中国から漢語がもたらされるまでの古代の「やまとことば」にはどれだけの色があったのだろうか?
たまたま、現代の日本における色表現の数を目にしたときに気になったテーマです。
現代の日本工業規格(JIS)では物体色の色名として269の色を挙げています。
そのうち147種が日本語の色名で、他の122種は「ベージュ」「エメラルドグリーン」などの外来語です。
外国語でも色の表現は様々な自然の色に例えられて数多くの色を持っています。
色表現の多さがその言語を持つ人の感性の高さにつながるのではないかと思い、古代の「やまとことば」における色の表現を探ってみました。
結論からいきましょう。
4つしかありませんでした。
そもそも色と言う概念がなかったのではないかと思われます。
その4つは「あか」「くろ」「あお」「しろ」です。
使われ方も色を表すというよりは明るさを表す表現としたほうがいいのかもしれません。
あかるい・・・あか、くらい・・・くろ、はっきりしない・・・あお、はっきりしている・・・しろのような使い方となっています。
この4つの色は現在でもきっちり継承されているところがあります。
相撲の好きな方はすぐ分ったかもしれませんね。
相撲の土俵の上につり屋根が下げられています。
その四隅に色のついた(4色)の房が下げられています。
そしてその房の下の場所ことをそれぞれ「赤房下」「青房下」「白房下」「黒房下」と言います。
古代「やまとことば」における4つの色表現は、漢語が入ってきてからますます確定してきたと思われます。
古代中国の天文学に東西南北の方向を示すものとして、それぞれ四神(神話に基づく聖獣)を当てています。
東・・・青竜・・・あお・・・春・・・木
南・・・朱雀・・・あか・・・夏・・・火
西・・・白虎・・・しろ・・・秋・・・金
北・・・玄武・・・くろ・・・冬・・・水
それぞれの四神の初めの文字が色を表す文字です。
先ほどの土俵の上の房の色もこの方角に合わせられています。
この色はまた、季節を表す色でもあり、これに黄(黄竜・・・中央・・・土用・・・土)を加えて五行説を表すものとなっています。
この四神はすっかり日本に根付いていき様々なところで使われていきます。
玄界灘、玄武洞などの場所の名前や、白虎隊、朱雀門などですね。
参考までに、白虎隊ばかりが有名ですが、会津藩では年齢別に50歳以上の玄武隊、36歳から49歳までの青龍隊、18歳から35歳までの朱雀隊、17歳以下の白虎隊と四神の名前を部隊名として軍構成していたそうです。
麻雀をやったことがある人は分かると思いますが、東を起点に時計回りに回ると東南西北の順になりますよね。
春夏秋冬の順番はそのまわり方になります。
その後、万葉集においては赤の表現だけでも赤、茜、紅、丹、朱などのものが見られており、この時にはすでにさまざまなものを表現するを色を持っていたことになります。
厳しい自然の中で、生き抜くことことだけが精一杯だったときは色を感じることができずに、明るさしか感じることができなかったのではないでしょうか。
そして厳しい自然と折り合いをつけ、愛でることができるようになって初めて、そこにある色を感じることができるようになったのではないかと思っています。