今回はここが「ひらがな」の使いどころという場面を見つけてみましょう。
まずは、ひらがなをたくさん使うことがふさわしくない場面から考えてみましょう。
ひらがなの特徴は、軽薄曖昧にありますので、正確さを求められるときには不向きです。
たとえば、事故の報告書や観察のレポートなどは事実を時系列に伝えるものですので、ひらがなの多用は避けた方が無難です。
自然科学や数学の分野のことについても漢字と数字による表現の方が適しています。
そうすると、どうやら人間の精神的な感情や、人の五感に訴えるような表現については「ひらがな」が使えそうですね。
特に自分の感情を伝えたり、相手の感情を推し量るときなどにはハマりそうです。
また、風景や自然描写であっても、相手の心に同じ絵を描いてもらうための表現ではなく、自分の感情を訴える場合は適しています。
思考の観点を変化させる場合や、膠着した思考を打ち破る場合のきっかけとしても「ひらがな」による投げかけは有効です。
特に短い時間でたくさんの候補を挙げたり、多様性が求められる場合は「ひらがな」によるたったひとつの投げかけが全く新しいアイデアを生むことがよくあります。
業務的な内容での改善改革については、どうしても技術的な面からの発想が多くなってしまいます。
参加人数が多ければ多いほど、その傾向は強くなります。
そんな時に「ひらがな」の投げかけは、より人間そのものに焦点を当てた発想を呼び起こしやすくなります。
日本人の得意な小集団活動における改善活動は、普段から一緒に仕事をしている仲間との活動ですので「ひらがな」が使いやす環境にあります。
外国人がカイゼン活動が苦手なのは、使用している言語にも原因があるのです。
日本人の思考の多様性は、グループ活動においてもそうですが個人の中においても注目されているところです。
特に技術的分野における、人とのかかわりや自然とのかかわりにおいては、世界的に見ても注目されている内容がたくさんあります。
これは思考力というよりは、そのもととなっている思考するための言語の多様性によるものだと思われます。
どうしても漢字による思考が中心となる技術的分野において、ふと「ひらがな」による思考が加わると人間的な、自然的な面が顔を出してくるようになるのです。
もちろん技術的な分野では正確さが一番に求められますが、特に安全や健康を考慮する場合は人間や自然への影響を抜きには考えられません。
これからの技術は必ずやこのステップを経過することになるでしょう。
しかし、日本語で考えれば必ずどこかで触れることになるはずです。
「ひらがな」の使いどころを考えてみましたが、どんな場合にも使えるような気がしてきました。
普段の生活そのものが漢字一辺倒でも、ひらがな一辺倒でもないのですから、特に意識する必要はないようです。
あえて使いどころを意識するとしたら、非常に漢字が多い環境において、あえて「ひらがな」を投げかけてみることでしょうか。
周りの反応は冷ややかかもしれません。
「なに、次元の低いこと言ってるんだ。」的な反応が考えられます。
しかし、たぶんその場で一番人間的な投げかけになっているのではないかと思います。
どんな技術も専門分野も、すべては自然と人の永続性のためのものです。
もっと「ひらがな」を使ってもいいのではないでしょうか。