「こんにちは」か「こんにちわ」か、皆さんはどちらを使っていますか?
「こんばんは」か「こんばんわ」か?
昭和61年に文化庁より出された「現代仮名遣い」という悪名高い通達があります。
それまでの歴史的仮名遣いに近年の変化を取り込んだものなのですが、専門家や言語学者が指摘するところでは、変化の内容に基準がなくしかも現実を反映していないということです。
いずれにしても、公教育における仮名遣いはすべてこれが基準になっているので批判をしてもこれに習うしかなくなっています。
まあ、意見を言う分には構わないと思いますが。
この現代仮名遣いによれば「こんにちは」「こんばんは」が正しいかな表記となります。
いろいろなところで見るものですから「こんにちわ」「こんばんわ」に対しても違和感も抵抗もなくなってきていませんか?
わたし的にはこの表記はどちらでもいいのではないかと思っています。
もともと仮名文字は音を表している文字です。
古くは、文字のなかった時代に使われていた言葉に漢字の音を当て字として使用したのが始まりです。
ですから書き文字よりは話し言葉としての音のほうが本来の姿を現しています。
その趣旨からいけば実際の音と異なった表記をすること自体が間違いのもとになります。
実際の音は「コンニチワ」なのに文字にすると「こんにちは」として元の持つ音が「ハ」である文字を「ワ」と読ませます。
もちろんその理由をたどれば「今日はよいお天気で…」などが略されたものであることは理解できるのですが。
通常であれば「キョウワ・・・」ですね。
これを「コンニチは・・・」と読むようになり、挨拶の言葉として「こんにちは」の部分だけで使われるようになったというところでしょう。
ところでこの「今日」という漢字の「キョウ」という読みは、音読みなのでしょうか訓読みなのでしょうか?
はたまた、この「今日」という漢字によみがなを振るときには、「今」と「日」にそれぞれどのように振り分ければいいのでしょうか?
「き・ょう」「きょ・う」?
まずは音読みなのか訓読みなのかです。
音読みはもともとの漢語の読み方ですよね。
「今」に対しては音読みは「コン」「キン」の2つしかありません。
訓読みは「いま」しかありません。
「き」も「きょ」も「きょう」もどこにもありません。
「日」に対してもその読みとして「う」「ょう」「きょう」というものはどこを探してもありません。
実はこれは「熟字訓」と言って2文字以上の漢字にまとめて訓読みをあてる読み方だそうです。
熟字(熟語)にたいして一字一字ではなくまとめて訓読みを当てますので、よみがなも区切りはなく全体でひとつのよみがなになります。
「今日/きょう」、「昨日/きのう」、「明日/あした」、「明後日/あさって」、「為替/かわせ」、「玄人/くろうと」、「大人/おとな」、「二十歳/はたち」、「小豆/あずき」、など
もともとある日本の言葉に対してその音だけを利用して漢字を充てたものが当て字ですが、熟字訓はもともとある日本の言葉に対してその意味を利用して漢字を充てたものです。
その成り立ちには一語ずつ理由が付けられそうですね。
広い意味ではこれも当て字と言えるのでしょうね。
これを作った人はかなり頭がいいですよね。
「こんにちは」の「は」について触れてみなければ熟字訓まで行きつけませんでした。
わたしも読み方は分かっていてもこの熟字訓というカテゴリがあることは初めて知りました。
これ、実は常用漢字表の最後の付表についているんですね。
よほどの用がないと常用漢字表を見ることがありませんが、その時は周りを見る余裕なんかないですね。
せっかく普段いかないところへ行くのですから、きょろきょろと周りも見てきたほうがよさそうですね。