今回の連続テーマの「国語教育の問題について」は、いつか触れたいと思いながらも、なかなか手が付けられなかったテーマです。
(1)から(4)までを読み返してみると、漢字の多さや言っていることの切れの悪さを見ることができます。
自分の中でもまだまだ腹の底に落ちてない手探りの状態であることがよくわかります。
今のままではいけないと感じ続けてはいるものの、単なる問題ありとの指摘だけなら誰でもいくらでもできます。
このテーマの締めくくりとして、現段階で考えられる提言で終わりたいと思います。
何回か触れてきましたが5年を一つの期間とした3つの段階にわけて述べてみたいと思います。
まずは、0歳から5歳頃までの母語の習得時期についてです。
実際には言葉の噴火・爆発が起きる2歳前後からの対応になります。
基本は「読み聞かせ」、「数え聞かせ」、「歌い聞かせ」です。
特に大切なのが「読み聞かせ」です。
間違った方法をやってしまわない限りは、きちんとした「読み聞かせ」は仕事を持ったお母さんなどの子供との接触時間の短かさをカバーしてくれます。
詳しくは「母語の習得と幼児教育(1)~(3)」で確認していただきたいと思います。
注意を要することは、母語習得の妨げになる幼児教育である英語や英才教育・お受験対策などをやらないことです。
5歳までの間で母語の基本的な習得はほとんど完成してしまいます。
この時に習得された母語は、まさしく母親から継承した言語であるため、方言やアクセントなど一人ずつ違ったものとなっています。
5歳頃から10歳頃が母語を活用しての第一言語の習得期間となります。
小学校の低学年・中学年で学習言語としての国語を習得します。
この期間の学校教育はよくできていると思います。
この間の学校教育の中心は、昔で言うところの「読み書きそろばん」です。
第一言語の最初の標準形である学習言語を、母語を使いながら身につけていきます。
この学習言語によって、さまざまな教科の学習が進んでいきます。
それでも、中学年である10歳頃まではあくまでも国語が中心になって、言語の習得を重点に進められます。
国語以外の教科書の位置づけも、専門分野というよりは言語習得のための副教材と言ったほうがいいと思います。
さて、問題の10歳頃から15歳頃です。
この期間の本来の目的は、前の期間の「読み書きそろばん」に対して、「聞くこと話すこと」です。
人の意見や考えを引き出して聞いて、自分の意見や考えを話し伝えることを習得する期間です。
10歳までで道具としての基本的な言語の習得はできています。
ここから道具を使ってどうするかという一番大切な段階になるはずが、このあたりから国語科そのものの存在が見えなくなってくるのです。
「聞くこと話すこと」の先にはさらに表現することが待っているにもかかわらず、これらのことをきちんと習得できる内容にはなっていないのです。
学校教育に頼っていたら、人として自立して生きていくために絶対に必要な力が身につかないのです。
この時期に大切なことは、家庭や教室といった楽なコミュニケーション空間を飛び出すことです。
地域社会でも、スポーツクラブでも、ボランティアでも会話をしないとやっていけない世界で、普段では触れない人たちや世代と会話をすることです。
学習塾は学校の延長であり、基本的には会話もありません。
あえて学校教育の中で取り入れるとした場合を考えてみましょう。
小学校の高学年にはファシリテーションプログラムが有効です。
アメリカ版をそのまま持ってきてもだめですが、日本語の特徴とこの時期の言語教育の目的を考えて手を入れればいいものができると思います。
ファシリテーターとしての役割も、参加メンバーとしての役割もともに「聞くこと話すこと」のためには最適なものになる可能性が十分だと思います。
そして中学生には、ファシリテーションプログラムに加えて、1年から3年までを一緒にした小集団活動を増やすことです。
部活動・クラブ活動をいろいろなテーマでメンバーを入れ替えてやるのと同じことです。
そして、それぞれの小集団活動で必ず発表の場を作っていくことです。
そうすることで「聞くこと話すこと」に「表現すること」が加わってきます。
15歳までは義務教育です。
本来ならば、義務教育を終えた人間は社会で自立して生きていけていいはずです。
そのためのチカラを習得させるのが義務教育ではないでしょうか。
基本的には高校以上は試験に合格しないと行けません。
その試験には「聞くこと話すこと」と「表現すること」はほとんど関係ありません。
大学での専門分野活動や、社会に出てからの諸活動で起きているトラブルのほとんどが「聞くこと話すこと」「表現すること」の未熟さが原因だと思われます。
国語教育に問題があれば個人的にでもそれをカバーすることを考えなければならないと思います。
なぜなら、それが人が生きていくために一番必要なチカラだからです。