成ではないという意味。位置、順序などが逆の関係にあること。
対をなしているもの(こと)の片方。あべこべ。
逆・・・・・順番が決まっているモノやコトの反対のこと。さかさま。
論理学において、命題の主語と述語が入れ替わった命題のこと。
「AならばBである」→「BならばAである」
「反対」も「逆」も、どちらの説明にもそれぞれ「逆」と「反対」という言葉が用いられていていることを見ると、ほとんど同じようなことを言っているんだなということがわかります。
説明を読んでみると何となく「逆」よりも「反対」の方が意味するところが広い気がします。
「逆」は「反対」の一部かな? 逆<反対の感じがありますね。
では、なんで「反対」と「逆」があるのでしょうか?
さあ、ここからは言いたい放題です。
「やまとことば」に引っかけてみるために、訓読みにしてみました。
「逆」は「さからう」「さかさま」となります。
内容としては正しい順番や並びがきちんとあって、その順番や並びに従わないことの意味が強そうですね。
「お上に逆らう」などが典型ですね。
「意見に逆らう」とすると、上下関係は直接には表現されていませんが、「上位の者の意見に逆らう」という内容が感じられますね。
確かに、下位の者の意見には「逆らう」とは言いませんよね。
「さからう」はとてもなじみやすい言葉ですし、おそらくは昔からの「やまとことば」として使われていたものだと思われます。
人の意見に対して「逆に言うと・・・」と発言することは、意識しなくても相手が自分よりも上位であるという尊敬のニュアンスが含まれているのではないでしょうか。
「反対に言うと・・・」と言われると、何となく身構えてしまうのは私だけでしょうかね。
また「逆らう」は決して悪い意味だけではありませんよね。
上位からの間違った意見ややり方に対して抵抗するという意味もあると思います。
さて、「反対」は訓読みにするとどうなるでしょうか。
「反」は「そらす」ですが、「対」は訓読みがあるでしょうか?
常用漢字としての訓読みはありませんが、「対」で「そろい」という読み方はあるようです。
一対という事の元になったかどうかは定かではありませんが、二つで一組のようなニュアンスは感じ取ることができます。
明治期に民主主義の概念が導入され、新しい漢字がたくさん生み出されたものの一つではないかと思われます。
「賛成」と「反対」は議会政治においてとても重要な言葉であったはずです。
明治の先人たちが苦労して編み出した言葉の一つではないかと思います。
このように考えるともともとの「やまとことば」の流れを持ったものが「逆」(さからう)であると言えそうです。
「反対」という言葉が全面否定を感じさせるのに対して、「逆」という言葉は何かしら元のものに対する尊重が感じられるのではないでしょうか。
相手の意見をきちんと理解して、それをいったんは「正」として尊重したうえで発せられる「逆に言いますと・・・」は、コミュニケーション上とても役に立つ言葉ではないでしょうか。
確かに「逆に言うと・・・」と言われると、自分の意話をしっかり聞いてもらっている感じがしますよね。
その上で「逆に言うと・・・」と言われると、こちらもしっかり聞かなくてはいけないと感じられるのではないでしょうか。
「反対」はYESかNOかの判断を求めることになりますが、「逆」は追加・修正の判断になるのではないでしょうか。
「反対」には決着が必要ですが、「逆」には合意ができる可能性があります。
やまとことばの持っている本来のすがたである「相手を尊重しながら懐の広い対応を促す」心にぴったりな言葉のような気がしてきました。
もっとたくさん使ってみようと思います。
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